預言者現る
次の日登校すると、クラスの雰囲気は相変わらずだった。
(仮病の山口が来たぜ)
(あの後、芦屋とまた揉めたみたいだね)
(芦屋の蹴りを避けたらしいな)
クラスメイトは意外と優秀なようで、情報の周りが早い。且つ間違った情報が全くない。
俺はクラスメイトに関心しながら、自分の席に着いた。すると、不穏な心の声が聞こえてくる。
(伊吹が席に着いたから驚かしに行こ。これは昨日早退した罰だ)
本当に愉快な奴だな。脅かす前に挨拶してやろうと思い、俺は後ろを向くと長髪の男が両手を前に出しながら近づいてくるところだった。
「おはよう。竜二」
そう言うと、竜二は驚いた表情を見せる。竜二が驚かしに来ていたことを知っていたので不思議な気持ちだ。
「お、おはよう」
動揺する竜二を見て追い打ちをかけることにする。
「何か話でもあるのか?」
俺が質問すると竜二は「え? なんのことかな?」と言わんばかりの表情を見せながら、心の中では(やばい。バレた時のこと考えてなかった)と思っている。
竜二が可哀想になってきたので助け舟を出すことにする。
「友達なんだから俺の席に来るのも不思議ではなかったな」
俺は笑顔で答えるが。竜二はうっすらと汗をかきながら首を大きく縦に振る。
「それより伊吹は大丈夫なのか?」
心配そうな表情で竜二は聞いてくる。だが、怪我も全くしていないので大丈夫だ。
「殴られそうにはなったけど全部躱したから大丈夫だよ」
「そうじゃない。伊吹は昔からお人好しだから首を突っ込んだことに対して責任を感じるだろ?」
やはり、付き合いが長いだけはある。
竜二とは小学校からいつも一緒だった為、腐れ縁とも言える。だから、お互いの変化には直感で気づいてしまうのだ。
「考えないようにしいてたけど責任は感じてるよ。俺が割って入ったせいで大事になった気もするし……」
みんな気づいているとは思うけど、俺は間違いなく疫病神だよね。
「そうだな……。伊吹が中学生の時も、中学生同士の喧嘩が警察沙汰になったり、いじめられっ子を助けに入った時も、気付いたらいじめっ子側が精神崩壊を起こしていたりと平和的解決が出来たことがないよな」
竜二は呆れた表情で話す。
「そんなことあったっけ」と、とぼけてはみたが、誤魔化すことは出来ないよね。さて、今回はどんな大事に発展するのだろうか?
「とぼけても無駄だよ。さらに酷いのが、伊吹が首を突っ込んだ出来事は展開が早いんだよね。これまでの経験から行くとそろそろ何か起こる筈だ」
冗談でも物騒なことを言うのは止めて欲しいものだ。
「そんなタイミング良く起こるわけが無いだろ? これが当たったら竜二は預言者だよ」
俺がこういうと二人の間には笑いが巻き起こった。その時、聞きたくない音が響き渡ることになる。
「緊急放送。緊急放送。マイクテス。マイクテス」
なんと、学校中のスピーカーから緊急放送が流れ始めたのだ。
「えー。俺の声が聞こえているか?」
スピーカーから聞こえる声は、どこか聞き覚えがある。最近聞いたような、聞いてないような曖昧な記憶だ。
「俺は3年2組の芦屋だ」
芦屋の声だったのか、最近どころか昨日、うんざりする程、声を聞いた。それでも、誰か分からないなんて人間の記憶は当てにならないな。
それより、芦屋が何故、放送を行っているのだろうか? 放送担当ではなかったはずなのだが……。
「俺は昨日、彼女である山岸さんからストーカー被害にあっていると相談を受けた。そのストーカーと言うのが3年2組の山口 伊吹だ」
芦屋は超えては行けない一線を超えてしまったようだ。こんなもの、風評被害ってものでは無い。もしかしたら俺の人生詰むかもしれない。
更には振られた相手を彼女にしたて上げるという2重の嫌がらせから性格の悪さが滲み出ている。
竜二は大きく溜息をつき、言わんこっちっちゃないという顔をしている。
だが、竜二の反応とは裏腹にクラスの雰囲気は悪いと言える。
(山口のこと、やばい奴だとは思っていたけど、ストーカーしてたとはな)
(あいつストーカーなの? 気持ち悪)
(男だから仕方ないとは思うけど、さすがにストーカーはないよな)
当然そうなるよなと思うが、それ以上の動きを見せることはしない。ここで俺が「ストーカーなんてしていない」と言っても、クラスの大半は信じてくれないだろう。更には、昨日のように早退するとストーカー行為を肯定してしまうことになる。。
こればっかりは、打つ手は無さそうだ。
ただ俺が言えることは、竜二は絶対に預言者だ!




