第11章 第2話 別行動
〇ジン
「だらしなさすぎですっ!」
園咲家から改めて別居した翌日の昼。いつものようにリビングで杏子、侑とゲームをしていると、未来さんが急に怒り出した。
「まぁ落ち着けよ。アイス食べる?」
「食べません!」
「ゲームできますか? 私と交代しましょう」
「しません!」
「そんなカリカリしないでよ~。あ、ジュース取ってきて~?」
「自分で行ってください!」
俺たち3人の呼びかけに断固として拒否の反応を見せる未来さん。相変わらず真面目だなぁ……。
「一体どうしてしまったんですか!? 前は暇さえあれば勉強してたではないですかっ!」
「いやだって俺頭いいもん。既に私立なら国内最高峰の大学でも割と余裕で入れる。ちょっとくらいサボったっていいだろ夏休みなんだし」
「高2の夏休みですよ!? 天王山ですよ!? あぁ……早苗様が知ったらどれだけショックを受けるか……」
「早苗は喜びそうだけどな」
にしても……あれだな……。
「……どうしてメイド服着てるの?」
今未来さんは早苗のメイドを外れているというのに、どういうわけかいつものメイド服だ。侑なんてしばらく見ていないというのに。当然の疑問だと思ったが、なぜか未来さんはドヤ顔をしている。
「私の仕事はメイドです。主人のために24時間365日かしずくのが仕事。私服など持っていません」
あー……そういえば未来さんの私服姿見た覚えないな。風呂上りでもなんかメイド服着てるから趣味なんだと思ってた。
「じゃあ今からみんなで買い物行くか。ついでに仕切りも」
「必要ありません。仕切りも不要です」
「でも俺の脚代わりになるーって意気込んで昨日は俺のベッドで一緒に寝たけどさ、ドキドキしすぎて寝られなかっただろ?」
「ドキドキなどしていません! 主人より先に寝るメイドがどこにいるって言うんですか!」
「いや俺主人じゃないし……。ていうかベッド別にしたい。少し動くと胸当たるし」
「なっ……! セクハラです! 訴えます!」
「大丈夫だよ俺未来さんのこと女性として見てないし……」
「セクハラですセクハラです失礼です! 私はすっごい緊張したというのに……!」
「ごめんセクハラとかよくわからないから不快にさせたら申し訳ないけど……本当によくわからないんだよな……異性のこととか。早苗以外の人と付き合いたいとか思ったことないから」
「……そう思っているなら助け舟を出してあげればいいじゃないですか……。早苗様は苦しんでいますよ……」
「そうだろうけどさ、こればっかりは早苗が自分で何とかしないとな。ちゃんと自分で色んな人に謝らないとだろ」
「そう……なのでしょうが……やはり気になります。きっと今早苗様と斬波様は苦しんでいるのにジン様は遊んでばかりで……」
まぁ未来さんからはそう見えるか。遊ぶというか、この柔軟さは杏子や侑から学んだもの。別に悪いことしてるつもりはないんだが……未来さんもこの日常が続いたらわかるだろうか。
「別に俺たちだってただ遊んでるわけじゃないよ。ただ今は待ちなだけだ」
「待ち……ですか?」
そう。斬波ががんばっているのに、俺だけが遊んでいるなんてできない。俺だってちゃんと努力しないとな。
「エターナルはホストだからな。夜にならないと会えない。だから今日の夜、会いにいくぞ」