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アルビノ少女の異世界旅行記 ~私の旅は平穏無事にといかない~  作者: 影薄燕
第1章:レーヴァテイン王国(後編)
53/145

大晦日SS 百合洗い?

・2023/10/04

 一部修正


 来年もよいお年を。


 これはまだ雪菜が王都に向かう前。異世界に来た翌日の話。




 私が異世界に転移して2日目。

 まだ眠気が取れない時間帯。朝食時に何気なく言った「臭ってきたかも? お風呂入りてえ……」という呟きを聞いたリサさんとリリィから衝撃の話を聞くことになった。


「――え? 共同のシャワールームがこの村あるの!?」


「うん。そうだよ?」


「大きな都市ではお風呂が家にある場合も多いです。今いる村ぐらいの規模ならお金持ちの方以外は共同浴場や共同シャワールームを使用しますね。私たちも昨日は疲れて利用しませんでしたから、このあと一緒に行きませんか?」


「はい!」


 心の中でミニ雪菜ズ(なんのこっちゃ)がマラカス振りながら踊りまくっている。リンボーダンスを披露する個体も。

 まあ、あくまで私のイメージでしかないけど。


 ファンタジーの異世界ってことで、お風呂事情はしばらく諦めることも視野に入れていたから朗報だ。

 何ていうか、こう、言っちゃ悪いけど、もっと貧乏な雰囲気の村だと勝手に思い込んでいたんで、体は井戸から汲んだ水を桶に入れて濡らしたタオルで拭くのかと……。


 だけどこの村、昨日の短い間にちょろっと見た限りでも随分発展しているみたい。


 魔法があるから科学技術は発展しにくいかもしれないけど、それ以外の要素じゃ下手しなくても現代日本より便利なものがあってもおかしくない。詳しいことはまた後で聞くとして、シャワーぐらいで驚いてたらダメかもな。移動手段は馬車らしいけど、この分だと一部で車モドキがあるかも?


 とりあえず小難しい話はあとだ!

 シャワーが私を待ってるぜ!


「……ねえ、ユキナお姉さん」


「んー? なんだいリリィ?」


「共同のシャワールームって村の人以外が利用する時はお金が掛かるんだけど、ユキナお姉さん“いちもんなし”なんだよね?」



――ピキッ!



 時が止まった。


 心の中で踊りまくっていたミニ雪菜ズが絶望した表情を浮かべる。その目はもう死んだ魚のソレ。

 あ、マラカス落ちた。虚しく落下音が響く。

 リンボーダンスをしていた個体は姿勢を崩して倒れ込む。倒れた拍子に頭を強く打ったのか、のたうち回っている。


「………………グスッ」


 ヤバい。泣きそうになってくる。

 上げてから落とされるってこういうことなのね。

 こんな人生経験嫌や!


「だ、大丈夫ですよ! お金が掛かると言っても大した額ではありませんから。ユキナさんの分は私共が払いますので」


「ズズッ……いいんですか?」


「ええ、もちろん」


「ユキナお姉さん。一緒に洗いっこしよ?」


「……うん」


 メッチャいい人たちだなぁ。

 結果的にだけど、本当に助けてよかった。


 その時、奥の方で何か準備していたカイルさんとテッドさんがやって来た。


 ……ていうか、テッドさん改めて見るとデカいな!? 2メートル近くあるんじゃないの? 扉との比率がおかしいっす。


「リサ、テッドと一緒にもう1度ブラッディベアーについてギルド出張所に報告しに行くんだが、3人は今日どうす――どうしたんだ?」


「? 何でそっちの娘が涙目なんだ?」


 おたくの奥さんと娘さんがいい人で感動してるから。


「あなた、報告に行くにもまずは汚れを落としてからでも遅くないでしょう? 今ユキナさんとも話していたんですけど、共同シャワールームがある建物に行かない? 昨日はドタバタしていく余裕なかったから」


「……そういえば、そうだな。帰った時は気付かなかったけど、人と会うにも汚れぐらい落としてから行くか」


「お? いいな。オレもオマエら家族が死にかけたってことで昨日は行かなかった。たまには朝にシャワー浴びるのも悪くねえ」


 こうして、最終的に5人でシャワーを浴びに出かけた。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「……温泉施設?」


「共同シャワールームだよ?」


 共同シャワールームがあるという建物に到着した私たち。


 石鹸やタオルなどは自前で用意するらしく、私はリリィと一緒に使うことになり、荷物を持ってテッドさん宅から出発。少しウキウキした気持ちでいたところの不意打ちで先程の言葉が口から洩れた。


 その建物を見た最初の感想が日本にあるような木造の温泉施設っぽいって感想だった。

しかも、中に入ったら受付のある広いロビーがあって、青と赤の旗で男女別になってて、何種類かビンの飲み物が冷やされた状態で売ってて、マッサージチェア的なイスに老人が気持ちよさそうに座ってて、今は誰も使っていないけど区切られた場所に卓球台があって……


「これ温泉施設じゃん!? しかもベタな!!」


 ついに耐え切れなくて叫んだ。


「どうしたの? 何か驚くことでもあったの?」


「しいて言うならベタ過ぎて逆に新鮮!」


 おかしいよね? ここだけ日本じゃないの?

 最近多い『建物ごと異世界転移』した系のチート施設なんじゃ……


「施設の発想はもう数百年前、この国が建国される少し前に広まったそうだ。噂じゃ、実は初代国王が冒険者時代に体を綺麗にすることができないことに大きく不満を持って、自分の金銭まで使って改革に乗り出したなんて話もある。ま、さすがにそれはねえだろうけどな!」


 テッドさんはそう言って豪快に笑っているけど……

 何だろ? 本当にそうじゃないかって思えるんだよな。別に根拠があるわけでもないのに、その噂が真実のように思えてならない。


 そんなこと考えている内に受付へ。


「いらっしゃいませ。皆様の身と心を綺麗にして癒すことを誇る『ハイパーセントー』へようこそ! テッド様、本日はお連れを含め5名でしょうか? この機会にポイントが貰えるカードの発行はいかがでしょう? ただいまポイント増大キャンペーンを受けることができますよ?」


「あー、あとでな。それよりほら、そこの嬢ちゃんの分の金だ」


「ありがとうございます」


 ………………キョロキョロ。


「ユキナお姉さん? どうしたの辺り見渡して?」


「いや……どっか物陰に同郷の奴が隠れているんじゃないかと」


 なんやねん『ハイパーセントー』って? 『スーパー銭湯』のパチもん感が酷い。どっかに日本人が隠れて私のこと驚かせようとしてるんじゃッて一瞬でも思っちゃったもん。ポイントカード制があるのも特になあ……

 偶然だと思うんだけどね。一応念のために確認したかったんで。




 今の私は人生でもトップクラスの危機に直面している。


「ひ……ひ……人前で脱ぐのが……こんなに恥ずかしいなんて……!」


 場所は移って女性用の脱衣場。

 私の格好は昨日と同じ制服姿だ。その制服を脱ごうと手を掛けた瞬間、電撃のごとく身体を駆け巡るように襲った感情の名は“羞恥”。


 ぶっちゃけ舐めてた。大したことじゃないと考えてた。



――ブルブルブルブル



「ユキナお姉さん、さっきから震えているけど……どうしたの? 早く洗いっこしよーよ!」


 どれくらい羞恥で震えていたのか、しびれを切らしたらしいリリィがこっちにやって来た。その姿は生まれたまま。ようはスッポンポンだ。

 こら、せめてタオルで前隠すぐらいはせぇ。特に下。


 ちなみにリサさんはシャワールームの入り口でこっちを見ている。さすがにタオルで前を隠してはいるけど、口元に手を当てておもしろがっているのが丸分かりだ。

 アナタ、私が恥ずかしがってるのがそんなおもろいか?


「ま、待ってーなリリィ。心の準備するからちょっとだけ待――」


「もう待てないよー! ――えいっ!」


「へ? ………………あ」



 あ、ありのまま起こった事を言うぜ……!



 リリィが下半身に飛び掛かって来た。

 スルリとスカートの中に手を入れてパンツを掴んだ。

 思いっきりズリ降ろされてノーパン状態に。←今ここ。



「わあー、ユキナお姉さんのパンツってカワイイなー」


 ……

 …………に、



「にっぎゃあああああああああああああああ!?」






「ごめんなさいね、うちのリリィが。でも……フフフ」


「…………何笑ろうてんねん」


「だって、こうして見るとユキナさんってば普通の女の子なんだもの。とてもじゃないけど、ブラッディベアーを倒した人に思えなくて。喜んだり、悲しんだり、笑ったり、怒ったり。出会ってからまだ1日も経っていないけれど、アナタが裏表のない素直な女の子だってことが分かって」


「……ねえリリィ。私って裏表のない素直な女の子だと思う?」


「思うー!」


「さよですか」


 リリィにパンツ脱がされて羞恥のあまり絶叫したから余計目立つことになったけど、なんとかかんとかシャワールームに入ることができた。

 思っていたよりも広々としているし、人が2人分は入れるぐらいの間隔でシャワーが備えられている場所が半透明な壁で区切られている。

 シャワー自体も地球にあるものとほとんど変わらない。

 リサさんに使い方を聞いた限りだと、水を温めてお湯にするのに魔石を使っているぐらいしか違いがないみたい。


「それにしても、ユキナさんって本当に綺麗な肌ですね~」


「言わんといてください」


 さっきから私の口数少ないって感じた奴いるでしょ?

 いや、誰に向かって言っているんだって話だけどさ。


 現在の私、全裸にタオルの状態です。

 上も下も必死に隠しているけど、隠し切れていない。元々が色素の薄い肌だから体中が真っ赤になっているのが分かる。


(耐えろ~私~! これから先もこんなことあるかもしれないんだし、今の内から慣れておかないと後々たいへんなことになるのは目に見えてるぞ~! がんばれ私! 恥ずかしがるな私! 見られてるのが昨日会ったばかりとはいえ、知り合いなだけマシだろうが~!!)


 自分自身を半分自己暗示みたく応援する。

 実際の話、こればかりは慣れの問題だからな。


「それではユキナさん、リリィをお願いしますね?」


「あ、はい。分かりました」


「洗いっこー!」


 というわけで、シャワーのある場所へリリィと入る。


 お湯が出る部分を回せばすぐに雨のようなお湯が頭上から出る。

 冷たい水が出るんじゃと、念のために端っこに避難していたけど杞憂に終わった。アレって気を付けないと本当にビックリするんだよね。


「え~と、これで調節だったよな……」


 シャワーを操作する所にはお湯の勢いと温度を調節箇所があったので、リリィの意見を聞きつつ丁度いいものにすればシャワータイムだ。



――ザアァーーーーーーーーーーー



「……ふぅ~~~。生き返るわ~~~」


 やっぱ人間、1日1回はシャワーか風呂だね。

 精神的な疲れも洗い流されていく感覚だ。


 隣を見ると、キャッキャッ言いながらリリィが石鹸とスポンジみたいなモノで体を拭いていた。髪も石鹸で洗っているみたいだけど、傷まないのかな? 貴族とかでも石鹸? それともシャンプーみたい液体を使ってる? 


 私も一応は女だし、髪は可能な限り大切にしたいんだよなー。

 値段次第だけど、買うことも視野に入れよ。


「ユキナお姉さん、背中洗ってー」


「ん? ……りょうかーい」


 それでは約束通り洗いっこの開始~!


 ゴ~シ、ゴ~シ、ゴ~シ。


 壊れ物扱うみたいに優しく、間違っても強くし過ぎないように。あーしっかし、スポンジ越しでも分かる肌の滑らかさ。子供の背中洗うなんて人生初だけど、不思議なほっこり感がある。

 何だろなこれ? 庇護欲? 母性? 


「ありがとー。次は私が背中洗うね!」


「初めてだから優しくしてね?」


 さすがに身長差があるんで正座になって位置を調整。

 さあ、バッチコ~イ!


「うんしょ。うんしょ。うんしょ」


 お、おぉう。むう、こそばゆ……

 他人に背中洗ってもらうのってこんなのなんだ。

 一生懸命洗ってくれているリリィが可愛く思える。



 ――ずっとこの時間が続けばいいのに、って考えてしまう。



 そうこうしている内にだいぶ背中を洗ってもらった。ちょっと残念だけど、いつまでもシャワールームにいる訳にもいかんし、この辺でやめときますか。


「ありがとう。あとは自分で洗うよ」


 このまま普通に終われば良かったけど……


「むうー。大丈夫だよ。ちゃんと前も・・洗ってあげる!」


「――――――What?」


 え、ちょ、リリィさん?

 まさか……冗談っすよね?


「んっしょ、っと」


 リリィの体が背中に密着する。

 そして前に回されるスポンジが胸部装甲をロックオンする。

 そこまでの流れがスローモーションのように私には感じられた。



――もにっ



「!!!??」


 リリィさん!? ちょっと待――


「ごしご~し♪」


「にょんわぁあああああああああああああああああっ!!?」


 ヤバい!! 


 何がヤバいって、全部ヤバイ!!


 体が! 力が抜ける! 誰か、お助けえええええええぇ!


「う~ん? お母さんの時と違うなあ?」


 やかましいわ!!

 そりゃリサさんの胸部装甲の方が分厚いからでしょが! 私は成長途中なの! あの人はリリィ生んでいる時点で成長しきってんの! いろんな意味で母性の大きさが違うんだよ!!


「じゃあ、次はこっち~♪」


 !!? ダメだこれ以上は! 早く何とかせねば!!


「リリィぃぃぃいいいいいい! ちょっとタンマ!! 話せば分かるか――あ……ああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ――――」



~数分後~



「…………………………」


「えっと……ユキナさん? 大丈夫ですか?」


 ガチで屍のようになっている私に話しかけてくるリサさん。

 倒れているから見えないけど、リリィも不思議そうな顔で見ているみたい。


 うん。そうだな。この数分の間で思ったことを一言だけ。


「……リサさんの母性、少し私に分けてくれません?」


「それは、無理だと思うんですけど……」


 ですよねー。

 ちくせう。


~あとがき劇場~


雪菜( ゜言゜)「うおぉいぃ。あとがきだから遠慮なく言うけどな? テメーだろ初代国王(笑)? 『ハイパーセントー』なんてパチもん広めたの……」


剣二( ゜д゜)「そうだぞ。何か問題でもあったか?」


雪菜(#゜Д゜)「問題だらけじゃボケ! 言え! 何でパチもん感丸出しの名前にした!? 後世に日本人の業やムダ知識を教えた! 1章であった半年の間に、王族から異世界に100%いらないこと聞かれるたびに話をはぐらかし続けた私の苦労を返せ!!」


剣二(´・ω・)「後半、関係なくない? まあ、強いて理由を上げるなら……やっぱり、その場のノリかな? 勢いとも言う」


雪菜(;゜Д゜)「ちっくしょ~。よくよく考えなくても、私も同じタイプだから理解しちまう……(何でコイツ普通に受け答えてるの? 私以上にアレなんじゃ? それとも異世界で過ごした経験の差か?)」


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