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アルビノ少女の異世界旅行記 ~私の旅は平穏無事にといかない~  作者: 影薄燕
第1章:レーヴァテイン王国(後編)
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閑話 剣二の日記①

・2023/10/01

 一部修正



 著.日下部くさかべ剣二けんじ



【20XX年.〇月×日】

 土曜日。今日から日記をつけることにした。

 家族には「何で突然?」とか、「3日坊主で終わるだろ」とか言われたけど。

 仕方ないじゃんか! 学校の連中と日記の話になった時、売り言葉に買い言葉で「よ~し、半年後までに書いた日記らしい日記を見せてやるよ!」みたいな日記対決になったんだから。

 自分で書いていてあれだけど、日記対決って何だろな?

 ともかく、さっそく自腹でたくさん書けそうな厚めの日記帳とセットのボールペンを買った。この厚さなら数年は持ちそうな気がする。






【20XX年.〇月×日】

 日曜日。最悪だ。

 夜の占いコーナーで明日の運勢が過去最低という結果が出た。テレビなんざさっさと他のチャンネルに変えるべきだったんだ。

 明日は学校行く時にいろいろ持って行こう。

 クラスの連中に「オレ昨日の占い番組見て、こんだけ対策してきたんだぜ~!」って、話題作りになるだろ?

 これを機に女子にモテだ――いや、無理だな。






【20XX年?.〇月×日?】

 お、落ち着けよ! いいか? 順番に書くぞ?

 オレは朝、普通に登校していたんだ。いろんな物詰め込んだ鞄を肩にかけながら。もう1ヶ月以上歩いている地元の高校までの道のりを。

 でも……でも!

 赤信号を無視したトラックがオレに突っ込んできて、「……あ」て思った次の瞬間には真っ白な空間にいて、目の前に超絶美人の女神を名乗る人がいたんだよ! 何言って――書いているかオレ自身も分からないけど、幻覚だとかそんなちゃちなものじゃねえんだ! 思わずネタに走るしかないぐらいには混乱しているぜ……!

 とにかく、目の前の女神曰く、最近神の間で特殊な世界である地球の人間を異世界に転生・転移することが流行っているとか……。で、その女神は死ぬ寸前の人間の体と魂を保護して異世界に転移させる方法にしたらしい。本来はトラックにモロに轢かれてほぼ即死の状態になるはずだったオレがたまたま選ばれたと。

 元の世界に戻れないか聞いたけど、既に真っ昼間の事故現場で忽然と姿を消した高校生として新聞にも載っていると言われた。地球の運命線からも切り離したから、あっちではずっと行方不明扱いになるとも。

 正直愕然としたけど、あのまま死んでしまうよりはマシと考えることにした。ポジティブに考えなきゃやってられないと思ったのが1番だけど。

 その後の話し合いで異世界に転移する際の特典の話を終え、オレは今いる・・・この世界に足を降ろした。

 幸いにも街に向かう途中の馬車に乗せてもらえた。ダンディーなオッサンが馬を引いていたが、マジ紳士。「何か、事情があるんだろ?」って無料で乗せてくれたんだから。オレ、この世界で成り上がったら必ず恩返しするよ。

 ちなみに、現状としては女神様にもらった能力はまだ試せていない。

 荷物は高校の制服に携帯(案の定電波ねえ……)、そして昨日の占いを見てバックに詰め込んだ役に立つのかどうか分からんモノズ。

 日記も入っていたんで、こうして書いてる。

 最初の内はともかく、これからの異世界での出来事を多く書くために、大きな出来事だけ書くようにしよう。

 間違いなく、2、3日は続けて書くだろうけど。






【20XX年.〇月×日】

 異世界転移2日目。3日坊主は切り抜けた。

 西暦や日にちはそのままで使うことに。だってこっちの世界に合わせても面倒そうだし……

 街に入ってさっそく冒険者ギルドに行った! 身分証にもなるギルドカードを発行してくれるらしいんで今から楽しみ!

 だったんだけど……

 まさかのチンピラ3人組に絡まれた。

 「おいおい、ここはガキの来るとこじゃねーぞ」て、身分証のために来たと思わないのか? いや、実際に冒険者になりにも来たんですがね?

 そこからは何故かバトル開始に。周りも止めないし、この世界のギルドってちょっと野蛮なのかな?

 結果だけ言えば、人生初めてのケンカだったのに勝てちゃいました。

 女神から貰った『身体能力強化(極大)』、『大和魂』、『超直感』のお陰だ。昨日の時点じゃ気付かなかったけど、オレの身体能力が全体的にかなり底上げされてるみたいだった。あと『大和魂』は要検証だけど、日本に関連した武器やスキルを複合したモノっぽい。チンピラが斧を振り上げようとした時に日本刀が現れた時は本気で驚いた。さらに攻撃される瞬間にスローモーションになったし。そこからはみねうちで3人を撃破。日本刀なんか扱えるはずないのに、どうしたらいいのかがすぐ分かるんだ。たぶん『超直感』が原因だと思う。これも後日検証だな。

 今日は宿屋探すのにだいぶ手間取って今書いているのも夜だ。安くてもいいから鍵付き朝食付きってのが中々無いんだもん。鍵がない宿屋のドア(異世界の)とか心配になる。トラブルの予感がしそうで、オレ眠れるだろうか……

 お金はバッグの中にあったモノをいくつかオッサンに売って手に入れた。

 ライターとかペンの類をホクホク顔で買い取っていたけど、やっぱり異世界の文明レベルからすると珍しいのかな? 正直こっちのお金の価値はまだ分からないことが多いけど、明らかに日本で買った時よりも高い値段を手にしてしまって、ちょっと良心が痛んだ。ライトノベルの主人公たちがどうしてボッタクリして喜ぶのか疑問に思うようになるとは……






【20XX年.〇月×日】

 冒険者になって数日、久しぶりに日記を書くことにした。

 地道に依頼をこなしているけど、貰える金がしょぼい。ギルドでも新人は貧しい生活をおくって世の中の厳しさを学ぶのが通過儀礼だって。

 そんなんだから新人冒険者が中々育たないって分かんないのか?

 自分で採取する植物や討伐する魔物の特徴を把握しなきゃいけないし、聞いただけだと間違える確率もある。資料室とかあれば楽なのに……。

 というか今日、採取する薬草間違えた。「おいおい、回復薬の材料の採取で毒草取って来たぞ! ぎゃはははは!」なんて冒険者の1人に笑われた。やかましいわ。ていうか、初日に絡んできたチンピラだった。無言で腹パンしたらスッキリしたよ。ざまあ。






【20XX年.〇月×日】

 最近じゃそこそこ強い魔物を落ち着いて倒せるようになった。今じゃ期待のルーキー扱いだ。冒険者ランクも上がった。

 魔物の素材を売りまくったので、財布も重い。今の所は順調だな。

 だけど問題もある。初日にチンピラに絡まれていたのをニヤニヤして見ていただけの連中の手のひら返しには嫌気がさす。気分をスッキリさせるために、忌々しい表情で睨んできていた例のチンピラに無言で腹パンした。

 スキルも少しだけ増えた。剣を使って戦ってきたからか『斬撃強化(小)』とか『戦技・居合い(モドキ)』とか『剣術』とか。

 最初に魔物と戦った時は震えていた足も自然に動く。首を斬る直前で止まりかけていた手も止まらないで斬り落とせるようになった。やっぱりこういうのは慣れ……なのかな? 心のストッパーが緩くならないようにだけは気を付けよ。






【20XX年.〇月×日】

 死ぬかと思った。

 メチャクチャ強い猿みたいな魔物と出会って戦闘になったけど、マジで死ぬかと思った。

 目潰しに土投げてくるとか反則だろ。小さい頃に見た映画の大佐になったろうが。目が痛くてしかたないのに問答無用で鋭い爪振るってくるし、中距離から岩投げてくるし。戦いの中で【心眼】ってスキルを新たに手に入れてなきゃ、こうして日記を書くことすらできなかった。

 斬り落とされたクソ猿の首が「え? 見えてるの? ウソん」みたいな表情は印象的だったな。魔物でも頭がいい奴はいるし、この世界はファンタジーだけど同時に現実でもあるって再認識した。今度から猿系の魔物見かけたら逃げるようにしよう。

 しばらくは戦いたくない。トラウマになりそうだ。

 一先ずギルドに猿の首持って行ったら大騒ぎになった。どうやら想像していたよりもヤバイ奴だったらしい。

 冒険者ランクが一気に上がったけど、ギルドの規定がガバガバすぎないかと疑問に思った。ギルドマスターは隠していたつもりかもしれないけど、「有事の際に役に立ちそう。今の内に恩を売っておくか」的な雰囲気が駄々洩れだったな。机の角に小指ぶつければいいのに。

 イライラしていたんで酒を飲んでいたチンピラ(笑)に無言で腹パンを決めた。「今日は何もしてねえのに……」って聞こえた気がした。きっと気のせいだな。そうに違いない。

 夕飯はちょっとお高めの外食にした。家庭料理レベルだった。値段がウソついている気がしたけど、中世文化だとこんなものなのかな? いつものクソマズい黒パンに比べたらマシだったし。






【20XX年.〇月×日】

 宿屋を変えた。

 ずっと世話になったけど、装備も充実してきたからセキュリティが高い宿に変えることにした。扉に鍵があるってすばらしい。

 せっかくだから隣の部屋に手作りのお菓子(行きつけのパン屋にお金を払って厨房を貸してもらった。シンプルなクッキーだけど、見た目いいしそこそこ美味い)を持って挨拶に。

 左側の部屋。筋肉オネエがいた。

 「あらカワイイ坊や。食べちゃいたい♡」って初対面で言われた。

 異世界に来て2度目の死を覚悟した。

 無難に挨拶を終えてクッキーを渡せたオレは勇者だと思う。ヤベ、思い出したら書いてて手元が震えてきた……

 右側の部屋にいたのは同い年ぐらいの女の子だ。

 金髪碧眼の美少女1歩手前って感じ。正直好みのタイプだったけど当たりがキツイ。挨拶しても「あっそ」で終わり、クッキー渡した時も「安っぽいわね」で扉を閉めた。見た目と中身が一致したら口説いたかもしれないのに……

 そういえばそのあと、ちょっとイラついた気持ちで買い物していたら、急に右腕が動いた。どうやら無意識のようだった。

 後ろの方から「グフッ……さすがに横通ろうとしただけで腹パンは酷くねえか……」なんて声が聞こえた気がした。

 きっと気のせいだな!





 予想以上に長くなったんで日記は切りのいい所で区切ることに。

 「閑話 剣二の日記②」は次の章で。

 第2章のオチが決まったのでようやく本格的に執筆開始。新章が始まる前の土日には複数のSSを投稿します。

 SSや新章を投稿する際は事前に活動報告に書き込みます。

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