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第55話 ステラ、フットワーク軽すぎ問題

・2024/01/06

 一部修正


 いつからか私は……1人が寂しくなっていた。

 同性の子と楽しく会話したり、年上の人たちに混じってバカやるのがいつの間にか日常みたいで、好きになっていた。


 日本にいた時は1人が当たり前だった。

 学校――同い年がいっぱいいるけど……1人。

 家――家族はいるけど……1人。


 唯一の例外が古本屋の爺さん。

 あそこにいる時だけ2人だった。

 だけど、それだっていつもじゃない。


 冒険者として依頼を受けている時はほとんど感じなかった。

 仕事である以上、集中して自分がすべきことをしていたから。


 それでも、いつからか長期間1人で行動する依頼が嫌になってきた。【土系魔法】で作った簡易ハウスの中で寝るまでの間、何度も寂しさ感じたものだ。


 この世界に来る時思った“旅行がしたい”という気持ちは本物だった。

 広い世界を自由に歩きたいと小さい頃から思っていたから。


 半年という王国での暮らしの中でお金も、自信も、力も、技術も、納得できるだけ持つことができた。あとは他の国に行くだけだと。


 だけど、心のどこかではリリィやクラリスと離れたくなかったんだ。

 自分でも気付かないくらい、側にいたい気持ちがあったから。


(私って、案外寂しがり屋だったのかもしれないな……)


 考えれば当たり前の話だ。

 日本にいた14年間の環境が普通か?と問われれば、答えは“否”しかない。


 不幸自慢じゃないし、私よりも家庭環境最悪な子供なんて探せばドン引きするだけいるけど、小さい子の成長に必要な“親から子への愛”や“同年代の友達”がなかったんだ。精神面で普通に成長したとは言い難い。


 古本屋の爺さんと出会い、多少マシになって“永瀬雪菜”という1人の中学生にとっての個性やアイデンティティなんかは形成された。

 だけど、もっと根本の部分。生まれた頃から周りがどんな環境であろうと変わることがない“芯”の部分は見えているモノと、見えていないモノに分かれていた。見えている部分に関して言えば……ちょい残念な性格のところかな?

 とにかく、その今まで見えなかったモノが“実は寂しがり”ってことなんだとようやく自覚したわけ。


「あははは………………こまったなー」


 楽しく旅行するのが難しく――



「何が困ったのですか?」



「――わっひゃいぃっ!?」


 だだだ……誰だ!?

 心臓をバクバクさせながら振り向けば、そこにいたのは――


「え? ステラ?」


「はい! お久しぶりですユキナ様」


 数日ぶりに会うステラだった。


「え~と、どうしてここに? それも1人で」


 見習い聖女っしょアンタ? 付き人の女性はどうしたよ?


「どうして、と言われましても。手が空いている年長が私しかいなかったといいますか、たまたまユキナ様を見かけたので挨拶をしたといいますか」


「説明がアバウトだろ。もう少し詳しく」


 ステラから詳しいことを聞くと、今日は孤児院への訪問だったらしい。

 付き人の人と一緒に子供たちと遊んだり、絵本を読んであげたり。


 そうこうしていたら、子供の1人がまだ帰っていないことが判明。

 新しく入った男の子なんだけど、まだ他の子と馴染めずよく外をフラフラしていることが多いとか。 


 さすがに今日はフラつく時間が長いし、なによりステラたちが来ているんだから挨拶ぐらいさせないと~という話になり探すことに。


 しかし、ここで悲劇。


 付き人の女性たちが子供の相手をしている最中、悪意の無いスキンシップの犠牲となり、庭に撒く水をビッシャリ被って水浸しに。


 これが早い時間帯であれば服を着替えるまで待ったんだろうけど、今日は日が沈むのが早く、もう夕方に近い時間帯なので少しでも早く見つけないと万一の場合というのもあるから、他の人に迷惑が掛からない内に探し出すのが望ましい。


 孤児院のシスターも忙しくしているので、一言断りを入れてからステラ1人孤児院を出て探しに行った。で、数分後に私を見つけたと。


「いやいやいやいや。“一言断りを入れて”ってアンタ、今の身振り手振りの説明から察するに、ホントに一言『では、私が探しに行きます!』って相手の反応待たずに出て行ったでしょ? 付き人2人が『は?』ってなっているの無視して来たでしょ? 相手の返事聞かずにほぼ無計画で探そうとしたでしょ?」


 一言断りを~の説明の最中、いい笑顔で敬礼しながら走り去っていくステラのイメージが湧く。

 実を言うと、一緒にいた数日間でも時々「実はこの子、付き人がいらないぐらい活動的なんじゃ?」って思う場面があったわけでして。


 よくよく考えたら、見習い聖女の存在が重要だから聖国の上層部が付き人を付けるようにしているだけで、根っからのお嬢様でもなければ世間知らずでもないんだよな。むしろ他国に赴く機会が多い分、同年代でも視野が広いだろうし。


 丁寧な振る舞いや言葉遣いも見習い聖女として必要ということで学んだだけで、元からフットワークが軽い性格だったか……


「いやですユキナ様。そのようなことありませんって」


「だったら何で目が泳いでいるんだよ? おい。首を90度曲げるな。明後日の方向を向くな。ヘタクソな口笛吹いて誤魔化そうとするな」


 口笛慣れてないだろ。さっきから「ピュ~♪」じゃなくて「フーフー」としか聞こえてこんぞ?

 ……まあ、唇を一生懸命突き出している姿はカワイイけども。



 ――え? あれってステラ様じゃ――ブフ!?


 ――アベシっ!?



 ……言わんこっちゃねぇ。

 通行人の男性がよそ見してお店の看板にぶつかったり、若いカップルの少年がステラに見惚れて恋人の女の子にビンタ喰らった。


「はあ……」


 思わず、といった感じでため息を吐く。

 これは早く探し人の子供を見つけた方がよさそうだな。


「ステラ、その探している子供の名前は?」


「え? えっと、確か“レオンくん”という名前だったかと」


「OK分かった。ちょい待ち(【ヘルプ】、孤児院のレオンの居場所)」



『〈レオンの居場所〉……中央公園、噴水前のベンチ』



 こんな時間に公園のベンチって。

 リストラされたサラリーマンじゃないんだからさ。哀愁が漂うなぁ……


「レオンくんなら、中央公園の噴水前にあるベンチにいるみたいだよ」


「ええぇっ! 何で分かるんですか!?」


「んなの、どうだっていいから早よ行けって。もしかしたら1人寂しく黄昏たそがれているのかもしれないし。どこかへ移動する前に会いに行った方がいいよ。なんなら私も付いて行こうか?」


「いえ、大丈夫です! ではさっそく探しに――」


 あ、そだ。保険掛けとこ。


「最後に1つ」


「はい?」


「私、『小鳥のさえずり』って宿屋に泊っているから。時間ができるようなら、そこに連絡して。予定が合ったら、一緒に屋台回ろうぜ」


「……ふふ、分かりました。約束です」


 では今度こそ。そう言って小走りで去っていくステラ。

 てか、優雅さも感じるのに随分足速いな!


「……改めて再会の約束したし、これで良しとするか」


 できれば早いうちがいいな。

 1人でする屋台巡り、前ほど楽しめないんだもん。



ステラ(`・ω・´)ゞ=三三三3 「逝って参ります!」


付き人ズ(;゜Д゜) (;゜Д゜)「「え? ステラ様ちょっと待っ――!?」」


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