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第11章 第9話 はじめての主人公

〇早苗




 ひとりぼっちになってしまいました。



 私が悪い。悪いのはわかっています。いつまでも間違いを認められず、謝れない。その結果がこれ。



 初めは望んでやったことでした。ジンくんと話して、別れるのが一番だと思って。そして全てを覚悟していたのに。涙が止まってくれません。



 ジンくんがいなくなって。未来がいなくなって。斬波までも、私の元から去っていってしまいました。もう私の傍には、誰もいない。ほんのちょっと前まではみんな私と一緒にいてくれたのに。



「……もしもし。ジンくんですか」



 気がつけば私は電話をかけていました。もう二度と会わないと心に決めたはずの人に。



「どうした? いつもならもう寝てる時間だと思うけど」



 耳に届いてくるのは、いつもの優しい声。そして私の知らない、自由な声音。私が知らないところで、どんどんジンくんが変わっていく。距離以上に、遠くなっていく。



「……ごめんなさい。謝るので、帰って来てくれませんか……?」



 もう耐えられませんでした。いくらでも謝れる。頭なんて簡単に下げられる。何をしてでも誰かに傍にいてほしい。言葉が自然と口から溢れてきます。



「無理だよ。まだエターナル見つけられてないから」

「そんなのどうでもいい! 私が! 私が、耐えられないんです……。ひとりぼっちは……いやなんです……!」



 何も考えずに出た言葉はひどく身勝手なものでした。ここまで愚かになれるものかと自分でも驚いてしまうほどに。



「ひとりぼっちって言っても家族がいるだろ。グレースさんも玲さんも愛菜さんも来海さんもいる」

「そうじゃないんです! そうじゃ……ないじゃないですか……」


「うーん……言いたいことはなんとなくわかるけど、こればっかりはなぁ……」

「……嘘つき。ずっと一緒にいてくれるって言ったのに……!」



 気づけば恨み言も出てしまっていて。自分で自分が嫌になってしまうのに、止まらない。



「どうしたら元に戻ってくれるんですか!? 全部、元通りに……。前みたいに、一緒にいたいです……!」



 涙声は嗚咽に変わり。ジンくんの冷静な声は焦ったようになりました。



「ごめん、今出先で充電やばいから切るわ」

「待って……待ってください……!」


「未来さんがやらかしてスマホとお金のほとんどをトラに盗まれちゃったんだよ……。だから未来さんとホテル泊まるから。もし充電器貸してくれるようならまた電話する」

「未来と……ホテルに……?」


「でも問題ないだろ? 俺たち別れてるんだから。もちろん手を出すつもりはないけど」

「やだ……やだぁ……っ」


「電話できるかわからないからこれだけ。何をしたって元通りにはならないよ。俺たちは変わり続けてるんだから。それが成長か退化はわからないけど、元には戻れない。進むしかないんだよ。そのために俺たちは……」

「……ジンくん? ジンくん!」



 電話が切れ、聞こえるのはその音と私の嗚咽だけ。



「どうすれば……どうすればいいんですかぁ……っ」



 私の泣き言に答えてくれる人はいませんでした。

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