第11章 第6話 清濁併せて
〇ジン
「ひさしぶりー! 会いたかったよ我が愛しの弟よー!」
「よぉ、塵芥」
その日の夜。俺の別居先に2人の男女がやってきた。
「……俺は会いたくなかったけどな。イフリート、トラリアル」
須藤炎司と須藤超絶最強虎。2人とも今は園咲家が所有する畑で農業に従事しているが、エターナル捜索にあたって呼び出すことになった。俺は17歳で、エターナルは27歳。歳が離れすぎていてエターナルの詳しい生態については不明な部分がある。そこで嫌だが。本当に嫌だが、武藤家の人にお願いして、歳の近いこいつらに協力を仰ぐことにした。
「いいか。俺はお前らを許したつもりはない。イフリートは園咲家から金を毟り取ろうとした上に俺を焼き殺そうとして、トラリアルは俺を突き落とした上にそもそもエターナルに玲の情報を流したしな。それでもお前らを呼んだのは俺の案だ。俺の個人的な好き嫌いで失敗するわけにはいかないからな」
「言っとくけどあーしは反対したんだからね。好き嫌い以前に、あんたらは信用できない。それでも都会に出してやった塵芥に感謝しなよ」
俺の隣に座るアクアが2人を睨みつけた。その様子にイフリートとトラリアルは笑顔を見せる。
「ずいぶん改心したんだなぁ、アクア。俺の罪状はお前と一緒だろうに。そのコウモリっぷりには感服するよ」
「ねぇ。うらやましいなー。私も身体でも売ったら許してくれない? もう力仕事辛いんですけどー。金も結構入ったし競馬場とか行きたいんだよねー」
2人の瞳は薄暗く、汚らしい。この世の全てを疑い、嘲り、虐げるような瞳だ。アクアとは、違う。
「わかってる。私だってあんたらと同じ。何も許されてなんかないし、許してもらえるとも思ってない。……でも一つ違うのは、許されたいって思ってること。言っとくけどあーしは何も変わってないから。塵芥のため、なんて思ってない。ただ許されないっていうのは自分が辛いから。解放されるために、がんばってるだけ」
アクアの言葉に2人は押し黙った。反省したからとか、その通りだと思ったからではないだろう。これ以上何を言っても、あっち側には戻らないとわかったからだ。
「……お前のことは許してるけどな」
「……許すな、馬鹿」
何はともあれ、だ。
「これからお前たちには俺たちと一緒に動いてもらう。イフリートはアクア、侑と。トラリアルは俺、未来さんとだ。逃げようとしても無駄だぞ。お前らが一番わかってるだろうが、武藤家の人たち身体能力おばけだから。ボコられたくなければ黙って従え」
「それはいいけどよぉ、ちゃんと約束覚えてんだろうな」
「イフリートは借金の減額。トラリアルは競馬場に行かせるだろ? それについては許可を取ってある」
「っしゃぁ! 競馬で一発逆転! すぐにあんな田舎逃げ出してやる……!」
こいつらのことは依然信用してないし、許すつもりもない。それでも使えるなら、使ってやる。
「俺たちは家族じゃない。それでも俺たちの目的のために、死ぬ気で努力するぞ」
これが俺の努力だ。だからお前もがんばれよ、斬波。