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閑話 剣二の日記②

・2024/05/15

 一部修正


【20XX年.〇月×日】

 この前クッキーを渡した女の子がストーカーになった。

 表立って何かしてくる訳じゃないけど、ここ数日ずっと跡をつけてくる。

 本人は上手く隠れているつもりみたいだがバレバレだ。近くにいる子供が「ママ~あのお姉ちゃん何してるのー?」なんて指差して言ってた。母親は母親で「しっ! 見ちゃいけません!」って……ベタな展開過ぎてあの女の子がオレのこと嵌めようとしてんじゃないかと疑ったぞ。

 挙句の果てに、どっかで見たことあるオッサンが「そんな所で何してんだ? 暇なら茶にでも飲み行かないか?」と誘ったら「話しかけんじゃないわよチンピラ!」って言って腹パンしたんだ。

 なんて暴力的な子だろうと思ったな。涙目で倒れ込んだオッサンがかわいそうだ。

 隣の部屋だとはいえ、君氏危うきになんちゃらだ。極力こちらから関わらないようにしておこう。今この瞬間も、隣の部屋にいて壁に耳をつけてるんじゃないかと想像したら怖くなってきた。今日はもう寝る。






【20XX年.〇月×日】

 どうやらオレには隣人運が無いらしい……

 冒険者としての仕事帰り。今日は遅かったんで、たまにはいいかと酒場に寄って1番アルコール度数の低い初心者向けの酒を飲んでみた。

 初めての酒を飲んだ感想としては「変な味だな」って感じだった。この世界の酒がマズイのか、それとも単にまだオレには早かったのか。少なくとも定期的に飲むようなもんじゃなかった。しばらくしても顔がほてるだけで悪酔いする気配がなかったのだけは収穫だ。酒で人生を台無しにする芸能人や政治家のニュースは向こうでたくさん見たからな。

 そして……奴らが来た。

 そう、酒に酔ったチンピラだ。それも2人。向こうはオレのことを知っているみたいだったが、オレは記憶が曖昧だった。この日記を書いている途中で「あれ? 3人組だったような……?」って思い出してきたけど、どうでもい い か 。、、


 なぜか右手が自然に拳の形を作って無性に何かを殴りたい衝動に襲われていたけど、やっと収まった。

 まさか、封印された中学の黒歴史が蘇ったのか!? やめろ。考えるなオレ。オマエは「左腕が疼くぜ」なんて言うイタイ奴じゃないはずだ。あれは過去のことなんだ。若気の至りなんだ。思い出せ! 家族のあの冷たい視線を! クラスメイトの引いた顔を! ――――よし。続きを書こう。


 とにかく、2人の男に絡まれたんだ。

 ちょっとボーっとしていたから何言っていたかは覚えていないけど、1つだけハッキリと、それはもう一瞬で熱が冷める出来事を覚えている。

 奴が来たんだ。隣人の筋肉オネエが!

 「あら~ん? こんな所で会うなんて奇遇ねえ? 一体どうしたの~ん?」って近づいてきた。もうこの時点で泣きそうだった。というか視界の端で涙目になっているオッサンや、すでに吐いている青年がいたんだよ。

 アンタ一体どこの災厄だ!? 入って数秒で店の空気が死んだんだぞ!? というか、マスターが尻押さえて逃げたんですけど!!

 そっからはもう……蹂躙だったな。いや、自分で書いていてアレだけどさ? 思い出しただけでチンピラ2人に泣けてくるんだわ。筋肉の鎧の前でなす術もなく捕まるチンピラたち。近づく顔と顔。目を背けるオレと客たち。響き渡る“ぶちゅ~~~!(×2)”という音。上機嫌で帰っていく筋肉オネエ。暴行された女性みたいに床に倒れながらシクシク泣くチンピラ2人。

 うん。悲しい事件だった。






【20XX年.〇月×日】

 隣国で戦争が起こったらしい。

 睨み合いを続けていた国同士が争い始めたって。

 平和ボケした日本人らしい考えかもしれないけど、やっぱり戦争は嫌いだ。本当に国同士で殺し合いをしたいと思っている人間がどれだけいるんだか。心から戦争したいと考えているのなんて、特別な理由でもない限りはいつも上で命令するだけの人間ってイメージがある。

 このファンタジーな世界ではどうなんだろ?






【20XX年.〇月×日】

 ストーカー女が絡んできた。

 前にお近づきの印としてあげたクッキーを売っている店がどこか教えろとのことだ。探しても探しても無くて、直接オレに聞くことにしたとのこと。

 最近のストーキング行為の謎が解けた。ただの菓子食いたい女子じゃんか。しかもオレがストーキングのこと指摘したら顔真っ赤にして狼狽した。どうやら本気でばれてないと思ってたらしい……。あんな子供でも分かりそうなレベルで下手くそだったというのに。

 とりあえず、言い訳にもなっていないド下手な言い訳(ストーキングじゃなくてウォーキングをしてただけと供述)をしている女の子を落ち着かせ、あのクッキーはオレの手作りで売りものじゃないことを説明した。

 「バカーーー!!」と涙目で叫びながら走り去っていった。

 なんでやねん。






【20XX年.〇月×日】

 商人の護衛依頼を受けることにした。

 どうやら数年前に戦争で滅んだ国の人たちに食料を売りに行くそうだ。

 王族や貴族が処刑されただけでそこに住んでいる人たちには影響が少なく、物々交換でも儲けることはできるらしい。まあぶっちゃけ情報集めで納得したんだけど、アホな王族が重税やらなんやらで好き放題していたみたいだから、むしろ今の方が生活は楽になっているとか。

 ……皮肉だな~。






【20XX年.〇月×日】

 護衛する冒険者の中にストーカー女がいた。

 集合場所でビックリしたよ。普段何している子なんだろ?って思っていたけど、まさか冒険者だったとは! ――と思いきや、数日前になったばかりの新人だった。装備や服装がやたら豪華だけど、それで新人って……。護衛対象の商人も口元ひきつってたぞ。

 他の護衛依頼を受けた冒険者の1人(どっかで見たことあるオッサン。オレやストーカー女におびえていた。なぜだ?)に聞いてみたところ、コネか何かで依頼に割り込んだみたいだ。魔法職でスキルも多く持っているから大丈夫だろうとギルマスが許可したとか。

 すごく嫌な予感しかしない。なぜかオレにドヤ顔向けてくるし。夕食の干し肉を食べている時にやたら保存食の袋を見ていた。まるで獲物を狙うような目で、だ。

 念のためにちょっと細工しておこう。うん。何もなければいいけどな。






【20XX年.〇月×日】

 何もないことはなかった。

 あの女、もしかしたらクッキーあるかもしれないって人様の荷物漁りやがったんだ。どんだけクッキー好きなんだよ? 中毒か。

 まあ仕掛けておいた細工――不用意に開けると爆竹モドキが騒音撒き散らす仕組みだったからな。夜中にオレも商人も護衛の冒険者も叩き起こされることになった。心臓に悪いし、今度は別の仕掛けにしよう。

 で、ストーカー女改めて、盗人女は反省の色がほとんどなかった。いや会話の節々から根は悪くなさそうなんだけど、とにかく常識が足りない。この時点で女の正体に大体の目星はついたが、それは後でいい。気が強い性格のせいか悪いとは思っていても素直に反省しないんだわこれが。だから――

 お仕置きタイムだ。

 「いい年して他人のもの盗み食いするとは何事だー!!」って怒った。ああいう気が強い女は少し痛みのある罰がいいだろうと刑も決定。

 おしりペンペンだ。

 やけに金の掛かってそうな寝間着のスカートたくし上げて、百叩きを執行した。うん。涙目だったな。50回超えた辺りでうるさかった非難の声もあがらなくなった。周りの人たちが恐ろしいものを見たような目でこっちを見ていた。

 お仕置きが効いたのか盗人女――“アリス”は1日中おとなしかった。というか、お尻が痛くて護衛の仕事すらできないとか。

 ふと、この日記を書いていて冷静に考える。

 同い年の女、つまりは高校生ぐらいの少女のお尻をパンツごしに叩くって普通にアウトだよな? ……異世界に警察が無くてよかった。






【20XX年.〇月×日】

 未だにお尻押さえてグズグズしているアリスを見かねて、例のクッキーをやったら懐かれた?

 何か小動物みたくなっている。これがアメと鞭か!

 冗談はさておいて、もう反省しているみたいだから許すことにする。つか、確認したら1こ年下だった。事案かなやっぱ?

 まあ、仲良くなれるならそれでいい。せっかくの隣人だし? ……筋肉オネエは――保留にしよう。






【20XX年.〇月×日】

 途中、魔物の襲撃があったが撃退できた。

 アリスは自慢するだけあって魔法の腕は中々のようだ。同時に4つも別々の魔法を展開してた。『マルチプル』というユニークスキルだそで、制御が難しくまだまだ未熟だと本人は嘆いている。使いこなせば10種類別々の魔法を同時発動できるようになる可能性を秘めているとか。

 そんなこんなで目的地に到着した。

 遠くに随分でかい山が見える。まるで富士山みたいだ。てっぺんが霧で見えなかったけど。

 そういや到着してすぐに布教活動している人たちにあった。神様を信仰しているみたいだ。オレは女神様でも信仰するべきか?






~あとがき劇場~


雪菜(´・ω・)「筋肉オネエってそんなに恐いの?」


剣二( ;∀;)「マツコ〇ラックス3人分の威圧感だったよ……」


雪菜(´・ω・)「あらやだ恐い」


雪菜(´・ω・)「てかさー、高校生ぐらいの少女がクッキー中毒になるってどんだけ美味いのさオマエのクッキーって? 1つおくれ」


剣二(´・ω・)「はい。めしあがれ」


雪菜(´・ω・)「どらどら。この【黄金料理人】のスキルを持つ私が評価してやろーじゃねーかー。では一口パクリ


雪菜(;゜Д゜)!「うんんんめぇええええええええええええええええええええええええええええええ!?」


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