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アルビノ少女の異世界旅行記 ~私の旅は平穏無事にといかない~  作者: 影薄燕
第1章:レーヴァテイン王国(後編)
41/145

第38話 半年後

・2023/09/04

 一部修正&削除


 私、永瀬雪菜は現在白いローブ・・・・・を揺らしながら疾走していた。

 場所は王都から馬車で1日ほど掛かる森。もっとも、全速力で走って来たから、王都を出てまだ2時間も経っていない。


 森の中を走り回るっていうと、転移初日のことを思い出す。

 あの時の鬼ごっこ(?)の相手は山賊だったけど、今回の相手はもっと速くて危険だ。違いがあるとすれば、私の心に余裕があるかどうか。


「グルゥアアアアアアアアアア!」


 後ろを振り返れば、迫って来るのは大型のヒョウみたいな魔物。ただし、前足の横に名刀かと思うぐらいの刃が飛び出ている。

 【ヘルプ】による紹介がこちら。



『〈スラッシュパンサー〉……推定危険度Aの魔物。高速で移動し、前足に付いた1メートルにも及ぶ刃で獲物を斬り裂く。刃は大抵のモノなら斬ってしまうため特別な加工を施さなくとも、素人が握れるようにしただけで武器になる』



「うっわ。ホント速いなー。時速何キロ出てんだろ? これ、普通出会ったら逃げ切れないぞ。まあ、私に追いつくことできんけど」


 【固有スキル:逃げ足】は伊達じゃない。ただ、今回は山賊の時と違って付かず離れずのギリギリな距離を意識していた。

 【ヘルプ】の説明にもあったように、途中の障害物は何であろうと前足に付いた刃で斬ってしまう。あんなん一般人が喰らったら一瞬で真っ二つだ。恐ろしや恐ろしや。

 そんな出会った瞬間に詰んでしまうような魔物に追われているのに、冷静でいられる私も初期と比べてだんだん人間離れしてきたな……


 ま、出会ったのは偶然だけど、SPの糧にするのは決定事項。AランクならSPもかなり期待できるぜ、グヘヘヘ。

 う~ん、目的地まであと数秒ってところか。

 上手くいけばいいなー。


「お、見えた」


 予想通り誘い込むポイントに到達。

 私は【風系魔法】の応用でほんの数センチだけ地面から足を離した状態で、指定ポイントの上を素早く通り過ぎる。

 そして、私の後ろを追いかけていたスラッシュパンサーは、



――ボゴン!



「グルッ!?」


 事前に土系魔法で用意した落とし穴に掛かった。


 咄嗟に向こう側に行こうとしているけど無理だ。だって、初めての罠だったこともあって念入りに作った結果、直径10メートルの大落とし穴になっちゃたんだもん。自分でもやり過ぎた自覚はある。


「グルゥアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!?」


「おー、落ちてる落ちてる。がんばった甲斐があった」


 落とし穴に嵌めてもすぐ出てきたら意味ないし、土系魔法で限界まで深くしてみました。

 本来嵌めるはず・・・・・・・だった魔物・・・・・相手には過剰だけど、私ったらほら? いつも碌な目に遭わないから念には念を入れて掘りまくった。

 あとは完全に落ちて逃げられなくしたところを上から魔法で一方的に攻撃する作戦、だったんだけど――


「キュㇽゥゥゥゥゥゥゥゥゥ――」


「………………あれ? もしかして深すぎた?」


 そう言えば、完成した時は達成感の方が強かったんで気にしなかったけど、底が見えなかったような……



――ヒュウウウウウウウ……ゴグシャッ!!



「oh……スプラッター」


 【遠見(中)】の効果でスラッシュパンサーが落ちてからずっと目で追っていたけど、体勢が完全に崩れて頭から落下した結果、R18確定映像に。

 具体的には潰れたトマト。今夜のおかずはトマト抜きにしよ。


「……とりあえず、回収するか」


 きちんと後始末で落とし穴は元に戻す予定だったから、スラッシュパンサーがいる底の地面を盛り上げればいいだけだ。

 今のところ他に気になるのは――


Dランク昇格・・・・・・試験用の魔物・・・・・・、まだ残ってるかな?」




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 森から帰って、場所は冒険者ギルドの受付。エミリーさんの表情は引きつっていた。ほれ、0円スマイルはどうした?


「……ユキナさん、Dランク昇格試験対象魔物レイジボアの討伐おめでとうございます。これでユキナさんは晴れてDランク冒険者、一人前いちにんまえの仲間入りです。後程昇格手続きを行いますが、その前に1つお尋ねします」


「何すか?」


それ・・、一体何ですか?」


 エミリーさんが指さすもの。それは私が試験に受かったことを証明するために【アイテムボックス】から取り出したレイジボア(バカでかいイノシシみたいな魔物)の死体――ではなく、予想外の出会いで討伐した魔物の方だ。


「Aランクのスラッシュパンサーですね」


「見れば分かりますよ! こんな特徴的な前足をした魔物なんて他にいないんですから! 私が聞きたいのは、どうしてDランクのレイジボアを討伐しに行ったのに、Aランクの魔物が頭の無い状態であるのかということです!」


「それは、その……成り行き?」


「意味が分かりません」


 だって本当にそうとしか言いようがないんだもん。




 私がこの世界に来て早いもので半年が経った。


 いろいろ飛ばし過ぎかと思うだろうが、そんなこと言ったって例の誘拐事件以降は比較的平和だったし。

 その間に起きたことなんて、精々2回目の王族との話し合いでいくつか魔法具を譲ってもらったこととか、約束通りニコラさんがワンツーマンで魔法を教えてくれたこととか、半年の間にレーヴァテイン王国全体を依頼がてら見て回って、まだ全部じゃないけど村々や数少ない名所に訪れたことぐらい。

 あとはは細々とした日常だ。私のコミュ障も多少改善するぐらい、この世界の人たちと交流を持った。


 残念ながら魔王教団関連では余り進展はない。

 どうやら蛇のオッサンとその一味は少し前に他国で確認されたことから、王都にはいないことが判明したらしいけど、最大の問題である“雷の仮面”はまだ王都にいる疑いがあるし、裏切り者も未だ分からずじまい。


 暇を見つけてはクラリスに会いに城へ私(と時々リリィ)が遊びに行ったりするので、この半年もの間は安全の面からも城の外に出ることが叶わないクラリスも比較的元気だそうだった。

 でもやっぱり、今でも魔王教団に自分が狙われているかもしれないという重圧はクラリスに大きく圧し掛かっているらしく、私やリリィが遊びに来ない日は人目に付きにくい場所で暗い顔をしているとは護衛騎士であるエリザさん談。


 ――“雷の仮面”を倒して裏切り者を見つけ出すしか、クラリスが本当の意味で笑顔を浮かべて生活することはできないか……


 そんな考えになってから私は“雷の仮面”と対決することを意識し、持ち前のチート能力も存分に使って強化を図っていった。


 今日までに成長した私のステータスがこちら。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 ◦ユキナ=ナガセ(永瀬雪菜) ◦14歳

 ◦発行:レーヴァテイン王国  ◦Eランク冒険者


〔称号〕

 異世界転移者、神の加護を持つ者、永遠たる白の少女、幸運が仕事しない哀れな少女、聖女、白の殺戮者ホワイトキラー


〔スキル〕

・EXスキル:ヘルプ、SPマスター、SP取得、不老

・固有スキル:生存本能、逃げ足、幸運(大)、白の加護

・魔法スキル:炎系魔法LV.6、水系魔法LV.2、風系魔法LV.6、土系魔法LV.4、光系魔法LV.2、時空系魔法LV.2

・ユニークスキル:防御力上昇(極大)、状態異常完全耐性、闇系魔法無効、ハラスメント・カース、アンロック、バリアー、魔力最大値増加(フェイズ3)

・スキル:アイテムボックス(大)、遠見(中)、探知(大)、演算処理、聴覚強化、思考加速、耳栓(大)、精神耐性(中)、危機察知、直感、魔力制御、想像反映(小)、鉄人料理人、風系魔法耐性(大)攻撃力上昇LV.4、速度上昇LV.5


〔装備〕

 魔力感知ペンダント、浮遊リング、賢者のローブ、神鳥ヴァルクスの長杖、炎獄のハルバード

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 高位の風系魔法の使い手である“雷の仮面”との戦闘を意識して【風系魔法耐性(大)】を取得した。向こうの【ユニークスキル:ストック】の効果で威力の高い雷の魔法を連続で喰らっても大丈夫なように。すぐに戦えるように。


 確実性を考慮して本当だったら【闇系魔法無効】と類似スキルである【風系魔法無効】が欲しかったんだけど……必要なSPの量を見て目が点になった。

 もうね? 桁が違うんだよ。桁が。

 何だよ必要SPが500SPって。この半年、冒険者として活動して魔物とあらば見つけ次第狩って、ようやくここまで漕ぎ着けたんだぞ? ギルドから「魔物狩りすぎて他の冒険者が……」とやんわり注意受けるほどだぞ?

 これ以上無茶すれば私の体が壊れるわ。


 嫌だぞせっかく異世界来たのに、死因が過労とか。

 ぶっちゃけ取らせる気ねーだろって、そういうこと。


 それでもできる準備はしてきたつもり。

 この半年の間で魔法をメインにニコラさん指導の下、基礎から応用まで教えてもらい、まだ見ぬ“雷の仮面”を相手にした場合に備えて対人戦にも力を入れた。まだまだ不安は残るけど、半年前より確実に強くなっている。


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