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1話から4話位に関しては後から一気に改稿する予定ですので、何卒5話までは読んでほしいです。
俺は今、夜空を飛んでいる。
ああいや、正しくは空を飛ぶ生物の上に乗って空を飛んでいる。
ドラゴン?飛竜?俺にはこいつの正式名称なんてものは知らないが固い鱗のある3メートルはあるであろうトカゲが空を飛んでいるという事実は変わらない。
安全を保証する縄など無く、コイツの首に振り落とされまいと必死にしがみ付いている訳だが、時折下がチラリと見える。
生まれて初めて見る光景に、小便ちびりそうな感覚を抑えながらもある種の感動を覚えつつ、こんな事になるとは聞いてないぞとこの状況に持ち込んだ張本人に文句を言いたくはなるが、そんな事を言っている余裕もなく、代わりに出てくる情けない悲鳴は上空に消えていく。
「すまないな!だがもう少しの辛抱だ!前の山脈を抜ければ休憩できる!それまで耐えてくれ!」
「えぇ!?なんだって!?」
俺の後方から声が飛んでくる。
しかし俺はその声をしっかりと聴けるような状況でもなく風切り音もあり殆ど聞き取れなかった。
空飛ぶトカゲは山脈上空へと差し掛かる。
「不味いな…捕まれ!!!」
「え?うぉ!!!」
トカゲの飛び方が急に変わる。
まだマイルドといってもいい飛び方だったが、急に戦闘機じみた軌道に変わる。
「なんだってんだ畜生!」
首に必死に捕まっていた俺は鳴き声が混じった叫び声で悪態をつく。
状況が理解できない。相変わらず振り落とされないようにするので精いっぱいだ。
「山脈の魔物の縄張りだったようだ。平たく言えば追われている…」
落ちるようにして雲を突き破りながら降下していく。
ジェットコースターなんか比較にならない程に急降下していく中、頭上を何かが通り過ぎる。
「熱!!なんか!え!?熱いのが!!」
今度はぐっと急上昇していく。内臓がぐちゃぐちゃになる感覚に吐きそうになるが、ぐっと堪える。
そこで俺は初めて後ろを見た。
何メートルかとは正確には分からないが、結構後ろにいるなと分かる程には何やら生物の群れが俺達を追っていた。
そしてその群れから何やら赤い球体が飛んでくる。
先ほどの熱さと赤い球体。
俺は直ぐに悟った。
「炎吐いて来てんの!?」
「そうだ!!」
「なんでそんな奴に追われてんぐっ!!!」
俺の叫びは虚しく、回避行動による旋回でべちゃりと顔を付ける。
一瞬付近の温度がぐっと上がるのを感じ、ひやりと汗が流れる。
「一気に撒くぞ!」
背中からがっしり押さえつけられる。安定感が段違いに上がった。
それと同時、トカゲの体が一瞬光る。
次々と常識の範疇にない出来事に戸惑っていると、とてつもないGが体に掛かる。
まさに戦闘機かという加速にビビりながらも、押さえつけられてるお陰か体はびくとも動かない。
「奴らの縄張りから出れたな。よし、丁度いい。下に降りていったん休憩にしよう。」
どうやら一難は去ったらしい。
緩やかに高度が下がっていく風景にようやくふーっと息を吐く。
「こういうのも当たり前なのか?」
後ろを振り向き、一緒に逃避行をした女性に半ば諦めたような雰囲気を出しながら声を掛けた。
「その方が面白いだろう?」
「そりゃ大層楽しい人生を送っていたようでなりより…」
ようやく待ちに待った地面に降り立つ。
長時間空飛ぶトカゲにしがみついていた所為か、生まれたての小鹿のようにプルプルと地面に横たわる。
綺麗な空だ。
星々が綺麗に輝く中、大きな月が2つ目ん玉の様に並んでいる。
「はー、ここが現実になっていくんだなって何かある毎に実感するよ」
「星が珍しいか?」
「まあね。俺が住んでた所じゃ、こんな綺麗な星は見れなかった」
そう、ここは異世界。
東京での暮らしも、学生という肩書も、なにもかも無くなった。
「やはり、名残り惜しいか?」
どうも俺からはナイーブな雰囲気が出ていたらしい。
正直戸惑いはあるが、異世界に来てしまったからにはしょうがない。これからの事を考えなきゃ。
「ちょっとね、でもこれから暫くよろしく頼むよ。ルナイルだけが頼りなんだから」
「ああ、助けて貰った恩は必ず返す」
目の前の少女は笑顔で答えてくれる。
「それじゃ、まだお互いにお互いのことをあまり知ってないし…そうだな、何から話すか」
「では、タツキがこっちに来てから私に会うまでの事でも聞いていいかな」
「勿論。そうだな…まずは俺が元の世界から召喚されて」
ぽつぽつと話し始める。
俺がこの世界に召喚されてしまった出来事を。