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アルビノ少女の異世界旅行記 ~私の旅は平穏無事にといかない~  作者: 影薄燕
第1章:レーヴァテイン王国(後編)
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SS 魔族のマオ

・2023/12/17

 一部修正


 魔族。

 個々で違いのある角と翼を持つ亜人種の一種。

 回復系スキル・【光系魔法】の適性こそ非常に低いが、代わりに魔力が多く【闇系魔法】の適性が高いことで知られている。


 その特徴である角と翼。

 これは個性であり、同族同士ならチャームポイントとしても機能する。

 大半は頭の横から伸びた2本の角と、体の大きさに合わせたコウモリのような翼を持って生まれてくる。同じ形に見える角や翼でも「オレの方が角のカーブが綺麗だ」「私のは光沢があるわ!」「ボクの翼は色合いが美しいんだ」と多種族からは違いが分かりづらいことで自慢し合うことも多い。


 しかし中には、大きく突き出た一本角の者から後ろ側に伸びた角を持つ者。3本角や4本角を持って生まれてくる者もいるし、とてもではないが飛べないほど小さな翼、体よりも大きな翼、2対の翼など変わった翼を持つ者も。


 これらの特徴は遺伝だけで片付けられるものではなく、両親が一般的な魔族の角と翼を持っているにも関わらず、生まれてきたのは立派な4本角と身長以上の翼を持った子だったケースだってある。

 角や翼の特徴や組み合わせというのは多種族からしてもおもしろいことらしく、趣味で研究するほど奥深い内容らしい。


 さて、どのような角と翼が好まれるかは個人の判断によるところが大きいものの、見た目の問題としてみれば顔や性格と同じぐらい魔族にとって重要な事柄だ。

 なので、専用のツヤ出しクリームなど角や翼を整えるための道具もあり、女性を中心に多くの魔族が愛用している。


 自分を見せる仕事なら尚更……





 スポットライトで照らされた舞台。

 そこでは今、人間、エルフ、ドワーフ、魔族、獣人、全ての種族が物語の幕を下ろすために喜びを表わした最後の踊りを披露していた。

 物語のヒロインがドレス広げながらくるくると回れば、男装の麗人――雪菜の友人でもある魔族のマオが優しく腰に手を回して受け止める。

 客を楽しませるための音楽もそこで止まり、会場からは拍手が――



「カァーーーーーーーーーット!! すんばらしいぃよぉ! 練習なのにボク泣きそうだよ! これなら今回もお客さんは大喜びさ!」



 ――ならない代わりに劇団のまとめ役でもある監督からOKサインが出た。



「あ、ありがとうございます」


「監督の指導がいいからですよ」


 スポットライトが消え、代わりに部屋全体が明るくなる。


 パチパチと拍手しながら前に出るのは監督。

 そう、ここはレーヴァテイン王国王都で活躍している劇団の練習場所。今は次に公開予定の演目のラストシーンを演じていたのだ。

 後ろの方ではスタッフやスポンサーまでいる。


 騎士役を演じていたマオは、舞台から降りてスタッフに貰った飲み物を飲む。


(役者になって大分経つけど、やはり最後まで気の抜けない仕事だな……子供の頃はよく緊張してたっけ)


 どのような経緯で劇団の所属になったかは省くが、今では後輩たちからも慕われるようになったマオ。


 最初の頃は緊張から中々演技ができず、当時いた自信に溢れた先輩の男性を参考にがんばってきた。

 成長するにつれ性格にも影響していき、ボーイッシュな姿になったことで、今回のように騎士や女傑などの役が多くなった。


 そして――大当たりだった。


 全ての劇でそのような役をするわけではない。内容次第では脇役を演じることもある。

 しかし、主役級になった時は――劇団のお財布がウハウハ状態になるのだ。


 特に魔族のお客さんが多くなる。マオも多少なり自覚しているが、自分の角や翼は魔族視点から見るとかなりポイントが高いらしい。


 そして人気はお客さんだけでなく……


「先輩! お疲れさまでした! シャワー浴びますか? それとも、どこかに食べに行きますか? い、いっそのこと、私を食べ――」


「アンタ目がヤバいわよ! マオちゃん、新作のツヤ出しクリーム貰ったんであとで一緒につけあわない?」


「う、ううぅ、夢だった先輩との初2大主役。アタシ感動です。……ねえ先輩? 本当にアタシのこと攫ってみません?」


「ア、アハハハ……」


 劇団仲間――主に女性から異常に好かれていた。

 それこそ、最近は身の危険を感じる程に……


(マジェラ、レーナ、チェルシー、そしてユキナ……普通に接してくれるオマエたちと忙しくて最近会えないのが辛いぞ)


 最初は自分よりあとに入った劇団員たちの相談に乗っただけなのだ。


 一端の劇団員を名乗れるぐらいにまで成長したマオは、演技の参考にした男性に習って女性には優しく接するようにしていた。それは参考にした男性が結婚を機に引退したあとも続き、いつしか自分の性格の一部として馴染んだ。


 だからこそ、入ったばかりでまだ馴染めていない女の子も、少し先輩の女性にも、優しく接して悩みや愚痴などの話を聞いてあげたのだが……


(ボクはカウンセラーの才能でもあったのかな?)


 カウンセリングでは相手の気持ちに同調し、まずは肯定してあげるとはいつ読んだ本に書かれていた内容だったか。

 自分はそれを意識しただけなのだ。

 しかし、それは妙な形ではまってしまった


 昔からの特技で相手の感情を読むのが得意であり、カウンセリングの才能もあり――優しく女性に接した(宝塚風イケメン女優オーラ全開)結果、単純に先輩後輩の関係とか仲間内とかなどと違う雰囲気になる子が続出した。


 マオは善人だ。

 劇団員でなくても街で困ってる人がいればお節介を焼いてしまうほど。

 同じように優しく(意味深)相談に乗ったり、アドバイスをしたり……


 気付いたらやたらと女性にモテてた。

 当のマオ自身が困惑するほどに。


 尚、同じようにアドバイスをされたことでちょっとだけ救われ、しかし普通の友人関係に収まった雪菜はマオに相談を持ちかけられ、もろもろの経緯を詳しく聞いた上でこう言った。



『誰も悪くないけど、だからこそ自業自得なんで諦めたらどうです?』



 マオはちょびっとだけ泣いた。

 雪菜の「何してんすかアンタ?」という目も堪えた。

 少し前までコミュ障だった雪菜にマオのカウンセリングなど不可能だったのだ!

 明らかに人選ミスである!

 どうしてよりにもよって雪菜を選んだ!?


 ちなみに劇団に所属している男性陣はアテにならない。


 皆、仲間意識の強い良い人ばかりである。

 普通にマオとも気楽に話したりするし、誰1人としてマオのことを嫌っている者などいない。


 まあそれはそれとして、「ちっくしょ女の子にモテやがって~」的な嫉妬心がないわけでもない。ぶっちゃけ役得なんだからちょっとは困れよ。オレその子のこと狙ってたのにオマエにゾッコンなんですけど。よ~し敢えて無視しようぜモテない男たちで酒飲もう!と、こんな感じだったりする。


「ふっ、『自分のケツは自分で拭け』と雪菜は言っていたが……これどうやって終着点を見つければいいんだ? 拭くための紙すら見当たらないよ」


 マオは1人上を向きながら泣きそうになるのを我慢した。




 ちなみに、現在マオが立っているのはまだスポットライトの付いた舞台である。

 少し離れた所からは、上を向きながら目を閉じてるマオさん格好いいキャーキャーと黄色い声をあげる女性陣と、毎回目立って羨ましいぞブーブーとふて腐れる男性陣がいたり。



~あとがき劇場~


雪菜(´・ω・)「マオさんって、地球で言ったら宝塚で男装すると抜群に似合うタイプの人だからな。いろんな種族がいて、差別とかも無く恋愛の自由が高いなら、まあ女にもモテるよね」


剣二(´・ω・)「オレのいた時代じゃ差別はまだあったし、劇団なんてのも無かった。後世にも伝えていないから、本当に自然とできたんだろうな。こういうのって人々の暮らしに余裕が無いと発展しないし…………あの頃、がんばった甲斐があるってもんだ」


雪菜(´・ω・`)「アンタがやったことは未来に繋がっているよ。問題は多いけど、そこだけは誇るべきだ。リリィやクラリス、みんなのいるレーヴァテイン王国に何かあれば全力で護るよ。だから、安心しな」


剣二(-ω-)「ああ。オレと仲間たちの子孫のこと、頼む」


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