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アルビノ少女の異世界旅行記 ~私の旅は平穏無事にといかない~  作者: 影薄燕
第1章:レーヴァテイン王国(後編)
34/145

第31話 王族との話し合い

・2023/07/28

 一部修正。


「ふふ、呼び捨てできるお友達なんて羨ましいわ」


「良かったですね、クラリス姉様」


「そうだね。さて、クラリスに新たな友人ができたこと、何より無事に帰って来てくれたことを祝って夕食にしようじゃないか。これ以上話していたら、せっかく料理人が作ってくれた料理が冷めてしまう。続きは食べながら話そう」


 クラリスの兄妹たちは嬉しそうな目で私と晴れて友達になったクラリスを見ながら、「もうお腹減ったよ」と思っているだろう心の内を隠しつつ用意された豪華な夕食を勧めてきた。


 確かに我慢するのも限界みたいだ。……リリィが。


 何というか、テレビとかで見た大好きなエサを前にしてご主人様から「待て」と言われているので待っているが、内心が尻尾に表われているせいで「まだ? まだ? ねえねえ早く!」と思っているのが隠せていないワンコ状態だ。

 無いはずの尻尾がリリィのお尻辺りに見えている。

 千切れんばかりにブンブンブンブン横に振られている。


 最近じゃ、もう何でも可愛く見えるから困ったもんだぜ。

 日本にいたら、家に来るたびにお小遣いあげたい。


「それでは、いつもの食事にユキナ殿とリリィ殿を加えて――」


「「「「「いただきます」」」」」「いっただっきまーす!」


 速攻で食事の挨拶を終えて料理の数々に向き合う。

 さーって、飯だ飯だ♪ しかも高級なやつ!


「――え?」「は?」「うむ?」「あれ?」「まあ」「――っ!?」


 ? 誰か絶句したような感じがしたけど……気のせいか。

 自己紹介の前に、クラリスがマナーとか考えなくていいと言ってくれたから安心して食べることができる。もちろん最低限キレイに食べることは忘れない。そのぐらい私にだってできる!……はず!


「わぁあああ~。このパン美味しい~♪」


 リリィの方を向けば、パンを食べてほっぺをハムスターみたいに膨らませていた。両手で持ったパンがヒマワリの種に見えてくる。


 どれ、私もパンを一口。ガブリと。


「!? これは……! いつも食べている白パンとは違う、ふんわり柔らかく微かに甘みがあるパンだと!? 出来立ての美味さを感じる!」


 ヤバい! ウマい!  日本にあるパンと何ら遜色がない。むしろ出来立てで焼き立ての分、今まで食べたどのパンより美味しく思える。


「もぐもぐ……ん? どしたのクラリス?」


 2個目のパンを食べようとしてようやく気付いた。

 どうにも私とリリィ以外の食べる音が聞こえないと思ったら、王族の皆さんが私のこと凝視していた。


「あの……もしかして私、何かしました?」


 嫌な汗がどんどん体中から出てくる。手が、足が震える!

 お願い誰か何か言って! なんで王族全員そんな反応なん!? 気付かないうちに私、地雷踏んじゃったの?


「い、いえ。そんなことはありませんよ?」


 絶対何かあるって目ですよクラリス。

 友達になって数分で隠し事っすか……




 そのあとは王族の人たちも食べ始めて、豪華な料理を堪能した。美味しいはやっぱ正義だね。


「夕食を楽しんでもらえたようで何よりだ。ではそろそろ、ユキナ殿とリリィ殿には今日起こった出来事について詳しく話してもらいたいと思う」


 メインディッシュのステーキを食べ終えた辺りで王様が切り出してきた。

今日起こったことっていうと……


「クラリスと牢屋で会うまでの流れですか」


「そうだ。おおよその流れは知っているが、どのような事情で捕まったのか、どのようにして脱出できたかを聞きたいのだ。正直……クラリスと会ってからのことを本人に聞いても、イマイチ分からん部分もあってな」


 そりゃ気になるか。実の娘、しかも本物の王女が魔王教団なんて訳分からん組織に計画的な犯行で狙われたんだから。


「個人的なこと以外であれば、一通り全部話しますが」


「かまわん。それで、何があったのだ?」


 それから私はだらだらと話が長くなり過ぎないように気を付けながら、知っている限りのことを王族の人たちに話した。

 今日はリリィと一緒に王都を見て回っていたこと。休憩中にお手洗いに行ったリリィが帰ってこないことを不審に思い、スキルを使用して探したこと。誘拐犯たちを見つけドロップキックを叩き込み、無事リリィの救出に成功したと思ったら、蛇模様の仮面を付けたオッサンにリリィを人質に取られたこと。誘拐は下っ端が勝手にしたことで、全部終わったら無事に帰してやると言われ、しばらくして入れられた牢屋でクラリスと会ったこと。


 ……こうやってまとめると、マジでどうしてこうなったと言いたくなるぐらい変な偶然が重なっているな。


「あの噂に聞く“蛇の仮面”までいたのですか……。確か奴は無関係な人間が巻き込まれることを嫌うという報告書がありましたね。あくまでも不確かな情報だと思っていましたが、魔王教団にもそのような者がいるとは。向こうも完全に1枚岩ではないということか?」


 ジュリオ様が顎に手を当てながら考え込む。


 あの蛇のオッサン、魔王教団の中でも異端らしいな。私自身、どうにも悪人には見えなかった。直属の部下も礼儀がなっていたし、何で魔王教団にいるのか不思議でならない。


「――あ! そうだ、王様。私、閉じ込められた建物の下の階にいた下っ端ぽい連中の顔、何人かは覚えてますよ?」


 あいつら仮面付けていなかったから、普通に素顔だった。

 特徴から似顔絵とか書けば何か分かりません?と提案してみたけど、王族の反応は良くない。

 え? また変なこと言った? この世界、似顔絵描いての捜査とかないの? 指名手配犯とかどうしてるんよ?


 私が何を疑問に思っているのか分かったみたいで、クラリスが答えてくれた。


「結論から言えば、意味がないから……です」


「意味がない? それって……」


「以前お話ししたように魔王教団には何人もの幹部がおり、数少ない判明している幹部は片手で数えられるほどしかいないんです。その判明している中でも手を焼いている幹部が“顔の仮面”とわたくしたちが呼ぶ者なのです」


 蛇、雷と続いて、3人目の幹部は“顔様”ってところか。


「“顔の仮面”は【ユニークスキル:変幻自在の顔フェイス・チェンジ】を持つ幹部で、自分や他人の顔を全く別の顔に変化させることが可能なのです。ですから魔王教団の中でも下の者たちは作戦のたびに顔を変えるので、人相書きが意味を為さない状態に……」


 な、なんだその怪盗が喉から手が出るほど欲しがりそうなスキル!?


「このユニークスキルの厄介な点は、顔を変えれば声や目・髪の色さえも変えられることです。唯一の救いは、体格まで変えることが出来ない点ですね。それに同じ体格の者が要人に化けようにも、本人かどうかを調べる魔道具が少ないながらもあるので、重要人物がいるような公式の場に出ると即バレてしまいます」


 それって私が初めて王都に来た時に犯罪者かどうか調べた魔道具、アレと似たようなものがあるってことかな?


「でも、怖いな。親しい人物だと思って近づいたら暗殺者でしたとか……シャレにならないよ。疑心暗鬼に陥る人もいそうだし」


「ええ。ですから魔王教団の中でも“顔の仮面”はもっとも多くの懸賞金を掛けられているのです。今では世界各国の要人たちがお金を出し合ったことで、生死を問わず、捕まえれば一生豪遊して暮らせる額にまで膨れ上がりました」


「でも、顔を自在に変えられるんじゃ普通の方法だと無理じゃない? 本人も警戒しているだろうから表に出ないと思うよ?」


「……ですよね」


 う~ん、顔を変えるユニークスキルねえ。頻繁に自分の顔を変えてたら、本来の顔とか忘れないかな……。何かあるたびに顔を変えて、言葉使いや仕草も変えて、立場を変えて……自分自身を気付かないうちに見失いそう。

 私の勘だけど、たぶん“顔の仮面”や魔王教団の下っ端連中は心がかなり不安定じゃないかな? 少しだけかわいそうに思えてきた。


「奴らの目的はハッキリしないが、娘が狙われた以上、徹底的に王都中を調査することにした。今も騎士たちが駆け回っているだろう。お2人には悪いが、念のため3日程は城で過ごしてもらいたい。安全のためにも、な」


 3日も城生活!? いや、分かりますけどね。クラリスだけじゃなく私とリリィも狙われているだろうことぐらい。

 アイツらにとっちゃ、外したわけでもないのにスキルを封じる枷だけが残っていて、牢屋に閉じ込めていた3人が突然姿を消したんだから。


 どのタイミングで気付いたかまでは分からないけど、血眼ちまなこになって探したに違いない。けど、その時にはもうクラリスの身は騎士団が保護したあとだった。私とリリィも一緒に保護された。だったら、事態が落ち着くまで少しでも安全な場所にいるべきだ。

 王族が保護してくれるとか1番頼りになる。


 それに、すぐに事態も収まるかもしれない。

王都にいる魔王教団の情報収集能力がどの程度かによって変わるが、騎士たちがもう動いたならうまくいけば一網打尽にできるかも?


 ――幹部以外は、だけど。


「ユキナ、もしかして幹部以外の魔王教団を一網打尽にできるチャンスかもしれない、と思っていませんか?」


 正解です。クラリスってエスパー?


「残念だが、それは半々と言ったところだ。無論、僅かでも可能性があるなら徹底的に調べつくすがな」


 どういうことっすか王様?


「今回のクラリス誘拐の件は明らかに計画的な犯行であった。つまり、それだけクラリスの予定を把握できる立場にいる者が後ろにいる」


「……もしかして?」


「裏切り者がいる。貴族に魔王教団と繋がっている者が」


「……マジっすかー」


 味方だと思っている中に敵と繋がっている真っ黒な貴族がいるとか、すんごいめんどくさいパターンじゃん。


 裏切り者が誰かすぐ判明すれば良いけど……難しいよな。

 私は調査とか推理とか苦手だし、探偵役の人が欲しいところ。

 おーい、誰かー。体は子供で頭脳は大人の疫病神やくびょうがみ系名探偵か、2人で1人のラ〇ダーな探偵ズを呼んでくれー。無許可でお爺さんの名前を勝手に賭ける系の探偵だっていいぞー。

 いないっすかー? ですよねー。はあぁ……


「分かりました。3日程お世話になります」


「ユキナお姉さん。お父さんとお母さんには会えないの?」


「2、3日はね。ちょっとの辛抱だよ」


 デザートを食べながら今後について考える。


(今日は自分の不甲斐無さを嫌でも感じることになった。スキルの効果で不老だし、もっと自由気ままにのんびりと過ごしつつ、強くなって、旅行の準備を整えようと思っていた。だけど魔王教団なんてものにクラリスが狙われている以上、もう他人事だと見過ごすことなんてできやしない。……初めてできた友達なんだ。そんな訳の分からない連中の好きにさせて堪るか)


 まずは大量のSPを取得するために、魔物を狩って狩って狩りまくる。

 城から出たらギルドで依頼受けまくろう。そうしよう。


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