第4話 待ち伏せされたので鉄パイプで斬り伏せた
ミミックで転移してから3日が経った。今日は偶然、庄吾たちが全員学校をサボったので1人での下校である。
下校といっても、帰る場所など無いのでイージーマリオネットを使って騙し騙し色んな家に下宿させてもらっているのだが。
魔法の無い世界に転移したお陰で、想定外にズルが捗るものである。
◇ ◇ ◇
「今日はどこ泊まろっかな〜」
呑気に歩いていると、突如数人の男に囲まれた。
制服から察するに......こないだの、玄武の奴らか。『待ち伏せとは懲りない奴だな』と思ったが、よく考えたら俺は直接手を下していないのだから力量差が分からないのも無理はないか。
・・・あれ?でもだったら何で待ち伏せされるんだ?
玄武の奴らのうち1人が声をあげた。
「てめえだろ、あの日朱雀の女に変な合図送ってたの」
・・・ああ、俺が黒幕だってことには気づいてたのね。
大方、俺が花音ちゃんを利用してコイツらをボコる計略を図ったとでも思っているのだろう。
いいだろう、半分正解だがもう半分が不正解なのが致命傷を呼ぶってことを思い知らせてやる。
「あの合図、見えてたのか。」
「あの女に吹っ飛ばされた直後、視界の端にてめえが映った......2度と舐めた真似できねーように徹底的に痛めつけてやる!」
そう言って、玄武の奴らは一斉に殴りかかってきた。・・・もはやお約束とも思える、なぜ武器として採用しているのかが謎な金属製パイプを携えて。
対物理結界で、金属製パイプによる打撃を防ぐ。結界を全力で殴った衝撃に耐えられなかったのだろう、先陣を切った奴がパイプを落とした。
すぐさまそれを拾い、金属製パイプに斬撃の物体強化魔法をかける。
強化したパイプを振り下ろすと、近くまで来ていた玄武の生徒3人が深い切り傷を負った。
「てめえ......どこにナイフなんか隠し持ってやがった......」
どうやら盛大な勘違いを受けてしまったようだ。
仕方ない、今の斬撃が隠しナイフなどという陳腐なものでない事を証明してやろう。
「これでも隠しナイフを疑うか?」
そう言って手を後ろで組む。手を使わなければ、ナイフなどという邪推は立てようもあるまい。
「──アブノーマルパスカル」
初級風魔法を詠唱。対象は、玄武の連中のうち1番後ろにいた奴だ。
そいつは瞬く間に切り裂かれ、赤インク入りの水風船が割れたかのような血だまりを形成した。
──カラン、カラン。
誰もが金属製パイプを手放した。
そして、皆がワナワナと手足を震わせながら膝をついた。
「......こいつは人間じゃねえ......災害だ......」
・・・まあ、このくらいが待ち伏せの報いとして妥当なラインだろうな。
流石に風魔法が直撃した奴はこのままだと出血多量で死んでしまうだろうから、多少の手当てはしておいてやるが。
風魔法が直撃した奴を治療している間も奴らは「こないだの女もたいがいヤバかったってのに、何でそれ以上の奴にも会うんだ......!」とか言っている。
普段から何気なく使ってきていた魔法。それが実はとんでもないものだったって事を、ミミックが教えてくれているのかもしれないな。