第一話 5人の転移者
新しく書いてます。
よろしくお願いします。
暖かな日差しに心地良い風、生命溢れんばかりに生い茂った草原に5人の女性が輪になって座り込んでいた。
彼女達は方向性こそ違えどもいずれも美しかった。
まるで世の男性のみならず女性の理想をも体現したかのような彼女達は似たような表情で話し合っていた。
「おい…本当の本当に、お前らは俺なのかよ?」
全身を華美で重厚そうな鎧に包まれた大柄な女性が凛々しい顔を歪めて4人に尋ねた。
その傍らには怪物の顔が描かれた壁のような物が地面に突き立てられ女性はそれを片手で支えていた。
「しつこい。
何度も確認し合っただろ」
大柄な女性に呆れた声音で返したのは黒い箱に腰掛けた黒いローブの女性だった。
顔はローブと前髪で隠れて見えないがその隙間からは人とは思えない紫色の素肌と骨で作られた装飾品が覗いていた。
「名前や生年月日なら調べれば分かるだろうけど…
神への賛辞を一斉に言えたからなぁ。
こればっかりは俺にしか分からないだろうし」
薄めの生地と鮮やかな装飾品で豊満な己の肉体を必要最低限しか隠していない褐色の女性が悩ましいという表情で言う。
「その一点で5人とも青柳 京介という証明になるだろ」
ドクロをデフォルメしたバッジの付いた赤帽子に真紅のコートを着た少女が褐色の女性をフォローした。
しかし、その視線は手元の特徴のある銃に釘付けだった。
「神を讃える熱意に嘘偽りなし」
エプロンドレスを着た幼女が己の体程のあるカゴを前に抱えながら納得したように大きく頷いた。
カゴの中には色々な物が入っているようで幼女が動く度に中の物が溢れ出しそうだ。
「…なんで酒飲んでゲームしてたらいつの間にか知らない所に居て5人に増えて性別まで変わってんだよ」
大柄な女性が忌々しそうに疑問を口にした。
気を紛らわす為か金糸のような髪が乱れるのも気にせず乱暴に頭を掻く。
「そんなの俺が知るわけないだろ」
黒いローブの女性が鬱陶しそうに吐き捨てた。
そして胸元のローブを少し引っ張って中を覗いては深いため息を吐いた。
「…よく見たら全員神がデザインしたキャラに似てる?
【迷宮の國】の女性キャラのさ」
褐色の女性が難しい表情から一変して引っかかっていた疑問を口にした。
「今更だよ。
この銃を見て。
神の資料集に載ってた物と全く同じ物が俺の手の上に!」
特徴的なデザインの銃を自慢げに掲げながら少女は興奮していた。
「…つまり、ここは…ゲームの世界?」
幼女がポツリと思った事を口にした。
その瞬間に5人は時が止まったように動きを止めた。
「「「「「…マジ?」」」」」
数秒後には5人揃って同じ言葉を口にした。
「え…
俺、帰れるのか?」
「いやいや、もしかしたらこれは夢かもしれないし」
「確かに頬を抓っても痛くもないけどさ」
「夢ならいつか覚めるけどさ。
もし、これが現実ならさ」
「でも…帰るってどうすれば?」
不安と疑問で満ちた言葉を5人がそれぞれ言い出し止まりそうもなかった。
答えのない堂々巡りな会話が続いた。
しかし、一言だけ。
たった一言で話が前へと進み出した。
「神の居ない世界」
幼女がポツリと悲しげに呟いた。
「それは…確かに居ないだろうな」
大柄な女性が少し迷ったが幼女の言葉を肯定した。
「神は神でも神絵師だぞ?
文化は越えられても世界は無理だろ」
黒いローブの女性から呆れと諦めを混ぜた声が出た。
俯いたせいかローブからは顔はおろか素肌さえも見えない。
「なぁ、ゲームの世界に入って来れたんだ。
現実の世界に戻る方法もきっと有るんじゃないか?
神も言ってただろ、先を諦めずに」
「「「「足掻いた者が全てを制する!」」」」
褐色の女性の言葉に4人は一斉に答えた。
それがきっかけになったのだろう。
自分達の身に起こった不可思議な出来事から湧き出た不安は綺麗に吹き飛んでしまったようだ。
彼女達は元の世界に戻るという目標に向かって何をすべきか話し合い出した。
【迷宮の國】
主人公が崇拝している絵師がキャラクターデザインを担当したゲームシリーズの一つ。
内容は魔物がひしめく迷宮をスキルを駆使して探索する死にゲー。
売りは簡単に味方が死んでしまう難易度と広大な自動作成された迷宮。