表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

104/164

第9章 第4話 存在意義

〇斬波




「瑠奈、ちょっと邪魔するよ」



 玲から伝えられた瑠奈が話したいという情報。当然鵜呑みにするはずがないが、瑠奈と話したかったのは事実。私は足早に瑠奈の部屋へと訪れた。



「うわっ。なに急におねえちゃん。玲ちゃんが何かした?」

「よくわかってんじゃん。監督不行き届きだよ」



 風呂上がりのようで入念に顔を乳液で擦っていた瑠奈がため息交じりに言葉を吐く。私は許可も取らずにベッドに腰かけ、玲の様子を話していく。いやその前に。



「私を呼んだってほんと?」

「あー玲ちゃんそんな手使ったんだー……。相変わらず頭がちょっと足りないよね」



 主人へ悪態をつき、瑠奈は私の横に寝転ぶ。普段ぶりっ子の瑠奈だが、私とは実の姉妹。演技をする必要などないということらしい。



「で、あの子なに? ジンに夜這い仕掛けてきたんだけど」

「なにって、恋する乙女だよ。早苗ちゃんと同じ」


「早苗と同じってね。状況わかってる? ジンは早苗の婚約者なんだけど」

「ルナに注意しないでよ。ルナだって止めたんだよ? 意味のない。無謀な恋なんてさっさと忘れろって。でも惚れた相手が悪かったのかな。無理かもしれないけど努力したいって。その方向性がおかしいのが玲ちゃんらしいよね」



 私の苛立ちを見て取っているのだろう。あえて瑠奈は呑気に話している。



「あーそう。瑠奈は社会のルールよりそっちの味方ってわけね。じゃあ私玲を止めなきゃいけないから帰るから」

「まぁそう慌てないでよ。夜這いしたっていってもあの意気地なしが正面から襲えるはずがないし、せんぱいも受け入れないでしょ。だからやるとしたら睡眠剤でも盛って既成事実作りかな。でもそれは問題ないでしょ?」



 ……確かに。その方法だけは、絶対に通らない。それでもだ。



「玲はわかってるの。自分がやっていることが姉妹の絆も壊しかねない最低な行為だってことに」

「わかってるけど理解できてないんじゃないかな。今はたぶん、ジンさんのことしか目に入ってない。恋は盲目とはよく言ったもんだよ」



 瑠奈が私の顔をチラリと横目で見てスッと座り直した。瑠奈はよくわかっているようだ。私が、怒っているということに。そう。私は怒っているんだ。



「早苗とジンの幸せは奪わせない」



 私の存在意義は、それだけだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ