プロローグ
春の心地の良い風が桜の花びらを連れながら吹いている。その風を、住宅街にポツンと配置された公園の、ベンチで浴びる。そのベンチの右手には、錆びれて傾いてしまったブランコが静かに揺れていた。地面には雑草が生えており、手入れをされていないことが分かる。
そんな公園の正面には、廃れてしまった公園には似合わないような桜の木が、元気よく立っていた。
高校生になって突如現れた人の心を読む能力に疲れ切っていた俺は、この桜の木に元気をもらっている。
「なんでこんな能力があるんだ!」
俺はベンチに座りながら、心の声が聞こえないことを確認し、声を張って言う。すると、心が少し楽になった。
俺はベンチから腰を上げ正面を向くと、木の陰に女性が立っていることに気付く。女性は、ロングの髪を風になびかせながら、綺麗な瞳でこちらを見ていた。
俺は、感動した。初めて心を読むことのできない人物に出会ったからだ。だが、喜びを体全体で表すのもはしたないので、何もなかったかのようにその場を去った。




