第3話-B 使い道
プレゼントを渡し終えた後。
「先輩! 一緒に帰りましょう」
「え? ま、まぁいいけど……」
「やったぜ!」
「じゃあいこっか」
こんな、プレゼントをもらちゃった。近いうちにお返ししなくちゃね。そ、それにしても……
「ど、どうして、さっきからこっちをチラチラ見てくるのかな?」
「こんなに長い階段でも先輩と下りるなら良いな~とおもてったんですよ」
「な!? どうして君はそんなに恥ずかしいことをしれっと言ってくるの」
なんで、あんなセリフを涼しい顔して言えるのかなぁ……
「先輩のことが好きだからですよ」
「くぅ、そんなことばっかりいってえええ……きゃっ」
照れながら階段を下っていた私は、足元に注意がいかず、あろうことか足を滑らせてしまった。
「あぶない!」
このままじゃ絶対無傷じゃすまないという警告のようなものが、脳裏をよぎった瞬間、思いっきり腕をつかまれ、支えられた。そう、上川君のおかげで、私は助かったのだ。
「あ、ありがとう……」
「大丈夫ですか先輩!?ケガしてないですか?どこか痛いところは?」
「だ、大丈夫だよ~ どこもケガしてないから安心して! それよりすぐに腕をつかんでくれてありがとう!あれがなかったら確実に階段から落ちてたよ」
「本当に、ケガしてないんですね?? ならよかった」
「大丈夫だよ! いこ」
「本当にごめんなさい、今のは僕が悪いです」
そんなこと気にしなくてもいいのに…… 不注意だった私が悪かったんだし、それに、今の上川君は少しかっこよかったな。と思ったが、あんまりいうと調子に乗りそうだったので、
「別になんともなかったんだし、そんなこと気にしないでいいよ」
と、満面の笑顔で言うだけにしておいた。
「先輩は天使ですか!?」
「ち、違います!と、とにかく帰ろ」
「はいっ! よろこんで!」
私たちはその後。昨日見たテレビの話やY○uTubeな話や学校のうざい先生の話や良い先生の話などをした。これじゃあ、まるでカップルみたいだなぁと思ったり、思わなかったり。
「私はこの角を、右だけど君は?」
「僕は、左です」
「じゃあ、ここでばいばいだね」
「そうですね」
「上川君、もっとやばい人かと思ってたけど、全然いい人そうで安心した。これからもよろしく!」
本心だった。 私はきっとこのちょっとおかしい後輩の少年を気に入ったのだ。
「よろしくお願いします。もっと先輩と仲良くなって見せますよ。」
「じゃあね~」
私は、上川君と別れ家に向かって歩き始めた。家に帰るためには怪しげな人気のない路地を通らなくてはいけない。いつも少しだけ恐怖を感じながら歩いていたりする。
上川君、あれはもう、普通に良い人だよね。
「君ぃ~かわいいねぇ」
え? 私は背筋が凍った。こんな事現実にあるのだろうか…… 変なおじさんが私をなめまわすような目で見ている。これは……まずいかも……
私は、直感的にそう感じ走り出した。が、すぐにおじさんも追いかけてくる。
「ねぇ~待ってよぉ~」
う、うそでしょ…… 私は咄嗟に先ほど青空にもらった防犯ブザーを鳴らした。これで、おじさんはいなくなると思っていた。 いくら人気と言ってもさすがに、防犯ブザーを鳴らされたのだから追いかけてくるのをやめると思ってた。だがおじさんは、スピードを緩めることなく追いかけてくる。
ど、どうしよう……どうしようどうしようどうしようどうしよう……
しかし、成人男性の走力に私の走力では、勝てるはずもなくあっさりと捕まってしまった。
おじさんは、私の服を脱がせようとしてくる。
もうだめだ…… あきらめかけた、その時
「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!」
叫び声とともに上川君が現れた。
「がっはぅつあっ! なんだてめぇ。急に」
「だまれ」
そのあとの記憶はほとんどない。
☆☆☆
「う…ん…?」
目を開けるとそこは、よく知っている場所だった。私の部屋である。いつのまに部屋に……
「先輩、目が覚めましたか? 大丈夫ですか?」
そこには、上川君がいた。なんで私の家にいるの?
「なんでここに上川君が……? あっ」
私は、恐怖の瞬間を思い出してしまった。 さっきの光景を思い浮かべてしまった。その瞬間体が震えた。
「せ、先輩…… すみません、僕がもっと早く駆けつけてたら…… いや、違うか、僕が先輩の家の前まで送っていたら」
「う、うんうん。 絶対に上川君のせいじゃないよ。謝らないで」
私は、首を横に振りながら言った。不思議な感じだった。さっきまであんな怖いことがあったのに、私普通に喋れてる。
「未来!!!! 目が覚めたのね! 大丈夫!?」
「お、お母さん。 だ、大丈夫だよ。上川君のおかげで最悪の事態には陥らなかったから」
「本当に、ありがとう。上川君?というのね。 ほんと、なんとお礼をしていいやら」
お母さんは、上川君のほうを向いてお礼を言った。
「いやいや、そんな大したことしてないですよ。それに、僕がここにきてからずっとお礼言われっぱなしですよ?そろそろ照れちゃうんでやめてください」
上川君は、冗談交じりな口調でそう告げた。
お母さん、ずっとお礼言ってくれてるんだ。
「私の、ほうからもお礼させて上川君。 助けてくれて、本当にありがとう!」
「先輩までそんな。 言ったでしょ。僕は先輩のことを守るって」
「じっちゃんの名のかけて?」
「そう、じっちゃんの名にかけて」
「上川君の、おじいさまは武術がすごい人なの?」
お母さんが、真顔で尋ねた。
「いや、マジシャンです」
「えぇ……」
お母さんは、困惑していた。
あんなことがあった、あとだとは思えないくらいに平和な時間だ。
「あの、あの、私を襲ってきた、おじさんはどうなったの?」
「あの後、警察を呼んで対処してもらった。あの時、先輩気を失ってたからとりあえず、先輩のお母さんを呼んで色々と説明したよ。無事捕まったから安心して」
私は、ほっとした。
気、失ってたんだ私…… まったく記憶にないなぁ……
でも、私が助かったのは、これのおかげかな。この防犯ブザーの。まさか、上川君から逃れるためって理由でもらった、防犯ブザーの音で上川君が来て助けられるなんて青空は全く思ってもなかっただろうな~。 ありがとう青空。