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この小説を書き始めてしまった元凶である友人に「ブックマークした?なんか一人だけどブックマーク者いるんだけど」と聞いたら、そもそもアカウント作ってないからブックマークなんてしてないよ?と言われ焦った。
誰ですかね…こんな小説にブックマークしたのは…
身内…?身内だよね…?
拝啓お父様お母様、タツキです。
僕は今異世界に来ていますが怖い所です。
ついでに人としての尊厳も失いました。一生の笑いの種として行きたいと思います。
17年生きてきて、これ程までに死にたいと思ったことはありません。
お願いです。父と母、人生の大先輩としてでも良いです。
洩らした後にすれば良いことはなんでしょうか。
思考が現実逃避をしながらも股間から溢れ出す聖なる水は、我慢していた分あっという間に床を濡らしていった。
半分泣きながらもどこか言い訳を探しているみっともない男は言い訳を作る事にした。
そうだ。あの貼り付けになっている奴が悪い。
なんでこんなところに居るんだよ。
こっちみんなよ。
こわいやんけ。
心の中で必死に、名も知らぬ少女に責任を押し付けながら徐々に冷静になっていくタツキ。
良し、俺は何も悪くない。
誰も見ていない。
ズボンは脱ぐ。
パンツは…気持ち悪いが履いたままで良いか。
洩らしてから僅か10秒も経たぬ内にどこか悟った表情をしながらもこの惨状を引き起こした張本人を見る。
小汚い薄い囚人服の様な物を上下に着用し、壁から直接生えている手錠に十字になって貼り付けにされている少女は先程の目つきから変わり少し困惑しているような目で俺を見ていた。
「…君は」
「何もなかった!いいね!?」
カッスカスのよく聞いてなければ聞こえない声で少女は何かを言おうとしていたが、遮ってしまった。
「なんでもいい…」
「ん?」
「君は…この国のモノでは…無いとお見受け…する」
「ごめん良く聞こえない。なんて?」
声がカスカスでよく聞こえない。
仕方ないので聞こえる範囲まで近づいて、気づく。思わず目を見開き心境は変わる。
服はボロボロで所々破けている。そしてそこから覗くのは恐ろしい傷の数々だ。
服の汚れは恐らく全て血。傷も遠めから見たら汚れだと思う程にぐちゃぐちゃになり出血を繰り返したかのような考えたくもない傷だった。
ハッとなり思わず辺りを見渡す。
ここにあるのはよく分からない道具は拷問道具だ。人を痛めつける事しか想定されていない非道の道具。
道具に付いている黒い汚れは血だ。
もしかすればその血はこの目の前の少女のかもしれない。
弱弱しく言葉を紡ぐ少女に俺はもう警戒を解除し近づいていた。
もしかしたら極悪非道の女で拷問を受けるに値する人物なのかも知れない。だけど俺の中の善意が完全に同情していた。
こんなおぞましい事をする側の人間が正しいとは思いたくなかった。
「どうした?俺は何をすればいい?」
「国に…エーテルニア国に…伝え…て欲しい」
「何を?何を伝えりゃいい?」
「この国の…異常さを。…戦争の火種を…」
「よく分かんないけど分かったぜ。任せとけ」
話しながら手首の付いている手錠を外せないかとガチャガチャしているが、ビクともしない。
手錠にはカギ穴があるのが定番だと思っていたがそれも見当たらない。
「どうなってんのこれ」
もしかして一度付けたら外れない系の物かと少しだけ焦る。
そこで俺は考えた。
周りには色々と道具がある。
本来どうやって使うのかとか考えたくは無いが、もしかしたらこれらを使用して手錠を外せないかと。
そうと決まれば使えそうな道具を漁るべく俺は部屋の隅へと移動した。
この時の俺の行動は正解だった。
隅に移動し、人一人が隠れられる大きな道具の近くに行った瞬間、扉が開いたのだ。
俺はまた心臓が飛び出る程驚いたが、声を何とか出す事なく直ぐに道具の後ろに隠れることが出来た。
「あっぶねえぇぇ…」
深く息を吐く。
こんなヤバそうな場所で見つかったら確実に拷問コースだ。それだけは絶対に嫌だ。
ったく…、一体どんな奴だこんなことする奴は…。
見つからないようにそっと影から覗き見る。
「ふふふ…、聞いて下さいよルナイルさん?わたくし貴方よりいいペットを見つけましたわ」
信じられなかった。
そこにはアリシアが居た。
俺の一目惚れから始まった儚い恋は一瞬にして砕け散った瞬間だった。
美しい顔には裏があるにしてもあんまりだ。
「そうそう、そのペットのお陰で貴方の利用価値も随分上がったわ。計画が振り出しに戻ってしまったもの。…でも悲しいわ、貴方をこれ以上痛めつけられなくなって。寂しくなるわね、だから今日は特別。最後のお楽しみをしましょう…」
うっとりとした表情を浮かべ、その手に持った拷問器具を撫でる。
ゆっくりと貼り付けの少女に近づき、手錠に手を添えるとガチャリという音と共に両手の手錠が外れた。
そのまま少女は力なく床に倒れる。
アリシアはご機嫌に鼻歌を歌いながら手に持った拷問器具を少女に取り付けようとした。
俺は走り出していた。
あれを取り付けさせてはいけない。本能が身体を動かしていた。
「うおおおおおおおおお!!!」
「えっ!?きゃぁ!!!!」
大した距離も無かった俺は、気づかれたアリシアが俺に何かをしようとする前にドロップキックをかましていた。
そのままアリシアは大きく仰け反り、変に角のとがった拷問器具に頭をぶつけ、そのまま気を失った様だった。
一瞬もしかして俺人を殺したか?という不安が頭をよぎったが、うぅ…といううめき声が微かに聞こえ死んではいないと判断した。
とにかくもう逃げるしかない。あまりに都合よく事が進んだとガッツポーズをする余裕もなく、少女を無理やり担ぎ、入って来た扉を身体で押し開け階段を駆け上がった。
「畜生畜生畜生!この世界怖すぎる!あーもう!!畜生!」
隠し扉も押し開け、廊下に躍り出た俺はそこでピタリと体を止めた。
「どこ行きゃいいんだ…?」
そう、俺は地理も当てもなく、行き先を決めかねていた。
この少女を背負っている手前、この城に居るだれかを頼るわけにはいかなかったし、俺自身この城の人間を信用できないと頭に刻み込まれていた。
どうすりゃいい?こっからどう見つからずに移動する?
ぐるぐると思考がループする。不安と捕まったら拷問だろうという恐怖が頭から離れない。
耳元で少女の呼吸が聞こえる。
カヒューというどう聞いても大丈夫じゃない息遣いが、俺を行動する力に変えた。
「頼むから死なないでくれよ…!」
俺は方角もままならない城内を走り始めた。