Ep1.【蠢く根幹】
西暦2105年、5年前に突如として空から降り注いだ光の雨。その日をさかいに人々の体には未知のエネルギーが溢れ、強力な力を引き出すことができるようになった。
具体的には自分が想像したものが具現化し、手元に武器として出現するであったり、強力な能力を使えるものである。
なぜ5年前にこのような症状が現れるようになったかは未だに謎で、未だに不明な点も多い。
人によっては使える人もいれば、使えない者も中にはいる。
丁度、2099年にとある大きな戦いが勃発し、強力な支配者がこの世界を征服しようと目論み、それを阻止するべく立ち上がった三人の若者によって倒されたという。世間ではそれが原因ではないかと囁かれてはいるが真偽は未だに不明である。
――――ここ東京都には平凡に暮らす人々が山ほどいる。空を見渡せば巨大な雲が浮かんでいる青空が、その空の下には数知らずに立ち並ぶ高層ビルなどが建ち並んでいる。
1人の少年は学校の教室の外から街を眺めていた。
「今日も平和だな。俺は早くあの雲みたいになりたいよ」
「……なあちゃんと授業聞いているか? 十文字」
ふと少年が前を振り向くとそこには、黙々と授業をしている教師の姿があった。教師は少年の方を睨め付けながら、手に持っているチョークを黒板に向かってトントンと突いていた。
どうやらだいぶ怒っているようだ。
「すいません、先生。……いやあ今日は良い天気だなあって」
と誤魔化しの台詞を吐くが。
「お前勉強する気あるのか」
皿に睨み付けるような顔で少年に視線を送る。そして本当はサボっていることを白状するように少年は。
「すいません、聞きますよ。サボっていたことは謝りますから」
素直に謝ると少年は再び、授業を受けるのであった。
この少年、【十文字 隼人】はとある地元の高校に通う15歳である。現在一人暮らしで、東京には高校の進学を機にここへやってきた。
何一つ迷い事もなしで友達も普通にいるのだが、やりたいことは1つもない。
「俺のしたいことってなんだろう」
昼休み、校舎の屋上で寝転がり目を瞑る。そうして考え事に思い耽っていると。
「なんだよ、暇そうにそんなこと言っちゃってさ」
「うおっ」
隼人は飛び跳ねるように起き上がる。
「いきなり話に入ってくんなよ。びっくりしただろ」
「ごめん、ごめん。」
「でも礼治何用だよ」
「暇だから来た」
「お前もかよ」
彼、礼次は隼人の仲の良い友である。入学して早々声を掛けてきて、それから友という関係を築いた。……もっとも礼次は隼人のことを親友と勝手に思っているらしいが。
「なあ、隼人それより聞いたか。明日留学生が来るらしいぜ」
「どこからそんな情報手に入れたんだよ」
「単に職員室の話し声から聞いたんだけどよ、しかも女らしいぜ」
「くだらない盗み聞きの情報はいいからさ、どこのクラスに入ってくるんだ」
すると、礼冶は。
「うちのクラスだってさ」
「まじか」
こくりこくりとにやけた笑顔で首肯する礼冶。
「騒がしくなるな、うちのクラス」
「そんなこと言わずに、本当は興味あるんだろ?」
しかし隼人は呆れた顔をしながら。
「俺はそんな転校生なんか興味もないし、関わりたいとも思わねえわ。勝手に盛り上がっていろって感じ」
皆目興味すらしめさなかった。
「まじかよ……お前とは共感できると思ったのに。この裏切り者!」
期待を裏切られたせいか、自棄になる礼冶。彼は隼人が共感してくれると信じていたらしいのだが、その希望はことごとく打ち砕かれてしまった。
「……まあ全く興味がないことはないけどな」
すると開き直るように、再び立ち上がった礼冶は。
「なら! どんな美少女がくるか、想像しようじゃないか!」
しかしそれを打ち消すように隼人は言う。
「それは無理、付き合ってられんわ」
再び心に深い傷を負った礼冶であった。
「お前何見てんだよ」
それから暫くして、隼人がスマホでとあるサイトで掲示板をみていると、礼冶がのぞき込んできた。
「お前立ち直るの早えな、おい。……ちょっとした掲示板をな」
「……なになに? 『光の雨の謎を解き明かすスレ』? なんだこれ」
「最近なんか気になってな。ほら5年前に一部の人間に特殊な能力や武器が使えているやついるだろ? 世間では未だにその謎はわかっていないんだけど、ここのスレで全ての謎を解き明かそうって数日前から突然立ち上がったスレなんだけどさ」
「ちょっと気になる感じか?」
「まあな、あの謎の力の正体は一体何なのか。誰でも使える能力ではないのか。謎は溢れるばかりだな」
「……確かに俺もそれ機になりはするな。それにあの武器1度でもいいから使ってみたいし」
「バカかお前は。下手すれば人を殺す殺傷武器になりかねないんだぞ? それ分かって言っているのか」
「……すまん」
隼人は礼冶のことは無視して、掲示板をみる。
『なあ光の雨の正体、結局一体なんなんだ』
『噂によれば、数年前に起きたあの戦いが原因だとか』
『それきいたことある、それを起こしたヤツが原因じゃないかってはなし』
『結局それ噂だろ? どうせ誰かが広めたガセネタかなにかだろう』
『あの戦いの真相を知っているのは当時立ち上がった三人の誰かしか知らない。もっとも1人しか今いないらしいが』
(当時立ち上がった三人ねえ。その人が鍵を握っているのか)
隼人は授業時間が近くなってきたので、スマホをポケットにしまい、教室へと駆け出した。
「お、おい待ってくれよ」
隼人は帰りに家電製品店に訪れていた。外に立ち並ぶテレビに目がいく。
『次のニュースです。ロシアが大規模な軍事開発を始めました。詳細は不明ですが、これから国の平和のためにこの軍事開発に手を入れたようです』
『私達が安心して暮らせる世の中にしてもらえれば良いですね』
『それでは次のニュースです。……』
軍事開発を執行したというニュースが流れていた。隼人は多少気にしながらそのニュースに考えを馳せた。
「軍事開発か。大胆なことするものだな。結構特殊能力を使える人が多かったりして。……帰るか」
隼人は帰ってからも気になることを徹底的に調べていた。
数年前の大きな戦い、そしてそれに関与している者は果たして今いるのか。
そして謎を解き明かすべく、ネットに転がり込んでいる情報を調べていると。
「これは」
隼人が見つけたのは、5年前の記事であった。大宮大輔という一人の研究者に関する記事であった。
『大宮大輔は、この世に超能力は絶対に存在すると学会で発表した。本人曰く人には隠された潜在能力が秘められているといい、その力はいずれ人が扱う大いなるものとなるだろう。と。 しかしこれは疑わしい結果に終わってしまい、大輔はこれをさかいに失踪し、今は行方不明となっている』
「それで大宮大輔はそのあとどうなったんだ?」
続きを読むと驚くべきことが書いてあった。
『戦いが勃発してからは、完全に消息を絶った。戦いを引き起こしたとみられる怪物の口調が妙に彼に似ているのは気のせいかもしれないが、真相は謎のままである』
大宮大輔と名乗る人物、そして今の能力の現象。何かしら引っかかるものがあると隼人は考えた。だが、世間には未だにやはり郊外されていないことあるようだった。
「誰もこの真相にたどり着けていないのか。……わからないならもうそれでもいいんだが…………気していてもしょうがない今日はもう寝るか」
それから寝ようとしたが、気になりすぎて一行に眠れなかった。
仕方なしに夜中の街を歩くことした。歩くと言っても近所なので、そう遠くまで行こうとは考えていない。
「こんな時間に学生が一人歩くのもなんか変だと思うが、寝れないのは仕方ないことだしな」
外に出ると周りは真っ暗だった。住宅の電灯はほとんど消え、余所の家はもう寝付居ている感じだった。道の途中に差し込む電灯の明かりが隼人の僅かな光源となっている。
「……?」
しかし、暫く歩くと妙な声が聞こえてきた。電柱に身を潜め、向こうをのぞき見た。
「なんだあの三人組。一体何を話しているんだ?」
銀髪セミロングの軍服を着た少女は、男2人と話している。他2人も日本では見知らぬ軍服を着ているが、どういった話の内容かは隼人には分からなかった。だが何かしら重要な話だということはおおかた理解はできたのだが。
「いい? 私は明日からとある学校に潜り込むわ。あなた達は引き続き下準備の法をすすめてちょうだい」
「いよいよか。でも1人で大丈夫なのかよ。なんでも日本の連中は手強いヤツばかりって聞いているし」
「こいつなら心配いらねえよ。なぜなら誰よりも強いからな」
「言ってくれるじゃない。……まあ期待に応えられるよう頑張ってみるわそれじゃあね」
三人は三つに分かれ違う道へと向かった。だが1人は……隼人のいる方向へと向かっていた。……それは先ほど喋っていた少女であった。
「うん?……君は。どうしたのこんな時間に」
さっさと行こうとしたが、向かおうとした時にはもう鉢合わせていた。先ほどは後ろ姿だけで顔はよく見えなかったが、今は鮮明に全体が見えていた。黒白を基調とした軍服に頭には小さな帽子を着けている。多少女警察官の服に似ている箇所はあるが、誰がどう見てもそれは軍服だった。胸辺りにはロシアの勲章が曝け出してあった。
「それはこっちの台詞だよ。なんでこんな夜更けに外国の軍人がつき歩いているんだよ」
「初対面のくせによくそんな生意気な台詞をべらべらと吐けるわね。……見た感じ私と同じ年齢に見えるけど、君何歳?」
「15だけど」
相手の話に乗せられたまま年齢を言う。何故年齢を聞いてきたのかは知らない。
「私と一緒ね、……こっちには見回りに来ていたのよ。丁度大切な話をとある日本人としに……ね」
「じゃあさっき丁度通りかかって見ていたんだけど、あれはそのうち合わせかなにかなのか?」
すると銀髪の少女は目を丸くさせ、そっぽを向きながら答える。
「…………あーあ、そうよ、そうよ。そのうち合わせよ! ほら話すのって万国共通だし…………ね。……さっさ! よい子はもう帰った帰った」
和やかに誤魔化すように隼人にそのように言った。だが、隼人は気になっていた。本当は違う話ではないかと。そして思い切り意を決して少女に聞いた。
「なんか怪しいな。教えてくれよ本当のことを」
その言葉に少女は言動を変えた。冷徹で恐怖を漂わせる声質で。
「いいから帰れ……大人しく……」
「で、でも…………」
「…………これ、なんだか分かる?」
少女の片手には、隠し持つように物騒なものが握られていた。
純金製でできたもの。そして隼人の耳から「カチャッ」という音が一瞬聞こえた。
それは――――――
紛れもない。本物の拳銃だった。
途端に隼人は目を丸くさせ、恐怖で体を震えさせる。
(あれは…………本物の銃? なのか。玩具じゃなくて本物の………………)
「その顔は恐怖……いや死に怯えている顔ね。…………今なら見逃してあげる。だからもう一度警告するわ」
「帰りなさい」
その言葉に恐怖を覚えた隼人。そしてその場から離れるように駆け出そうとする。死に物狂いで直ぐさま立ち去るように。
立ち去ろうとした直後、少女は警告するように口を開いた。
「あと1つ言っておくことがあるわ」
「な……なんだよ」
「知って後悔することだって沢山あるんだよ」
「ッ!!」
「それじゃあね」
隼人は一目散にその場を離れ帰った。自分の家へと。
そして今日あったことは忘れるように考えそのまま寝付くのだった。
(いいから帰れ……大人しく……)
「……これは縁起の悪い夢なんだきっと」
翌日朝一学校で隼人は、ホームルームの時間前に昨日のことを考えていた。
「あの銀髪少女一体何者だったんだろう。怒らせると少し怖い雰囲気だけど根は優しそうなんだけどな」
しかしやはり昨日の光景が脳裏でフラッシュバックする。
「あの物騒な武器結局なんだったんだ。知らない方がいいとか言ってたけどそれじゃ余計気になるよ。でもあんな武器……どの本でも見たことなかったぞ」
1人小さな声で呟いていると、ドアが開き担任教師が入ってくる。
ホームルームの時間である。
「お前ら席に着け」
教師に言われているのにも関わらず、行儀悪く言う事を聞かない生徒達。
「静かにしろ」
2回目、教師怒鳴り声で怯えたのか静まり返り個々の席へと着席する。
「朝礼のまえにな、お前らに1つ。今日転校生がやってくるぞ……準備はいいか?」
すると教師は教卓の向こうにあるドアへと声をかける教師。どうやら転校生と話しているようだ。
(そういえば、礼冶が言ってたっけ。今日転校生が来るって……。一体どんな子なんだろう)
「……それじゃ入ってこい」
教師に呼ばれると扉が開き、転校生が入ってくる。
誰かと教室に入ってくる転校生側をみると。
「えっ」
思わず声を漏らす。
昨夜見かけたあの銀髪少女――――。
その少女の姿が、クラスの前にあったのだ。
「なんで君が……」
思わず目を丸くし、現実を再確認する。
「エカテルナ・ジェスチです。皆さんよろしく」
微動だにせず首肯し、席へと座る。エカテルナの席は隼人の一番後ろの席から見て斜め方向の教室入り口側だ。
声は聞こえない距離ではあるものの、おのずと彼女の視線から凄まじいオーラを隼人は感じ取る。
――――夢じゃなかったのか、あれは。
読んで下さりありがとうございます。
そして改めまして自己紹介させていただきます本制作者のもえがみ☆と申します。
さて本作品は、21世紀以降を舞台とした「もしも世界が殺人世界になる未来があったら?」というもしもの世界線を題材に作った殺人近未来作品となります。
超グレーなワード殺人というテーマで作っておりますのでグロい描写などが所々出てくる場合があります。無理な方はご了承を。
さて、謎の転校生エカテルナ。彼女の正体は一体。
そして昨晩隼人がみた謎の銃は一体何か。
では次回でまたお会いしましょう。ではでは。