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アルビノ少女の異世界旅行記 ~私の旅は平穏無事にといかない~  作者: 影薄燕
第1章:レーヴァテイン王国(後編)
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第22話 王都観光

 第1章後半スタート。


・2023/06/28

 後半大幅修正。


 拝啓、古本屋の爺さんへ。

 今になって名前どころか名字すら知らなかったことに気付き、非常に気まずくなってしまった永瀬雪菜です。

 幼い日より、実の両親ですら微妙だった愛情をくれたことには感謝しかありません。できれば長生きしてほしいです。


 さて、あなたは以前「人生とは驚きの連続だ。自分の行動次第でいくらでも変えられる。それこそ、可能性の話だけなら雪菜ちゃんがどこかの国の王様の奥さんになることだってあるんだよ?」と言っていましたね。


 正直当時は「そもそも王族の人と関わるとかねーです」とキッパリ言い切りましたが……

 前言撤回します。

 現代日本ならともかく、異世界で貴族・王族と関わる確率がひっじょ~~~に高いことを現在進行形で思い知りました。


「ユキナお姉さん、どれも美味しそうだね!」


「ウン。ソウダネー。ゴウカダナー」


 時刻は夜。

 本来だったらとっくに家に帰って、夕食を作るリサさんの手伝いをしたり、リリィと何気ない会話を楽しんでいるはずの時間帯。


 私とリリィの目の前には豪華なディナーが。


 昨日ギランさんに奢ってもらった食事とはランクが違う。

 あっちは良くも悪くも一般人向け。日本にもあったような酒のつまみから、この世界独自のものまで様々。

 私にとっちゃ、見るだけでも楽しめるもの。


 だがしかし、眼前にある見た目にも拘った料理の数々を見ると、“美味しそう”より“マナー分からん。お助け”といった感情が先にくる。


 私の心の苦悩が伝わったのか、何も気後れしていない右側のリリィ――ではなく、左側に座っている美少女の方からクスクスと笑いが。


「ご安心ください。今夜は家族と共に頂く私的な夕食ですから。マナーなど気にせずに食べてくださいませ。おかわりもありますよ?」


「いや……でも、ですね?」


「そんなに緊張しないでください。ユキナ様はわたくしの恩人・・なのですから、遠慮などする必要はどこにもありませんよ? もちろん、リリィ様も。御恩ある方に最低限のお礼もできなければ王族・・の恥となってしまいます」


「………………はい」


 私と同じぐらいの年の美少女はそう言って微笑む。

 目を見ればそれが本心から来るものだと理解できる。

 綺麗としか言いようがない艶のある黒い髪・・・をサラッとかき上げる動作1つにしても、育ちの良さが分かる。



 当然だわな。

 だって、この国の王女様だし……



「どうしてこうなった……」


 思い出すのは数時間前。

 リリィとの王都観光中に起こった、予想外の出来事に関して。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「この串焼きウマいな……何の肉だろ?」


「ユキナお姉さん、私の分もよかったの?」


「当然。お金の心配ならしないでいいよ。今の私、金持ちだし」


 今日は待ちに待った王都観光。

 本来ならもう少しあとの予定だったんだけど、数日前のマッドバッド襲撃事件でまとまったお金が手に入ったから予定を早めた。


 大金を持ち歩いているって言うと日本じゃ恐ろしくてできないけど(治安悪い海外は論外)、超便利スキルである【アイテムボックス】がその問題を解決した。歩く四次元ポケットと化しているからね私。生き物以外ならほぼ無制限に収納できるから、盗まれる心配0%。スリ泣かせにも程がある。


 何と私の所持金、日本円にして100万円相当。そこから諸々差し引いて自由に使えるお金を計算すると、約半分の50万円。

 屋台の店程度で金欠になる心配は皆無!

 なので目についた面白そうな食べ物は見つけ次第買っているし、その中でリリィが興味を引くものがあれば一緒に買う。


 人生で1度はお金のこと何も考えずに買い食いしてみたかったから、やってみたかったことが1つ達成された。

 この調子で他も消費しよう。そうしよう。


 さて、ここで王都について改めておさらいだ。


 私が今いるのは大陸の中央にある最も大きな国、レーヴァテイン王国。そんな王国の王族たちが住む国の中心地である王都だ。

 魔物対策として高く頑丈な壁で覆われ、東西南北にそれぞれ1つずつ巨大な門が存在する。


 隣接する全ての国と友好関係にあることから貿易も盛んで、よっぽど特殊な物でもない限りこの国で大抵の物は手に入る。


 何よりも治安がいい。

 それというのも法律がきちんと定められ、その罪の重さで与えられる罰も国民全員が納得する者だからだ。

 常に兵士が巡回し、市民からの情報で怪しい場所があればすぐに捜査。違法な取引をしようものなら現行犯逮捕。すぐにブタ箱行きである。


 さらに貴族たちが住んでいる区画と平民が住んでいる区画の間辺りには学園があり、そこでは勉強以外に体育や美術、そして一般常識から道徳まで教えているというのだから驚きだ。

 さすがに全国民が1度は学園に通うということもなく、貴族全員と商人などの一部お金持ちが生徒となる。例外は1年に1度開催される一般入試向けの難問満載テストに高得点で合格した人だ。この人たちは奨学金で学園に通うことができ、学園でも良い成績を残せば一気に勝ち組人生となる。


 この辺の基本情報を知った時、私は思った。



 ――何か……妙に日本ぽくね?



 気付いた瞬間、それまで組み合さなかったパズルが不思議と繋がる。

 思えば料理にしてもそうだ。異世界特有のモノはともかく、それ以外の大半で私の知っている料理が多い。法律や学園――学校制度も日本のそれ近く、その他の細かい部分で元の世界を感じさせるものがたくさんある。

 異世界の国っていうより、日本と深く文化交流した外国みたいな。


(そういえば、あの神……)


 事前説明の時、1つの世界に1人の元地球人ってルールがあると言ってたけど……それって1度きりなのか? それともその時代・・・・でなのか?

 どちらかで意味が大分変ってくるんだけど。


(だとすると、この国……。今度時間がある時にでも調べようかな? 図書館の本にあればいいんだけど……)


 やっぱり1度気になると、解決するまでスッキリしない。


「――さん。ユキナお姉さん!」


「ふぇっ!?」


「もー! さっきから呼んでいるのにずっと上の空なんだから」


 リリィがほっぺたをプックリ膨らませて怒ってる。

 何この幼女。可愛すぎない?

 膨らんだ所、指で突っついちゃダメっすか?


「ごめんごめん。それで、どうしたの?」


「あそこでね、運試しやってるの。あのお店の商品を買うと試せてー、当たりだったら豪華賞品だって!」


「ほほう?」


 それは興味ありますな。

 異世界の運試しってどんなものだろ?


「いらっしゃい! 只今、期間限定で運試しを開催しているよ! お嬢さんたちも良ければ軽い気持ちで試してみないかい?」


 笑顔で迎え入れてくれた店員。お店の中を見渡せば、ベッドやタンスなんかの大きな物から化粧入れや本立てのような小道具まであった。

 この中から大銀貨1枚分以上の買い物ごとに、商店街とかでよく見かけるガラガラを回せるシステムらしい。


 景品の一覧を見る。

 3等はすでに誰かが当てたのかバツ印が付いており、1等は大金貨1枚分の買い物券。2等は新作のベッド一式だった。

 4等以下は特に興味を持つモノはない。


「じゃあ、ちょっと見せてもらいますね」


「ええ。どうぞどうぞ」


 リリィと手を繋いでお店の中を見る。

 かなり広く、1階は大きな物で、2階は小さな物を扱っていた。手入れもよく行き届いているし、日本で普通に売られても分かんないだろうな。

 ただし値段はピンキリだ。

 さらに全体的に見て安物よりお値段がよろしい物の方が多い。ここはそういう店ってだけの話だけど。


 最終的に大銀貨1枚ちょっとの置物を買うことにした。

 台座の上にいる少女がキレイなオレンジ色の宝石を抱きかかえた、私の両手で持てる大きさの品だ。台座と少女は白一色なので、より宝石の良さを引き出している。宝石自体は特別高いものじゃないけど、何でも“決意”を象徴しているとか。


 私にピッタリだね。


 ぶっちゃけ直感的に気に入っただけなんだけど。


 では早速運試しを――というところで聞き覚えのある声が。


「にゃーーー! またハズレだー!」


「……チェルシーパイセン、何してんすか?」


「ありゃ? ユキナじゃん。そっちこそどうしたのさ?」


 そこにいたのは、雑用依頼で1日働くことになった食事処で出会ったネコ獣人のチェルシーさん。今日はプライベートなのかヘソ出しスタイルの私服だった。意外と若者向けの服着るんだな。


「私は世話になってる家の娘さんと王都観光の真っ最中ですよ」


「リリィです。今年で10歳になります」


「おやおや、こんな小さな子とデートなんて隅に置けないねー」


 デート、だと……!

 いや確かに、男女間ではないけど一緒に楽しんで王都を回るならデートと言えなくもないのか?

 ここに来て衝撃の真実に気付いちまったぜ。


「私は家具を買いに来たのもあるんだけど、どうしても2等の商品が欲しくて」


「2等……新作のベッド一式っすか?」


「そう! 私の家って兄弟が多いから1つのベッドを数人で使ったりして、やんちゃだった頃に酷使したからガタが出始めてさ。兄弟はみんな家から出ちゃったんで私が使ってるの。そのガタがきたやつ。新しく買おうかと思ったけど気に入ったのが見つからなくて諦めたところで――」


「2等のベッドが好みドンピシャだったわけですか。ただし手に入らず」


「3回チャンスですでに2回ハズレでした……」


 ガックリと肩を落とすチェルシーさん。

 あれか? 気に入った枕じゃないと眠れない的な。それとも人生の3分の1はベッドで過ごすんだから妥協できないとかの方か。


「3回目しないんすか?」


「運が回ってこない気がする。うー、ユキナ代わりに回してよー」


「私が? いやいいですけど……」


 確かに【固有スキル:幸運(大)】は持っているけど、今のところ仕事してるか怪しいぞ? こっちの世界来てからピンチばっかだもん。

 とはいえ、任されたからには結果を出したい。

 おらっ、ちゃんと働けよ【幸運(大)】。


 気合いを入れ、チェルシーさんに代わりガラガラ回した結果――



「2等大当たり~~~!!」



 普通に当てちゃったよ。

 え? マジで?


「ユキナーーー!!」


 歓喜に震えたチェルシーさんが抱きついてきた。

 ちょっ、頬をスリスリしないでください!

 ネコか!? ネコだったわ!


 まぁ、役得だと思えばいいか。


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