第2話-B プレゼント
「それで?突然告白されたの?」
「う、うん。かわいすぎて、うっかりしちゃったって」
「えぇ、その子大丈夫なの?」
「う、うん。多分。そんなに悪い人ではないとは思う。少し怖いけど……」
そう、昨日あんなことがあった私だけど、私の目にはそこまで上川君がやばすぎる人という風には見えなかったのだ。
「いやいや、未来何言ってるの! 話聞いてるかぎりでは、やばいやつにしか見えないよ?」
で、でしょうね。 出会って数秒で告白してくる人なんて人に話したら、引かれるにきまってるよね。
「ま、まぁまあ、多分彼は今日も部活に来る気がするから、様子見てやばそうだったら何とかするよ」
「本当に大丈夫?」
「うん! 平気だよ。平気!」
本当になんとなくだけど、大丈夫だと心のどっかで思ってる自分がいる。上川君にそんな勇気ありそうもないしね。
「心配だなぁ。そんな未来にいいもの上げる」
青空は、何かをカバンの中からだそうとした。何だろ?
「お菓子でもくれるの?」
「違う! はいこれ。なんか自分の部屋色々あさってたらこれ出てきたから上げる。未来に似合うと思ってさ」
そういって青空が渡してきたのは小学生が、ランドセルにつけるような防犯ブザーだった。
「なにこれ! 絶対に馬鹿にしてるでしょ~!!」
「最初は、馬鹿にするために持ってきたんだけどさ。 さっきのその話を聞いてたら普通にやばそうだからその、上川?君とやらになんか変なことされたらそれを鳴らして、助けを呼びたまえ」
「えぇ、絶対使うことはないともうけどね。というかそうであってほしい」
「まぁ、半分冗談だし。そんなことあったら私はその男を絶対に許さないから!」
「あはは、じゃあ、私はそろそろ部室に行こうかな」
「私もそろそろ、準備しなくちゃ」
☆☆☆
そして、文芸部
さて、今日も上川君は来るだろうか? 今日もまたいきなり告白してくるのかな? 私に、一目ぼれなんて相当目がおかしいような気もするけど……
悶々と、そんなことを考えていると、扉をノックする音が聞こえた。
「しつれいします」
「きょ、今日も来たんだね」
いざ、目の前にすると、なんだか緊張してしまう自分がいる。
「はい。この部活に入部するって決めましたから」
「そ、そう」
やっぱり、入部してくれるんだ! これで文芸部は存続できる!と、内心で喜んでいると上川君から質問がとびだした。
「具体的に、この部活って何するんですか?」
「そ、そりゃあ本読んだり読まなかったり読んだり感想言ったり言わなかったり遊んだり遊んだり遊んだり……」
なんとも、文芸部らしからぬ説明をしてしまった……
まぁ、これが事実なので仕方がないことである。 そう、この部活は去年までは先輩たちが卒業する前で今みたいに1人ではなかった。ただ部員がいたからといって文芸部っぽいことをするわけでもなく、ただただみんなで遊んでいただけだったのだ。
「あ、遊ぶんですか?」
「きょ、去年先輩が3人くらいいて、ちゃんと部活として機能していた時はずっとあそんでたの。でもそんな先輩たちはほとんど2つ上だったから卒業しちゃって」
「で、今部員は?」
「君が、入部届を出してくれれば私と君の2人になるよ」
「はい? え?ん?2人きり、ですか?」
おそらく、上川君にとっては衝撃の事実だったのだろう、上川君は目を丸くしている。
驚いてる、上川君かわいいな…… でもみかたによっちゃぁ、2人きりで喜んでるようにも見えるな……
や、やっぱり襲われるのかな?
「そ、そうなっちゃうね。 より私の身が心配だよ……」
「し、心外な! 僕は先輩のことをかわいいとほめることはあっても襲うことだけは絶対にありません。なんならなんかあったとき守って見せます。 じっちゃんの名に懸けて!!」
いやいや! じっちゃんてどこの名探偵のセリフパクッてるのよ!
「君のじっちゃんは何をしてた人なのかな?」
「僕のじっちゃんは、マジシャンだったらしいです」
意外な答えだった。
「マジックで私をどう守るつもりなの!!」
マジシャンの収入ってどのくらいなんだろ?と余計なことが気になったけど聞かないでおこ。
「さ、さぁ?」
「そんなんじゃ、守れないじゃん。 まぁいいよ。君はおかしい人だけど入部してくれることには感謝してる。この部活、私1人だけでさ。せめて後1人入ってくれないと、廃部にして別の部活に入ってもらうって先生から言われてたから」
私は、上川君にこの部活が置かれていた状況を説明した。
「そうだったんだ…… 僕われながらナイスタイミングじゃないですか!!」
そう! 君はナイスタイミングなんだよ。実はね。
「ま、ままぁ、ナイスタイミングっちゃあナイスタイミングだね。 ちゃんと文芸部として卒業したかったしね」
絶対に、文芸部として……
「僕、先輩にプレゼントがあります!」
「へ? 何?」
ぴ、プレゼントだなんて…… ま、まさか異性からプレゼントをもらうことが私の人生のうちであるなんて……
「これです。是非開けてください」
そう言って、上川君が渡してきたのはとってもかわいく包装されている袋だった。
なにこれ? ものすごくかわいい…… こういうのって恋人に渡すようなのなんじゃないかな……?
な、なんかめちゃくちゃ緊張するんですけど!な、なにがはいってるんだろ?
私は、ゆっくりと丁寧に包装をほどいていった。中には、小さな箱が入っていてその箱を開けると
「え? うわぁ。き、綺麗……」
とても、綺麗なピアスが入っていた。
な、なんだこれ…… せ、センスが良すぎじゃないかな?
「ふっふっふ、僕のリサーチは間違ってなかったみたいだね」
「こんな、何も考えてなさそうな男のプレゼントがとってもきれいなピアスだなんて……」
「喜んでください先輩。そして僕と付き合ってください」
「それは、また別の話だあああ! でもプレゼントは、そのあ、ありがと。で、でも……」
す、すぐこくはくしてくるからお礼もまともに言えないじゃん……
そ、それとあまりのセンスの良さにみとれて忘れてたけど私ピアスの穴開けてない……
「まぁ、喜んでくれたならいいですよ。本気で選んだかいがありました」
ど、どうしよ…… もらったのにつけないのは悲しませちゃうよね? ちゃ、ちゃんと開けるまでまってって伝えなきゃ。
「こ、これ高かったんじゃない? 平気なの?」
ち、違うそうじゃないでしょ私! 値段を聞くより先に、いうことがあるじゃん!
「それは余裕です。 先輩のためだったら僕はいくらでも払いますから」
くっ…… なんていう思いの強さ。
「ぐぬぬ…… そんなに私のことが好きなの?」
「なんか言いましたか?」
「な、なんでもな! こんな、プレゼントもらっといてすごぉーく言いにくいんだけど私耳にピアスの穴開けてないんだよね…… みたいな?」
なんともまぁ、言い出すのが遅くなってしまった……
「ふっふっふっ。それなら安心してください、その場合も考えてこんなものを用意しています。はいどうぞ」
「こ、これ。 ピアスをイヤリングにかえるやつだ。え?用意周到過ぎない? ふ、普通にうれしいい……」
な、なんて用意が良いの…… こ、こんなのうれしいに決まってるじゃん。
「ふっふっふ。これは大成功ですね。 喜んでくれて本当に良かったです!」
青空ちゃん…… 襲われるどころかプレゼント迄もらちゃったよ…… こ、これは私の中で上川君の評価バク上がりだよぉ~




