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アルビノ少女の異世界旅行記 ~私の旅は平穏無事にといかない~  作者: 影薄燕
第1章:レーヴァテイン王国(後編)
44/145

第41話 建国パーティー(前編)

・2023/09/14

 一部修正


 今の私の気持ちを正直に言おう。


 ……全力で逃げたい!


「は~な~せ~~~!! おうちかえる~~~!!」


「ここまで来といて往生際が悪いわよユキナさん! さあ、次はこっちのドレスを着てみましょ? フリルが付いたカワイイ系よ? 今年出た新作らしくて、若いユキナさんに似合うと思うの」


「ユキナ殿の気持ちは痛い程分かる。私もパーティーに出席した時は逃げ出したかった。だが、私は逃げずに最後までやり遂げたのだ。……ヒラヒラしたのが苦手と言うなら、こちらはどうだろう? 露出面積も無く、しかしスラッと見えるので抵抗感は薄い。ユキナ殿の髪色にも合っている」


「ユキナ、1度承諾したからにはパーティーの出席を断るのは無しですよ? 親交のある家の方には既に、わたくしの新しいお友達を紹介しますと言ってあるのですから。フフ、楽しみですね。ねえ、フィオラ。ユキナにはどんな装飾品が合うかしら? ユキナのイメージからも清楚な雰囲気を出してくれるよう、1つか2つに抑えておこうと思うのだけど」


「クラリス様の意見に賛成でございます。そして、お化粧の方はお任せください。ユキナ様の肌は雪のように白いのでいつもと勝手が違いますが、むしろやる気が出るというものでございます」


 城から建国パーティーの招待状を貰った翌日、詳しいことを聞くために城にやって来た私はさっそくクラリスに会うことにした。


 クラリスが語ったことによると以下の通り。

 建国パーティーはそのままの意味で、1年に1度レーヴァテイン王国が正式に建国された日に城で開かれる大規模なパーティーだ。小規模なら年に何回もどこでもやっているが、お城で開かれるのはこのパーティーだけ。


 そして、どうしようもない用事がある貴族以外は基本強制参加。

 普段王都にいない貴族やその関係者が一堂に集結するので、中々会う機会がない人物と関係を作る絶好のチャンスでもある。

 このパーティーの暗黙の了解として、いつもは貴族としての位の違いから挨拶ぐらいしかまともにできない底辺貴族でも高位の貴族と話すことが可能。それこそ、平民や冒険者であろうとも。

 そう、例えば私でも。


 最初は渋ったが、王様から例の件・・・についても話があるんで是非参加して欲しいとお願いされ、承諾した。


 ――とはいえ、


「アカンから! 私今までドレスや化粧なんてしたことないから! ちょっと、せめて自分で選ばせて!」


 現在、着せ替え人形状態に。


 ニコラさん、エリザさん、クラリス、メイドのフィオラさん。4人に包囲され、あれじゃないこれじゃないと次から次にドレスをとっかえひっかえし、他の人がドレス選びをしている間はメイドさんによる化粧の確認。


 休む時間が1秒もねえ!!


「あの、せめて最初に私が選んだのじゃ……」


「ダメです。あれでは地味すぎてユキナのいいところが生かせません。大丈夫です。大船に乗ったつもりでわたくしたちに任せてください!」


 船の揺れ(着せ替え人形状態)が酷すぎて酔いそうです。

 ボートでもいいんで、揺れが少ないの用意して。


「ユキナ様。ようやくユキナ様に合う化粧の感覚が分かってまいりました。黙って笑顔でいれば、妖精と言っていい出来となることでしょう。当日は万全の状態で建国パーティーに出席させてみせます」


 あぁ、そうですね。黙ってればそれなりに見えるでしょうね。素体だけ・・はいいみたいだし? 中身の性格隠せばパーティーの花かもなー。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 パーティー当日。

 私は煌びやかなパーティー会場の様子を見る。


 そこにいる人全員が、住む世界の違う人だと思える光景だ。

 会場全体を照らすシャンデリア。テーブルに置かれた数々の料理。見ただけで品質がいいと分かるドレスを着た女性たちと、パーティー用のスーツ姿の男性。育ちがよさそうな様々な年齢の子供たち。



 そんな会場でなぜか王族と一緒にいるドレス姿の私。

 日本にいた頃の私に今の状態を教えても「寝言は寝てから言え」と真顔で返すだろうなー。もしくは「病院行こうぜ」かな?



 うん。意味分かんないよね。

 あ、このワイン美味しいー。


「ユキナ殿、どんどん目が死んでいっています……。最初の笑顔はどうされたのですか? まだ挨拶に来る方々はいますよ?」


「エリザさん、もう無理です。2時間ですよ2時間。クラリスに『わたくしの大切なお友達です』ってみんなの前で紹介されて、何十人もの貴族の人と挨拶して、猫を被って笑顔作って……。ふふふ、あらやだ皆さん。私が美しい? まるで儚げな妖精のようだ? そんなことありませんよ。クラリスの方が何倍も美しいですわ。え? 謙遜する姿も素敵? 是非ダンスのお相手を? あらやだ冗談がお上手ですこと♪ ふふふ♪ フ、フフフフフ……」


「クラリス様、早く戻って来てください……! ユキナ殿が壊れ始めました。そろそろフォローしないと、大変なことに……!」


 会場入りして既に2時間以上経ったけど、そろそろ自分でも何考えているのか分からなくなってきた。誰か助けて。


 え~と? ドレス選びから数日が過ぎて、建国パーティーの当日になって、ドレスや化粧なんかを完璧に施されて、王族の人たちに先導されながら一緒に会場入りして、貴族の人やその関係者から王族以上になぜか私が注目されて。

 それから……それから? ……あれ? どうなったんだっけ?


「やあ、エリザベス。ユキナ殿の調子はどうだ――いや本当にどうしたんだ? まるで事業に失敗した商人のような顔になってるぞ?」


「ユキナ? わたくしたちの声が聞こえますか? おーい?」


「恐らく半分も聞こえていないかと。仕方ありません。一旦休ませましょう。私は厨房に行ってサッパリとした飲み物がないか確認します」


「お願いエリザ。さぁユキナ、こちらへ――」


 誰かに手を引っ張られてる。クラリス? あれ? もしかして私クラリスとダンスすることになったのか? それとも――





『〈ヘルプよりお知らせ〉……熟練度が一定に達しました。【スキル:精神安定】を習得しました』



 頭の中がスッキリし始めた。


「ユキナ? わたくしが誰か分かりますか? ここがどこで、さっきまで何をしていたか思い出しましたか?」


「………………あー、思い出した。よし、私復活」


 クラリスが渡してくれた柑橘系の飲み物を飲みながら、ようやく再起動した頭で少し前までのことを思い出す。


 結論から言うと、クラリスたちのコーディネートが完璧すぎた。


 全部の支度が終わって鏡見た時は「誰だオマエ!?」って叫びそうになった。もうそれぐらい別人なのよ。


 清楚をイメージしたような露出控えめのほんの少し青みがかった白のドレス。宝石が付いたネックレスとイヤリング。上の方で髪をまとめた淑女風ポニーテール。顔の輪郭をハッキリさせる薄化粧。


 クラリスやメイドさんたちは「ほぉ」と感嘆の息が出た様子で満足げに頷き、鏡の中の美少女が口元を引きつらせる。

 普段の私ならともかく、ここまでしてもらった鏡の中の私が口元引きつらせるのは似合わないと思い、表情筋全開のスマイル。


 瞬間、後ろの方で聞こえる「キャー! キャー!」というメイドたちの声。

 いつの間にか移動していたクラリスが肩を掴んで「今日はそのキャラで行きましょう。パーティーの主役はユキナで決まりです」と妙に確信した強い語気で提案してきた。裏の声で「拒否は許しません!」と聞こえた気がした。


 もうね? 猫被って入場したんだ。1匹だけじゃなくて3匹ぐらい。

 はいクラリスが言った通り注目の的です。同い年ぐらいの女の子が挨拶しに来た時は平然と(本当は心の中が暴風雨)していたけど、ちょっと年上のイケメンから渋いオジサマまで休む暇もなく来るんだ。

 そこから回復できずにボーっとしだして今に至ると。


 気が付いたら王様、王妃様、クラリス、エリザさんの4人に囲まれて休憩スペースにいたわけだ。ご迷惑をお掛けしたようですんません。


「精神耐性系スキルを習得しちゃうぐらい、いっぱいだったんすよ……!」


「気にしないでください。元はと言えば、ユキナの素敵な姿に見とれて無茶な注文をしたこちらのせいですから」


 無茶な注文だった自覚はあったんかい。


「2人とも、私と妻は少しユキナ殿と話すことがある。他に挨拶する予定があるなら、その間に行っていなさい」


「そうさせてもらいます。……ユキナ? パーティーはまだまだ続きますので、十分休んでくださいね?」


「それではユキナ様、私とクラリス様は失礼します」


 そう言って、クラリスとエリザさんは離れていった。

 残ったのは王様夫婦と離れたところにいる護衛だけだ。


「ユキナさん、お疲れ様。それにしても……ふふ、クラリスが言った通りパーティーの主役のような注目度でしたね。うふふ」


「2度とごめんですけど、ね」


 笑い事じゃないんすよ王妃様。


「すまんな。ユキナ殿が想像していた以上に美しく可憐になったことで、娘も少々舞い上がっていたらしい。このような場が非常に苦手なのは分かっていただろうに。普段との違いもあってユキナ殿を知っている城の者にも見とれていた者がいたぞ? 確か……このようなことを『ギャップ萌え』と言うんだったかな」


 ……またオマエか剣二ぃ!

 王族にいらん言葉ばっか覚えさせよって! 王様が『ギャップ萌え』とか言うの違和感しかないんだよ! 子孫に謝れ!


「さて……ここからは例の話といこうか」


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