表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゴブンカツ  作者: サマヨイ
6/19

第六話 思わぬ機会と望んだ展開

彼女達は全身を千切れた管から滴る粘性の高い鮮やかな緑色の液体に濡れても微動だにしない。

いや、自由に動けない程に貫かれていたはずなのに緑色に染まっている以外にかすり傷1つ見当たらなかった。


彼女達は遠い場所を見つめるように呆然とした様子で固まっていた。

壁が静かに開いてメットとボディスーツを着込んだ者達が彼女達に向かって何かを投げつけられても抵抗一つせずに電源を切られた機械のように無反応だ。


当たった物は瞬時に膨れ上がり彼女達を飲み込んで赤いブツブツの塊になっていく。

完全に彼女達が埋まりきってもメットの者達は警戒した様子でジリジリと塊へと近付いていく。

恐る恐る塊を蹴ってみたり揺すってみたりしてようやく彼女達の無力化に成功した事を確信したのか安堵の歓声をあげる。


しかし途端に悲鳴に変わった。

塊から所々緑に染められた鎧に包まれた腕が飛び出たからだ。

メットの者達は慄き叫びながら腕に目掛けて例の物を投げつけるが恐怖のあまり多くが的外れな方向へ飛んだり逃げ遅れた味方へと間違って当ててしまったりと散々だった。


「…メニューの使用時は無防備になるのか」


その間に大柄な女性は塊から抜け出し、まともに当てられ膨れた赤いブツブツを鬱陶しそうに引き剥がしながら呟く。

その視線の先には4つの赤いブツブツの塊が鎮座している。

彼女達も抜け出そうと足掻いているようだが塊から出られずに多少揺れているだけだった。


「取り敢えず…お前達は邪魔なんだよ!」


大柄な女性が一言吠えるとメットの者達は投げる事を辞めて我先に逃げ出した。

赤いブツブツに間違って当てられ逃げられなかったメットの者を無視して大柄な女性は奥で揺れている塊の破壊に取りかかった。


「おいおいメニューを閉じたら真っ暗だったから驚いたぞ」


「おーい、早速踊ってくれ。

体力がギリギリしかなかった」


「…やっぱ踊らなきゃダメ?

ほら汚れてはいるけど傷は一つもないんだしさ」


「蘇生スキルがないから早くやれ」


「…【安息の舞】」


黒いローブの女性に急かされごねていた褐色の女性が以前と似たような幼稚で奇怪な動きをした。

しかし、変化はない。

いや、彼女達がまた遠い場所を見つめる呆然とした顔をしたがすぐに意識が戻った。


「よし、リジェネのバフがちゃんと付いてたぞ。

そのまま踊ってて」


「うひぃ、恥ずかしいよぉ」


クネクネグネリと動きながら褐色の女性は羞恥心に悶えていた。

彼女達以外に身動きを取れないメットを被った観客も居るので尚更、恥ずかしいのだろう。


「泣き言なんて辞めろ。

体力が全快するまで踊れ」


「いつでも精神力を回復できるぞ。

こっちの俺が」


「任せろ」


幼女がエプロンドレスのポケットを探って小瓶を取り出して見せつけるように軽く振っている。


「しかし、ここが迷宮だとは思いもしなかったな。

体力が尽きる前に触手を倒せて良かったな!」


「あの触手は奇襲特化だったんだろうな。

すぐに千切れたから助かったが…

先手をうって自由を奪うエネミーなんてあのゲームらしいな」


「そのおかげでレベルも上がってスキルポイントも得られたし、メニューも一部とはいえ使えるようになったから結果オーライだろ」


どうやら彼女達は以前、使えないと落ち込んでいたはずのスキルやメニューを使えるようになったようだ。


「なぁ、これもエネミーの一種と考えるべきか?」


身動きの取れないメットの者のうち1人を見下ろしながら銃口を向ける赤帽子の少女。

銃口を向けられた者もそれが何か知らないだろうに自分が殺されそうになっていると分かっているのか泣き喚いている。

その言葉は分からないが命乞いをしていると理解したのか赤帽子の少女は難しい表情をしているが銃口は逸らさなかった。


「辞めとけ。

人型のエネミーの可能性も確かにあるが1人を殺せば相手は本気で俺達を仕留めにくるぞ。

それに…後味が悪い」


「それも…そうだな」


赤帽子の少女はそう言って安心したように息を吐くとメットの者から離れた。

それと入れ替わるように黒いローブの女性が近付きボソボソと話しかける。

メットの者から驚きの声があがった。


どうやら触手に襲われる前に言っていた言葉を理解つつあるというのは本当だったのか、会話が成立しているようだ。


何度か言葉を交わすとメットの者が大声を出した。

どうやら他の者に何かを伝えているようだ


「交渉成立だな。

おーい、こいつらの赤いブツブツを取るのを手伝え。

襲わない代わりに助けるって話を通したぞ」


黒いローブの女性が呼びかけると4人はメットの者達に近付いて赤いブツブツを取り除き始めた。


「沼エルフの頭は凄いな。

本当に言葉を理解しちまったのか」


「ちょっとした裏ワザさ。

これに通訳させたのさ」


そう言って黒いローブの女性は空中に浮かんでいる青白い炎、人魂のような物を指さした。

【スナイパー】


【迷宮の國】のアタッカー系の職業の1つ。

自由に精製できる銃弾と特殊な銃を使って戦う。

スキルによって銃弾を造り任意のタイミングで攻撃できる為、事前にスキルを使用しておく事でいつ敵が現れても先手で撃ち込める。

銃弾には攻撃特化から妨害効果のある物まで様々。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ