第8話 図書館
・2023/04/01
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いろいろと謎が残ったけど、とりあえず話は終わった。
やばい、もう精神的に疲れてきた。
しゃーないとは言え、私ったらコミュ力は最低値だもん。圧倒的に知らない人と触れ合う経験無いからマジ疲れる。
ギルド職員からの質疑応答が終わり、疲れを残しながら戻れば笑顔のリリィが出迎えてくれた。
「お父さん、ユキナお姉さん、終わったの?」
「ああ。簡単な説明だけだからね」
「何も問題ないよ。ちょい疲れただけ」
「そっか~。良かった!」
再びリリィの必殺技、エンジェルスマイル!
なんて子なんだ……! 今の必殺技で、直接見てしまった冒険者が鼻を抑えてるぞ! すごいぜリリィ! そしてロリコンかオマエら!?
YESロリータNOタッチだからな! 紳士でいろよ!
そして、そんな紳士諸君よ。早よ気付け。
数少ない女性の冒険者やギルド職員の目が汚物を見るみたいだぞ?
……あ。女性の1人が放った裏拳が、隣にいた男性の顔面にモロ直撃!
物理的な必殺技で鼻血出てる。痛たそう。
「あ、ユキナさん丁度よかった。今、査定が終わりましたよ」
エミリーさんが私を呼ぶ。さっきまで絶対零度の目をしていたのに、なんという早業! もうすでに受付スマイルになっているぞ。
これがギルドの受付だけが持てる特殊スキルか!
「それで? いくらくらいになったん?」
「はい。こちらが代金となります」
渡してきたトレーの上には金貨や銀貨らしきものがあるけど……
やっべ、私お金の価値全然知らないや。
たぶん困っているのが顔に出ていたんだろうな。
さっき絡んだ(?)戦槌のハゲが助け船を出してくれた。
「エミリーちゃん。どうもこの嬢ちゃん、この金が妥当な査定額か分かんねーって顔してんから、説明してやってくれ」
すんません。お金の価値自体知らないんす。
「確かにそうですね。んんっ。今回ユキナさんがお持ちになられたブラッディベアーですが、強さの基準だけならCランクの魔物なんですよ。しかし、ブラッディベアーは魔物の中でも非常に好戦的で残虐な性格のため、特に危険視されているんです。そのため危険度という点でBランクの魔物扱いになっています」
あ~。そういやヘルプに聞いた時も、そんな説明だったな。
「加えて、一撃で倒され他に傷が無いという点も素晴らしいです。普通はもっと傷だらけのはずですから。今回は持ち込みなのでこの値段でしたが、依頼なら達成料と合わせて倍の金額でもおかしくありません。頭の部分がある程度キレイなら、部屋の飾りとして貴族の方に高く売れるのですが真っ二つになっているので」
頭を貴族が欲しがる? 部屋の飾り?
あ、分かった。鹿の首が壁から突き出ているアレの魔物版だ!
ところで、私まだお金の価値に関する知識がゼロなんすけど。
『〈お金の価値〉……小銅貨=10円、大銅貨=100円、小銀貨=1000円、大銀貨=5000円、小金貨=1万円、大金貨=10万円、王貨=100万円(日本円換算)』
王貨ってのは初めて聞くが……ふ~ん、こんなんなんだ。
てことはだ。もらった金額を日本円に当てはめると……おおよそ34万円ってところか。……え? マジで!?
待て待て待て。一旦落ち着こう私。
物価とか日本と違う可能性もあるし、確認しなきゃ。
「あの、どうしましたかユキナさん?」
カイルさんが心配そうに話してきた。ヤベッ、頭の中でヘルプにお金のこと聞いていたから、急にボ~っとしだしたように見えたのか。
あ、そうだ。カイルさんの収入聞いてみよ。
「あの、カイルさん。つかのことお聞きしますが、一月当たりのカイルさんのお給料って、いかほどになりますか?」
自分でも引くぐらい、必要以上に丁寧な口調になっちゃった。
でもやっぱ、人の給料聞くのは気が引けるんだよねー。
「ん? そうですね……。ギルドは公的な機関だからその辺も高く設定されていて、オレの場合、1ヶ月で大金貨2枚と小金貨3~5枚ってところかな? 実際渡されるときは使いやすいよう銅貨や銀貨も含みます。それに忙しい時や緊急時での対応などによって、ボーナスが出たりもします」
あー、ギルド職員とかだと公務員みたいな扱いになるのか。細かい違いはあるだろうけど、じゃあ一般人の給料は大金貨2枚=20万円ぐらい?
リリィの身ぎれいさとか考えるに生活に余裕はあるだろうし、物価も日本とそう変わらないって認識でいいみたいだな。
……やっぱ、とんでもねえ金額じゃねえか!
一般人の1.5ヶ月分のお金稼いじゃったよ!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「それでは、こちらが今までユキナさんに使用したお金の残りとなります。王都にいる間は是非ウチに泊ってくださいね。下手な宿屋よりもずっと低価格にしますよ? それに、娘もユキナさんのことを大分気に入っているようですから」
今はお昼過ぎ。カイルさんの家にいる雪菜でーす。
あのあと、ギルドを出た私たちはしばらく歩いてカイルさん宅へ。
うん。普通の一軒家だね。少し小さめだけど2階もある。
リリィが手を引いて案内してくれたので、この家の簡単な説明しまーす。
風呂は無いけどシャワーはあるし、トイレも洋式。台所とリビングが繋がっている。物置部屋もある。2階は部屋が4つあって、夫婦部屋とリリィの部屋の2つと、カイルさんの仕事部屋1つ。換気用に窓もいくつかある。
……アレ? ここ本当に異世界? 村にいた時からちょい恐かったけど、実際にカイルさん宅に入ると現実逃避したくなる。
公務員枠とはいえ、一般人のカイルさん一家の家がこんなんだぞ? 商人とかの金持ちや貴族が住んでいる屋敷とか怖すぎるんですが?
王族? SF要素出ても驚かねーよもう。この国発展しすぎ。
知識チートが9割以上使い物にならないだろうことにガックリしつつ、昼食をいただいた。メニューはシンプルなパスタ。香草の風味が私好みだった。
パスタマシンもあるんだと。マジこの国発展し(以下略)。
昼食後は今後の私についての話し合い。
と言っても、特に変更点は無い。カイルさん一家に格安の家賃だけ払って住み込みで冒険者としての経験を積む。以上。
いつになるかは未定だけど、私の目的が旅行である以上ずっと王都にいるわけにもいかない。美味しいものや珍しいものを粗方見終わったら、別の国に行くつもり。旅行で1番重要な金と身の安全は何とかなりそうだから気が楽だわ。
「それでユキナさん。今日はどうされますか?」
「実は、話に聞いた図書館で調べ物がしたいんですよね」
そう。王都には図書館があるって聞いてたのだ!
私がしたい調べ物はスキルについて。私の持っているチートは、どれだけSPがあるのか、どれだけスキルを知っているのかで価値が違ってくる。
この世界に来た時に手に入れた初期スキルを除けば、手に入れたのは【炎系魔法LV.6】と【アイテムボックス(大)】の2つだけ。
そろそろ基本的なスキルもいくつか取得したい。そこで図書館だ。
探せばスキルに関して書かれた本があるだろうし、調べたスキルの中から必要な物をピックアップしていこうと思う。
そんなこんなで、リリィが図書館まで案内してくれることになった。
自分で歩くのもいいけど、ねえ? やっぱ知らない土地……どころか世界で1人で出歩くのは地味に勇気がいるんよ。
チキンとか思った奴、挙手。……脳内の小さな私が手上げていた。
家を出てからはリリィにどの屋台が美味いか、どのお店に掘り出し物がありそうなのかなんかを話しながら図書館に向かう。
そして、お城のある王都の中央に近い商店とか富豪が澄んでいるエリアまで歩き、ついに図書館へ辿り着いたわけだけど……
「………………ねえ、リリィ? 来る途中から“まさか”と思いながら来たんだけどさ、このアホみたいなデカさの建物が図書館?」
「うん! そうだよっ!」
……私の知っている市の図書館の軽く見て5倍の大きさのこれが?
左右にいる騎士っぽいのに扉を護られたこれが?
…………うん。考えるのやめよ。それがいい。
いやー、いい国だなー(棒)。
本日何度目になるか分からん現実逃避をしつつ、図書館へ入った。






