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第10章 第2話 隣の芝生

「ちょっとエタ兄みたいな奴見かけたんだけど!?」



 すっかり板についてきた和服をはためかせながらアクアが食堂に駆けつけてくる。そして玲さんの横に立つ高級なスーツを着こなす金髪チャラチャラ男を見て全てを察し、叫んだ。



「あんたそいつだけはやめときなっ!」



 アクアの絶叫に身体を震わせる玲さん。そしてアクアは俺が言おうとしていたことを口悪く代弁していく。



「いい!? こいつ! エターナル! 女の敵なんだよっ! コロコロ女変えてヒモして遊び回って! 女を食い物にすることしか脳にないクソ野郎! それがこの須藤エターナルって男なのっ! あんたも騙されてるんだってっ!」



 アクアとエターナルは決して仲が悪かったわけではない。それが、ここまで言うなんて。本当に玲さんのことを考えているのだと理解することができた。だがそれがわかるのは俺だけだ。



「でも……怖い人に襲われてる時に……助けてくれて……」

「悪い、玲さん。こいつだけは俺も祝福できない」



 既に骨折は治っている。杖を突いて立ち上がり、エターナルに近づきながら話していく。アクアとは違い、あくまで論理的に。



「いいか、玲さん。こいつが良い男に見えるのは確かかもしれない。俺の家系は顔がいいからな。でもさ、よく考えてみろよ。こいつ今27歳だぞ。。干支1周分も歳が離れてるんだ。それは置いておいたとしても、普通、良識のある大人は。未成年に手を出さない。玲さんが悪いわけじゃない。こいつが悪いんだ」



 俺とエターナルは歳が離れすぎているせいであまり関係がない。それでも小学生、それより下の年齢の俺を夜中に叩き起こし、外に追いやって見知らぬ女を連れ込んだ記憶はある。何なら目の前で光景を見させられたことも。トラリアルやクソ親と違って犯罪は犯していないかもしれない。だがその性根はあいつらにも負けないほどに、最悪だ。



「なぁエターナル。お前がどこで誰と何をやっててもいいよ。でも玲さんだけは……俺の家族だけには! 手を出さないでくれよ……! お前のせいで玲さんが不幸になるんだ。だから頼むから……」

「うるさいっ!」



 その無駄に高級なネクタイに伸びた俺の手を止めたのは、アクアにも負けない玲さんの絶叫だった。



「どうしてれいだけダメなの……? どうしてれいは幸せになっちゃいけないの……!? おねぇちゃんはよかったのに……! ジンさんだって、エターナルくんと同じなのに……!」

「俺が……エターナルと同じ……!?」


「そうだよ……。お義兄さんだって、れいたちから見たら初めは、怪しい人だった……。でも今では家族……エターナルくんだって同じだよ……! 怖い人たちに襲われているところを助けてくれて……ひとめぼれだって、告白された……。運命だと思った……! だから結婚したいって思ったの……。おねぇちゃんと、同じ……。それなのになんでれいはダメなの……!? おねぇちゃんばっかり幸せになって……ずるいよぉ……!」

「それ……は……」



 斬波は玲さんは恋に恋していると言っていた。その通りなのかもしれない。俺を好きになったのも、エターナルを好きになったのも。全部早苗の後追いだ。



 だとしたらまだ可能性はあるかもしれない。玲さんには悪いけど。また失恋させて、申し訳ないけれど。玲さんを引き戻せる可能性が。

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