表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

110/164

第9章 第10話 幸福への繋がり

「せんぱい、ほんとは早苗ちゃんのこと好きじゃないでしょ?」

「は?」



 唐突に告げられたその言葉に、思わず怒りがこみ上げる。だがそれが噴火するより早く瑠奈さんが続ける。



「だって普通。そう、普通の話です。好きな人相手には性的に興奮しますよ。玲ちゃんも、早苗ちゃんも、おねぇちゃんも。そういうことがしたくてたまらなくなるんです。しかも統計的にこの年代だと男性の方が性に積極的なのに。せんぱいは早苗ちゃんとそういうことしたい、とは思ってませんよね?」

「それは……。ていうかお前が俺の何を知って……」


「知ってますよぉ。めんどうだけどこれでも武藤家次期当主になっちゃいましたから。当然危険人物についての調査はします」

「……瑠奈さんも、俺のことを信用できないのか」


「ルナ個人と次期当主では立場が違いますから。気分を害したようなら謝ります」

「いや……いい」



 よく考えてみたら、警戒している人がいた方が助かることもある。俺は何も悪いことはやっていないと証明できるからだ。



「俺たちはお義父さんたちから高校を卒業するまでそういったことは控えるように言われてる。俺はそれに従ってるだけ。何ならキスだってほんとはまずいんだよ」

「ほらそういうとこ。客観的に見て早苗ちゃんってかわいいじゃないですか。それにおねぇちゃんと同じ部屋で寝てるんですよね? それなのにせんぱいがそういうことをした形跡はない。今日だって1週間ぶりに自室に帰ってきたんですよね? まぁ性事情にとやかく言うつもりはありませんけどね、せんぱい。ルナが言いたいのは、やっぱりせんぱいは異常だってことです」



 異常。意味的には特別とそう変わらないが、言葉の奥に込められている意味は違う。おかしいんだ。常識的じゃないんだ。



「ルナが思うに、せんぱいが早苗ちゃんと付き合っているのは恩や情。子孫を残すという生物本来の目的から外れた、人としての理性。……それなら別に。玲ちゃんと付き合ってあげてもいいじゃないですか」

「それは違うよ。俺が早苗と付き合ってるのは早苗が俺を幸せにしてくれるって……」


「だからそういうとこですってせんぱい。異常なのは別に悪いことだとは思いません。でもせんぱいのその態度のせいで、思っちゃうんですよ周りは。自分にはチャンスがあるんじゃないかって。玲ちゃんも、おねぇちゃんも。もしかしたら、何かあれば、自分も付き合えるんじゃないかって」

「…………」


「いいですか、せんぱい。誰にでも優しいのは必ずしも良いことではありません。努力すれば可能性はあるとか。そんな話は誰も求めてないんですよ。時に厳しく当たることだって、回り回って幸せに繋がるんです。だから自分の努力至上主義なんかじゃなくて、誰かのことをちゃんともっと考えて。振ってあげてください」

「…………」



 何も言えなかった。その通りだと思ったから、ではない。既にそんなことは頭にない。



 頭にあるのは斬波や玲さんを幸せにする方法。それだけだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ