第10話 アマンダの聖女
俺は悪夢にうなされていた。
身の丈200センチのツインテールでの大男に締め上げられ一緒にダンスを踊らされている。
「誰か助けて!」
□
その時、ふと目が覚めた。
目を開けるとそこに悪夢と同じオネエの顔面があった。
俺は再び意識を失った……
しかし間髪入れずに彼女に起こされた。
「よかった。
目が覚めたのね
でもまた眠ろうとしたから
叩き起こしたわ」
「はい。
でもこの下りは前にもありましたから大丈夫です」
「お連れの女の子から手紙は貰ったわ。
トレイシーを助けてくれたみたいね。
お礼を言うわ。
ここはアマンダ修道院の
離れにある孤児院よ」
マザー・メイは俺にコーヒーの入ったカップを差し出した。
「トレイシーの方にも
レオポルドのやつらが行ったみたいね」
「メイさん達が孤児達の事でレオポルド達と
争っている事は聞きました。
しかしトレイシーさんは
メチャクチャ強いので全く
問題なさそうでしたけどね」
「いえ。
レオポルド達を侮ってはいけないわ。
奴らのやり方はとても狡猾だからね。
トレイシー自身も
良く分かってるはずよ。
私たちはもう4年も争っているから
よくわかるのよ」
「4年もですか!?」
「そう。
それに、孤児達の件だけではないわ。
奴らがわざわざ
こんな小さな村を必要に狙うのは
4年前の事件が関係しているからよ」
「4年前の事件?」
「そう…。
全ては、この村で起こった
あの事件から始まったわ」
◆◆◆◆
4年前アマンダ村。
アマンダは貧しい村だったが村の人々は皆、日々の生活に幸せを感じ暮らしていた。
村には修道院があり、そこには12人のシスターがおり、その中にシスター・アイリスという一人の女性がいた。
彼女がローブを被り、修道服に身を包んだ姿は驚くほど美しく村人から愛され、アマンダ村の平和の象徴として慕われていた。
そんな彼女に思いを寄せるひとりの男がいた。
名前はヴィンセント・ギブソン。
肩迄あるウェーブのかかったブロンドに、口には無精ひげを蓄えている。
彼は、かつて傭兵団で団長をしていたが、戦争が終わって偶然立ち寄ったこの村でアイリスに心を奪われてこのアマンダに住み着くようになった。
現在は村の狩猟や農業などをする傍ら、村の若者や昔の傭兵仲間も呼び寄せて村の自警団を結成しアマンダ村の治安維持に努めていた。
全てはアイリスに喜んで貰いたかったからに他ならないが、アマンダに住みついてからというもの、彼はこの穏やかで平和なサイレント・アマンダ村をいたく気に入っていたのである。
「やあ!アイリス、調子はどうだい?」
「あらヴィンス。
実は今日もクロス・ローズで
保護された新しい孤児の子がいたわ。
だから今回も養子縁組を
してくれる方を探す為に
手紙を書いていたのよ。
見つかるまでまた修道院で
保護するつもりよ」
「また孤児か、それは大変だな!
まあこんな御時世だから
そんな余裕のある人を探すのも
本当に大変だよな。
どこの国も戦争戦争で
民衆は疲弊しきってるしな」
「まあ、気長に探してもらうわ
今日来た子は
8歳の男の子なんだけど
名前はテリーっていうの。
とってもいい子だから
修道院のシスター達も村の人達も
きっと気に入ってくれるはずよ!」
「そうか!
後で是非、紹介してもらうよ!
しかし、近頃孤児が多いよな
親探しも限界がありそうだな……
そうだ!
俺がこの村に孤児院を作ってやるよ!
村の若者も減って来ているし
子供が沢山いた方がいいよ!
その子達の生活費は俺が何とかするよ!」
「はあ……また貴方は無茶な事言って。
貴方には村の自警団もやって貰ってるのよ
貴方が過労で倒れたりでもしたら大変よ」
「大丈夫だよ!
鋼の肉体を持つヴィンセント団長は
倒れたりなんかしないって!
それにアイリス、君はシスターだから
結婚して子供を持つ事が出来ない。
なら、孤児院の子たちを
我が子のように可愛がればいい!
……俺と一緒に! 」
「ふふ、そうね。
『あなたと一緒に』っていうのが
ちょっと気になるけどね」
アイリスはそう言ってほほ笑んだ。
そこに、傭兵団の仲間が慌てて走ってきた。
「ヴィンセント!村に盗賊が来た!
かなり手ごわい……あと……
とにかく凄く変な奴らなんだ!
今、自警団で応戦してる。
すぐに手を貸してくれ!」
「分かった!
今すぐ行く!」
「ヴィンス……
くれぐれも無理はしないでね」
「大丈夫だ!
俺は元戦場の無敵の傭兵団長
ヴィンセントだぜ!」
ヴィンセントは急いで村の中央にある広場に向かった。
そこで自警団を相手に暴れていたのは15人の女装した筋骨隆々の盗賊団だった。
その中心に、ひと際大きい身長2メートルは超えるだろう大男がいた。
「あんた達、大したことないわね!
死にたくなかったら
早く金と食料
あとイケメンを私たちによこしなさい!」
「……
何だ、お前らは。
やけに気味の悪い……
いや個性的な盗賊だな……」
「あら。
この村で初めて見るいい男じゃない。
ワタシは盗賊団バンテッド・メイの団長メイよ。
わたしの愛人になるなら
あなただけでも可愛がってあげるわよ」
「お断りするよ。
俺はヴィンセント!
それに、俺が愛する人は
この世界でたった一人しかいんだよ!」
「仕方ないわね。
抵抗する奴はたとえイケメンでも
痛い目を見てもらうわよ!
そして、
わたしの愛の奴隷にしてやるわ!」
「絶対にお断りするよ……」
ヴィンセントはメイに向かって走り、ジャンプしながらメイに剣で切りかかった。
「残念だけど
ワタシに刃物は通らないわよ」
突然メイの腕が膨れ上がり高質化してヴィンセントの剣をはじき返した!
「痛ってぇ!
あれは魔力を使った
身体強化スキルの一種か?」
「あら。
よく分かってるじゃない
なかなかの腕みたいだけど
剣じゃ私には勝てないわよ」
「確かに、そのようだな。
それじゃあ、ちょっと頭を使わないとな」
ヴィンセントは再び、飛びかかり剣を振り下ろした。
「学習能力の無いやつね!
今度はその剣ごと腕をへし折ってやるわ」
その瞬間、ヴィンセントは剣を横に向けた。
「??」
ヴィンセントはメイの剛腕を剣を斜めにして滑らせていなした。
そして、メイの肩に剣を引っかけそのまま、ひねって何と剣と使ってメイの肩関節極めた。
《ボコ!!》
ヴィンセントはメイの肩関節を一瞬にして外した。
痛みをこらえたメイが気づいた瞬間には、
メイの首元にはヴィンセントの剣が当てられていた。
「まだやるか?」
「いえ……ワタシの負けよ。
あなた強いわね。
殺すがいいわ」
その頃、他の盗賊団員もヴィンセントの仲間の精鋭たちに抑え込まれていた。
「もう村を襲わないなら
修道院に医務室がある。
手当をしてやるからついて来い。
傷が治る迄なら面倒見てやる」
「何を!?
私たちは村を襲った盗賊よ!
助けてくれるって言うの?」
「ここは慈愛の村サイレント・アマンダだ
すべて人はシスター・アイリスによって
神の愛を受ける権利がある」
「……。
ワタシ達の負けよ。
そうさせて貰うわ……」
ヴィンセントは剣を鞘に戻し、修道院に向かって歩き出した。
「強くて、美しい。
そして優しい男……。
彼は今まで見てきた中で最高の男よ」
盗賊メイは恋に落ちた。
To Be Continued….




