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アルビノ少女の異世界旅行記 ~私の旅は平穏無事にといかない~  作者: 影薄燕
第1章:レーヴァテイン王国(後編)
46/145

第43話 泥棒のマネごと

・2023/09/15

 一部修正



 ――皆さんは人生で“やっちまった”って瞬間はありますか?

 ――人はそれを『大後悔時代の幕開け』と称します。

 ――きっと誰しも1度はあるのではないでしょうか?

 ――その時、皆さんは何を考えますか?

 ――私は……死ぬほど後悔しています。



「………………どうしよう」


 現実逃避でナレーション風に今の状態を表してみたけど、何も参考にならなかった。むしろ悲壮感の方が強く出た。


 時刻は夕方。既に日が落ち始めている。

 建国パーティーが無事に終わってから、半日以上が過ぎていた。


 そして【アイテムボックス】中には、ワインを零して目も当てられない惨状のままの宝箱がある。――混乱したまま収納してしまった宝箱が。


「このままじゃ間違いなく例の侯爵に迷惑が……!」


 あのあと、急いで会場に戻ることはできた。

 侯爵の顔はハッキリ覚えていないから、合流した王様にそれとなく侯爵がどこにいるのかを聞いたんだ。



 ――ザッカニーア侯爵なら急ぎの用とかで帰宅したが?



 絶望した。

 侯爵のメンツもあるだろうから王様に「ワインこぼして贈り物台無しにしちゃいましたテヘッ♪」なんて言えるわけないし、だからと言ってこのままアイテムボックスの中に入れていたら泥棒以外の何者でもない。


 贈り物の保管場所の警備が薄かったことに関しては、極一部の素行の悪い貴族が無茶を言ったり連絡の行き違いがあったりで人がいなかったらしい。警備の人に何度も頭を下げられたよ。


 ならば仕方ない。急いで侯爵を追いかけようとして――



 またも来ました挨拶に来る貴族たち。



 どうやら私が戻るのを待っていたみたい。

 しかもいっぺんに来たから逃げ場がない。ジーザス!


 そこから建国パーティーが終わるまでずっと貴族たちの相手をすることになり、再び精神にダメージ。いつの間にか増えてたスキルのお陰で最初よりマシでしたがね? それでも限度があると文句を言いたい。

 結局疲れて、そのまま帰宅。ぐっすり眠りましたとさ。


 翌朝――つまり今日のわけだけど、いつもの時間に下へ降りてこない私を心配したリリィが見たのは、ベッドで四つん這いになる私の姿。

 どうしたの?と心配する声にも反応できず。


 そして気付けば今の時間帯だ。


「夜になったら明日の作戦のために最終確認も兼ねて城に行かなきゃいけないのに。今日中にどうにかしなきゃマズいよな?」


 できれば私のやらかしは他の人に知られたくない。

 でも侯爵のことを考えると宝箱はどうにかしたい。


 考えに考え、足りない頭をフル回転させ、知恵熱が出始めたところで頭の上に豆電球が光った。


「……そうだ。侯爵邸に忍び込んで密かに返そう」



 冷静に考えれば「オマエ、バカだろう」と言われてもおかしくない。

 だが、この時の私は自分でも自覚するほど冷静じゃなかった。

 元より一般ピーポーな私の頭の出来なんてたかが知れているんだ。昨日からのストレスとやらかしでオーバーヒート直前。


 結果、せっかくのチート能力を限りなく無駄遣いして大不法侵入作戦が頭の中で出来上がる。大事な作戦の前日に何やってるんだって話だけど。



「そうと決まれば即行動! いざ、作戦開始!」


 まずは汚れてしまった宝箱だ!

 さっそく【アイテムボックス】から出す――が、


「うん? ……気のせいかな?」


 出した瞬間、一瞬だけ宝箱から不穏なものを感じた気がした。

 ……ま、どうでもいいか!


「まずは汚れを洗い落とそう」


 洗い落とすと言えば【水系魔法】だ。今のレベルは2。だけどそれでは不安だと思ったんで、1SPを消費してLV.3にアップする。


「『クリーン』」


 発動するのは洗浄用の魔法。

 洗濯機をイメージすることで【スキル:想像反映(小)】による補正をする。

 数秒して姿を現したのは、ワインを零した際にできた汚れなどどこにも見当たらないオシャレで小さな宝箱だ。


「よっしゃ成功!」


 再度綺麗になったことを確認して【アイテムボックス】へ。


「いざいかん、侯爵邸!」




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 忍者でござる。ニンニン。

 場所は侯爵邸の近く。バレないよう物陰に隠れているでござる。

 以上、忍者ごっこ終了。


 今回のミッションで重要なのは誰にも見つからずに侯爵邸に侵入すること。

 当たり前だけど門の外には侯爵の私兵と思わしき騎士姿の人が何人もいるし、敷地にもそれなりの人数が巡回しているだろう。

 侯爵邸を囲う壁も高く、侵入は困難を極める――普通なら。


(バレないよな? 誰にもバレていないよな?)


 気を付けているのもあるけど、不自然なほど門の周辺を警備している人たちに気付かれない。

 その理由は急遽取得した新しいスキルにある。



『〈隠密(大)〉……任意発動スキル。発動中、周囲から自身への認識能力を極端に薄くする。見えていても認識しづらい。自身が何らかの大きな行動をした場合、スキルの効果が無くなる。最初から認識されている状態での使用は不可能』



『〈気配遮断〉……自身の気配を遮断する』



『〈跳躍〉……通常の倍以上のジャンプが可能』



『〈無音〉……魔力を多く消費して、自身が発生させるあらゆる音を無くす。本来発生させる音が大きいほど消費魔力が多くなる』



 完全に泥棒向きのスキルばかりだ。

 さっき使った【水系魔法】の『クリーン』も痕跡消すのに有効そう。

 あれ? そういえば人間の死体ってモノ扱いになるのか? だとすると、魔物の死体みたいに【アイテムボックス】に収納できる?


(……これ暗殺者みたいだな)


 【隠密(大)】、【気配遮断】、【無音】で対象のいる場所へ近づく。【アンロック】で鍵の類いも意味無し。対象に接近したら即暗殺。死体を【アイテムボックス】にしまい、『クリーン』で飛び散った血の跡を消す。

 次の日の記事には痕跡が残ってないから誘拐・失踪事件としてしか取り扱われない。まさしく完全犯罪。


 ……何これ怖い。


(本物の要人とかなら対策ぐらいしているだろうけど、改めてスキルが揃うとありえないことまでできちゃうって分かるな。SPを溜めるために魔物をたくさん倒す必要があるけど、どんな戦闘スタイルにもなれるってのは強みだ)


 無事に敷地内に侵入すれば、【跳躍】で高い壁もひとッ跳び。

 巡回している私兵に気を付けながら、城ほどではないけど匹敵するデカさの屋敷の屋根に張り付いた。


(順番に窓から中を覗いていくか)


 できれば侯爵の私室に例の宝箱を置こうと思っていたので、それっぽい部屋があったらそこに置くつもりだ。

 窓から屋敷の中を確認すること数度。いかにも偉い人が仕事していますって雰囲気の部屋があったので、【アンロック】で窓を開けて侵入。


(お邪魔しま~す)


 再び部屋の中に誰もいないことを確認。仕事机の上に宝箱を置く。

 【アイテムボックス】から出した瞬間、またもや不穏な気配を感じたけど……気のせい、だよね? 2度目になると自信なくなってきた。


(緊張と混乱のし過ぎで疑い深くなっているのかな?)


 とにかくミッションコンプリートだ。

 あとはこのまま直接城に向かうだけ。空を見ればちょうど日が落ちたところだった。時間的にも今から行けば予定より早く着ける。


(失礼しました~)


 そそくさと侯爵邸を後にし、私は城に向けて足を進めた。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「――それでは次に、優先的に強制捜査する貴族の屋敷の順番について確認をいたします。突入部隊の責任者及び、魔王教団の者が確認された際の殲滅部隊所属の方はお手元の資料3ページ目をご覧ください」


 時刻は夜。日が落ちてからそれなりの時間が経った。


 現在、私がいるのは広い会議室。

 本来なら国の有力貴族たちが集まって国の重大事を決めることに使われる部屋の中には、王様を含め明日の早朝に開始する作戦の責任者や高ランク冒険者などの大物がたくさん。

 その中で右にエリザさん、左にニコラさんを隣にして資料を確認している。


 資料は今も説明をしているこの国の宰相が作ったって話だ。ものすごく細かい。作戦の基礎部分はキッチリ決めつつ、予想外の事態・最悪の事態に至った時の対処の仕方を大まかに決めている。

 素人からしたら目から鱗な対処法まであるんだから、さすが宰相だと感心せざるを得ない。


 周りを見渡してみる。

 王様は進行役の近くでどっしり構えて親交を見守り、ウェルナーさんがその隣でぶつぶつ言いながら資料を確認していた。

 表向きはウェルナーさんが対“雷の仮面”の戦力として相対する予定だけど、実際は私もガツンと関わることになっている。そのことを知るのは出席者の中でも極一部だけである。


 尚、そこまで事情を知らないけど私のことは知っている冒険者の方も多くいるわけで……

 「やはりユキナ殿も作戦に参加するのか」「嬢ちゃん……何でこんな所にいるんだよ?」「あれで中身が普通だったらなぁ……」「ユキナさん、がんばってネコ被っているねー」とか、いっぱい聞こえてきた。

 恥ずかしい。特にギランさんとは顔合わせられん。ソフィさんについては後ほどOHANASI決定だ。他の人に聞こえたらどうすんだよ!


 はあ……会議が大事なのは理解しているけど、早く終わってほしいな。明日はこの苛立ちもドカーンッ!と活躍してなくし――




――ドガァァアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!!




「ふんぎょわっ!?」


 突如鳴り響く爆発音。

 会議室も大きく揺れ、臨戦態勢に入る騎士と冒険者たち。

 無様にイスから転げ落ちる私。


「な、何だ!? この揺れは一体!?」


「敵襲か! まさか、魔王教団が……!?」


 混乱する会議室の中でようやく立ち上がることができた。

 何が起こったのか分からないけど、急いで戦闘の準備をしようとした私の頭に聞こえてきたのは――



『〈ヘルプよりお知らせ〉……条件を満たしました。【称号:無自覚の英雄】、【討伐(雷の仮面)】を習得しました』



「………………はい?」


 次回は件の侯爵視点で。


【消費SP:9】

・水系魔法LV.2→LV.3

 1SP

・隠密(小)→(中)→(大)

 4SP

・気配遮断

 1SP

・跳躍

 1SP

・無音

 2SP


【追加SP:45】

・裏切り者ズ

・魔王教団構成員

・雷の仮面


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