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第3話ーA 使い道

 プレゼントを渡し終えた後。


 「先輩! 一緒に帰りましょう」


 「え? ま、まぁいいけど……」

 

 「やったぜ!」


 未来先輩と、一緒に帰れるなんて夢のようだ!


 「じゃあいこっか」


 僕たちは、荷物をまとめて部室を出た。この高校の部室棟は、5階建ての校舎の一番上の階にあり階段の登り降りが、死ぬほど大変である。

 そんな、大変な階段も、一目ぼれした相手と下っていくと不思議と終わってほしくないと思うものである。


 「ど、どうして、さっきからこっちをチラチラ見てくるのかな?」


 「こんなに長い階段でも先輩と下りるなら良いな~とおもてったんですよ」


 「な!? どうして君はそんなに恥ずかしいことをしれっと言ってくるの」


 未来先輩は頬を赤らめながら言った。


「先輩のことが好きだからですよ」


「くぅ、そんなことばっかりいってえええ……きゃっ」


 照れながら階段を下っていた先輩はあろうことか足を滑らせてしまった。


 「あぶない!」


 僕は、アニメの主人公よろしくな身のこなしで、咄嗟に未来先輩の腕をつかんだ。そのおかげで未来先輩は階段からおちて怪我をするという最悪の事態を免れた。


 「あ、ありがとう……」


 「大丈夫ですか先輩!?ケガしてないですか?どこか痛いところは?」


 「だ、大丈夫だよ~ どこもケガしてないから安心して! それよりすぐに腕をつかんでくれてありがとう!あれがなかったら確実に階段から落ちてたよ」


 「本当に、ケガしてないんですね?? ならよかった」


 僕は、全力でほっとした。 先輩にけがをされたら大変だ。しかも、今のは僕がこんな場所で告白したのが原因だし…… やっぱり愛を伝える場所は選ばないとだめだな。


 「大丈夫だよ! いこ」


 「本当にごめんなさい、今のは僕が悪いです」


 「別になんともなかったんだし、そんなこと気にしないでいいよ」


 先輩は、笑顔で言った。

 優しすぎる。


 「先輩は天使ですか!?」


 「ち、違います!と、とにかく帰ろ」


 「はいっ! よろこんで!」


 僕たちはその後。昨日見たテレビの話やY○uTubeな話や学校のうざい先生の話や良い先生の話など、まるで陽キャカップルのような下校イベントをしていたと思う。それはそれは、びっくりするくらい幸せな時間だった。


 「私はこの角を、右だけど君は?」


 「僕は、左です」


 「じゃあ、ここでばいばいだね」


 「そうですね」


 「上川君、もっとやばい人かと思ってたけど、全然いい人そうで安心した。これからもよろしく!」


 「よろしくお願いします。もっと先輩と仲良くなって見せますよ。」


 これは、ものすごくよい流れなのでは……?


 「じゃあね~」


 ふぅ、初めての下校イベント楽しかったな。 やっぱり先輩はかわいいし。表情もかわいければ安納もかわいい。あれは絶対天使だ……

 僕は分かれ道の真ん中で突っ立たまま、今日の未来先輩の可愛かったところを黙々と思い出していた。

 一体、道の真ん中で何をやっているんだ僕は!? 家に帰ろ。

 そう思って、分かれ道を左に歩き出したときそう遠くないところからブィイイイイイイイ!!!!というそこそこ大きな音が聞こえた。


 「なんだこの音? 防犯ブザー? 間違えて音を鳴らしちゃったのかな?」


 いや…… その割には、長いな。間違えたのならすぐに止められるはずだ。何かあったのかもしれないし、行ってみるか。

 僕は、駆け足で音のなるほうへ向かった。

 向かった先でで、未来先輩は謎のおっさんに絡まれていた。防犯ブザーが鳴っているのにもかかわらず先輩の服を脱がそうとしている。未来先輩はもはや声も出ていなかった。僕の中の何かが切れる音が聞こえた。



 「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!」


 僕はカバンの中に入っていた大きめの教科書でおっさんを殴りまくった。


 「がっはぅつあっ! なんだてめぇ。急に」


 「だまれ」


 僕は、おっさんが気絶するまで殺さない程度で本でたたきまくった。

 おっさんが気絶した後、僕は警察を呼んだ。襲われた場所が、人気の少ない路地だったこともあってか、防犯ブザーに気づいた人は全然いないようで、その場には僕と先輩とゴミしかいなかった。


 「先輩…… 大丈夫ですか?」


 「う、うん………… へ、平気だよ。君がすぐに来てくれたおかげで、服を引っ張られたくらいで特に軟化されるってことはなかったから」


 「そ、そうですか。 ケガしてないですね??」


 今日二度目の質問をした。


 「うん。 大丈夫。ほんと…… 君が来てくれてよかった…… 来てくれなかったら……」


 先輩は、泣き出した。静かに。きっとものすごく怖かったのだろう。


 「大丈夫です。 もう僕が倒したので安心してください」


 僕は、先輩を抱きしめていた。 まるでドラマのワンシーンのように……

 ちらっと、地面を見るとさっき僕がおっさんを殴るのに使った本が置いてある。というか僕が置いたやつだ。もちろん全部みぞおちを狙ったので、血などはついていない。ただその本のタイトルをみて僕は、ある男の顔を思い浮かべた。

 『背を高くする200の方法』か…… ありがとう天馬。お前からのプレゼントで先輩を守れたよ。

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