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閑話 その頃の神界②

・2024/01/28

 一部修正


 その世界は白かった。

 単純な白色というわけではなく、人の目で見える形で光が形を持ったような白の空間がどこまでも広がっているのである。

 人によっては「何も無くてつまらない」「広すぎて落ち着かない」と言う者もいるだろう。逆に「神聖だ」「いつまでも居たい」という意見も。


 しかし、永遠とも思えるような白の空間に、本当に何も無いわけではない。

 そこ・・で、1柱と1匹(?)が爆笑していた。



「アッハッハッハッハッハ!! じゃあ何だい? 様子を確認しようとしたら、お化け扱いされて逃げられたっていうのKA!?」


「……うるさい黙れ」


 まるで、その場所だけを時代から切り取ったかのよう。

 古時計や変わった小物をはじめ、アンティークな物で溢れかえった空間だった。ただ古いのではなく、オシャレを意識して作られた空間だ。


 ……なぜかタンスだけ離れた位置にあるが。



 そこにいたのは2柱の神。


 1柱はアロハシャツを着た神だった。

 涙目になりながら、アンティーク調のテーブルをバンバンと叩きまくっている。アロハシャツとの相性が最悪だ。

 ここにもし写真家がいたのであれば、風景に合わないからと、真っ先にどかされること間違いなしだろう。

 ついでに、その肩にはヤドカリが乗っている。

 何がおもしろいのか、ハサミを器用に使って手を叩くかのような動作で、いかに自分が笑っているのかをアピールしていた。


 ……ヤドカリのくせに。


 そして、もう1柱はメガネをかけた神。

 こちらはイスに座りながら非常に不愉快そうにしている。

 その理由の半分は目の前で爆笑しているアロハシャツの神(と、ついでにヤドカリ)が原因ではあるのだが――残り半分の不愉快な原因と言えば、


「さすがにお化け扱いされるなど思ってもみないさ」


「ギャハハハハハハ!」


 地味にお化けごときと同一視されたことだ。

 それも、自分が異世界に転移させた少女に。


(ちょうどいい機会だと接触したのだが)


 雪菜がいる世界で“天山”と呼ばれる山。

 昔から様々なジンクスがあるその山は、実を言えば本当に神々との交信を可能にしていたりする異世界版のパワースポットであった。


 地脈や世界を流れる魔力の関係から、時折出現するパワースポットは各地に存在している。

 例えば、神々の世界と交信しやすくする山。

 例えば、聖獣を自然に誕生させる森。

 例えば、魔力を消失させる断崖絶壁の谷。

 例えば、異界に繋がる湖。


 人々に認識されている場所もあれば、未だに発見されていない場所もある。

 例えに上げたのもほんの一部だ。


 今回、雪菜との接触に天山を利用できたのは半ば偶然である。


 自分が転生させた者を定期的に確認しているアロハシャツの神と違い、メガネの神は雪菜が女性ということもあって、滅多に確認はしない。

 以前したのは数ヶ月も前に1度だけで、その時はリリィやクラリスといった仲のいい少女たちと笑っていたことから、余計にこちらから過度に干渉する必要はないと安心もしていた。



 事情が変わったのは1週間以上前のことだ。



「でさ? 向こうの神の奴ら、オコだったNO?」


「不満こそ言ってきたが、私に正面から文句を言う度胸はなかったよ。正確には、力の差を理解しているからできなかった、だがね」


「アイツらなんて、ボクらからすれば吹けば飛んじゃうくらいの力しかないからNE! 賢い判断ってやつSA!」


「まあ、こちらが悪いことをしたのも事実だから、何か困った時があれば最低限の便宜ぐらいは図ってやることにはした」


 雪菜は少し前にステラを助けた。

 その時に偶然にも得た称号は、取得した瞬間にその世界の神々に通達されるものでもあったのだ。


 ならば気になるのは人も神も同じ。

 神々の権限を使い、簡単にでも調べれば今その人物のいる場所は神々を信仰している聖国であり、本人は聖女だというではないか。

 ならば天山に登る確率は高い。


 本来なら神自らが接触を図ることなど神託を含めて滅多にないが、伝説にもなっている初代聖女以来の称号だったのだ。

 興味を持った神は多く、天山で今か今かと待つことにした。


 そのことを知ったメガネの神は、ここで一世界の神々と自分のような世界全てに干渉できる神の格の違いを雪菜に認識してもらうため、初めに自分が挨拶をすると興味を持った神々に宣言したのだ。


 ……まさかその結果が、全速力で逃げられるとは思ってもみなかったのだが。長い神生でもいつぶりか驚きと共に悲しい気持ちになってしまった。初めて雪菜と接触した時からどうにも神として敬う気持ちが微塵も感じられなかったので、ここらで威厳を示すという計画も台無しになった。


 さらに後ろで控えていた雪菜のいる世界の神々からバッシングの嵐。

 無理矢理割り込んだのはコチラだから言い返すこともできない。

 神としての威厳も何も無かった。


 “正面から文句を言う度胸は無かった”? とんでもない。

 ドストレートでここぞとばかりに文句を言われていた。

 ただ、最低限のプライドから目の前にいるアロハシャツの神には本当のことは言えなかったのだ。

 神の威厳とは一体?


「ところで、どんな神が集まったのSA?」


「ん? 確か……光の神レクセン、風の神ビューマ、火の神イグナスなど1度会ってみたいと言う神以外にも、秩序の神ティファエルが忠告したいことがあると言っていたし、双子の神である幸運の神レフティスと不運の神ラフティスが何やら神妙な顔で『謝罪すべきか?』『いっそ加護でもあげた方が……』『いや、それは逆効果になるんじゃ?』『良かれと思ったことが逆効果になりそうで怖い』などと話し合っていたな」


 ちなみに、双子の神が雪菜の何について相談し合っていたかは……お察しである。もし本当に会えたとして、双子の神が司っているものを聞いた雪菜がどんな気持ちになるのかも……お察しだ。


「ふ~ん。異世界に行って1年もしないのに人気者みたいだNE」


「ふん。“当たり”らしいからな」


「そういやそうだったYO!」


「……私たち神に最も必要なのは、永遠の生の中でいかに退屈にならないかだ。だからこそ、いつからか転生者や転移者を選び、力を与え、その者がどのように生きていくかを観察するのが退屈しのぎになっていった」


 雪菜には最近神々の間で異世界転移・転生が流行っていると言っていたが、永遠ともいえる時を生きる神々にとっての“最近”である。

 一体いつから、そのようなことが起こっていったかは誰にも分からない。人は当然として、もしかしたら神自身にも……


「そういやー秩序の神ティファエル、だっKE? 何を忠告しようとしたんだい? キミはもう内容を把握しているんだRO?」


「……あの少女が見えなくなる寸前に言ったのだが、どうもここ十数年、聖国なる国でおかしな力の流れがあるらしい。恐らく、何者かが人為的に、悪意を持って地脈に干渉しているのだろうと。神託という形で忠告しようにも、何故か上手くいかないそうだ」


「変な話だNE」


「さて、せっかくだ。気分転換にどこか風景が綺麗な世界でも見るとするか。少しは心も落ち着くだろう」


 そう言ってメガネの神はイスから立ち上がり、少し離れた所にあるタンスに気を付けながら歩き出して、



――ビターーーンッッッ!!



「……は? どしたの? 何でそんな所で床に伏せているのSA? おーい返事できるー?」


 メガネの神は答えない。

 余りにも馬鹿馬鹿しい理由で今の状態があるのだから。

 もう涙が滲み出そうになるほど惨めだった。


 しかし、なぜメガネの神がそのようになっているか把握した存在がいる――ヤドカリだ。

 その瞬間をヤドカリだけはしっかりと見ていたのだ。

 メガネの神が何も無い所で脚同士を引っ掛け、無様に転んでしまうその瞬間を!!


( *´艸`)誰のせいなんでしょうねー?



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