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アルビノ少女の異世界旅行記 ~私の旅は平穏無事にといかない~  作者: 影薄燕
第1章:レーヴァテイン王国(前編)
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第19話 VSマッドバッド(前編)


「……嬢ちゃん。【風系魔法】を使える魔力はまだあるか?」


 こっちを見ずにギランさんが聞いてくる。

 魔力は……うん。まだまだ余裕。


「問題ありません」


「そうか。……いいか嬢ちゃん。この状況はかなりマズい。本来なら嬢ちゃんを守りつつ逃げるべきだろうが、資料にあったマッドバッドの素早さを考えるといい判断とはいかねえ。この場で奴を倒すしか道はない」


「はい」


「協力してくれるか?」


「……もちろんです」


 【ヘルプ】によれば“動きが素早い”とのことなので、全員で逃げるのはかなーり難しい。私だけなら【逃げ足】の効果もあって確実に逃げられるだろうけど、残念ながら倒れているクラウドさんとハルさん、そしてここを死地と定めてそうなギランさんを見捨てるのは無理な話。


 ギランさんと一緒に逃げるという選択肢も無いわけではないけど、その場合は結局倒れた2人を囮にして自分たちだけ逃げるということになる。

 そんな胸くそ展開は望んでいないので却下。


 だから戦う。

 不幸中の幸いにも相手はBランクの魔物。絶対に勝てない、という程でもない。ギランさんとの共闘は初めてだけど、変にしゃしゃり出ずに前衛・後衛に別れて戦えば勝機だってある。


 正直言うと恐い。

 手がちょっと震えてるし。【幸運(大)】が仕事サボっているとしか思えない状況に憤りも感じてる。


 でも――


「よし! 行くぞ嬢ちゃん! オレらは連係なんかしたことねえから、すぐにできる作戦だ。嬢ちゃんは風の刃で牽制してくれ! その隙にオレが攻撃力のある一撃を叩き込むようにする! 失敗を恐れずに……やれ!!」


 やらなきゃいけない時は、本気でやってやる!


「『ウィンドカッター』『ウィンドカッター』『ウィンドカッター』!」


 1つは本気で当てる気で。残りは牽制の意味で魔法を放つ。

 こんな状況だからか【生存本能】の効果が現れたみたいで、自分で意識していたよりも風の刃は大きく、速かった。


「キ、キイィ!」


 それを避けるマッドバッド。

 畜生め! ホンマにすばしっこいな!


 中途半端に距離が離れているのも原因だけど、あのでかさで牽制2発本気1発の私の魔法を避けやがった!

 絶対に何かファンタジー要素が働いている動きだったぞ!?


「『ウィンドカッター』! 『ウィンドカッター』!」


 それでも牽制はやめない。

 あの超音波攻撃をされたら終わりなのは知っているから。


 ……あれ? そういやギランさんはどうやって攻撃する気だ?

 武器は戦槌だし、相手は宙を飛び回っているけど?


 そんなことを考えていたら、私の牽制の魔法を見ながら気を窺っていたらしいギランさんがついに動き出した。


「うおぉおおおお! 『戦技・大地激怒』!」


 ギランさんが自分の身長と同じぐらいの戦槌を地面に思いっきり振り下ろす。地面がひび割れたのと同時にそれ・・は出現した。



――ズゴオオオオオオオオオオオオッ!!



「キイィッ!?」


 マッドバッドの真下から上に突き上げるように大地の柱が出現する。

 音からも分かるような勢いで10メートル以上の柱が。

 タイミングは良かったけど、ギリギリのところで回避されてしまった。


 それに舌打ちするギランさん。


「――っち!」


 ………………

 なんじゃありゃああああああああ!?

 予想外過ぎる攻撃方法きたよこれ!


 あ! そういや本で見たっけ。

 魔法使いタイプじゃない人でも、それぞれの武器に合った特殊な技を魔力や気力を消費して使えるようになるというスキル。

 それが【戦技系スキル】。

 今の所、私には関係ないなと読み飛ばしていたけど……


「――って、そうじゃない! 牽制牽制」


 いっけね! ビックリしている場合じゃなかった。


 そうこうしている内に、またもギランさんの攻撃がマッドバッドを襲う。

 ……予想外過ぎる方法で。


「『戦技・波動打』!」


 今度は何だ!?と見てたら、野球みたいなポーズで戦槌を構える。

 マッドバッドへ向かって何もない空間を豪快フルスイング! 空間が僅かに揺らいだように見えた途端、マッドバッドが大きく回避行動を取った。


 何が起こったかは揺らいだ空間がマッドバッドの後ろにあった木の上部分に当たった瞬間に判明した。

 衝撃音が響き、メキメキと音を立てて空間の揺らぎが当たったと思わしき部分から上の木が下に落ちる。


 ……あー、あれってたぶんスキル名から察するに、衝撃波の塊を戦槌で相手にふっ飛ばす技なんだろうね。

 私も今後、対人戦をする機会があるなら気を付けておこう。


 にしても近接戦だけじゃなくて中距離・遠距離の攻撃手段もあるとか、さすがとしか言いようがないな。ギランさん、オッサンと呼ばれる見た目でCランク冒険者なのにギルドでの評価高そうって思っていたけど、Bランク冒険者に限りなく近い実力か、訳あってBランクに昇格してないだけなんじゃね?


「キイイイイ……キッ!」


「――危なっ!? 『ウィンドカッター』!」


 魔法を連発する私に気が触ったのか、イラついたような表情を見せたマッドバッド。そして襲い掛かってくる風の刃。

 咄嗟に魔法で相殺させたけど心臓に悪い。

 そんな攻撃をずっと相手に出し続ける私も大概だけど。


「オラァッ!」


「あぁもう! ちょこまかと!」


「キキィッ!」


 今の所、戦況としては攻撃が1発も当たんない私らが不利。だけど連続攻撃によってマッドバッドの方も滅多に攻撃できない状態が続いている。

 私も戦況が動かなくてヤキモキしてきた。


 他の【魔法系スキル】も試してみたいけど怖いんだよな。

 私自身慣れていないのもあるけど、【炎系魔法】は万一避けられたら森に燃え移って余計にピンチな状況になっちゃうし、【水系魔法】の攻撃でできそうな『スプラッシュ』ってのは直線的だし、【土系魔法】の重力操作はいけそうだけど近づかなきゃ無理だし、【光系魔法】は練習すらしてないから余計なことになるかもしれない。


 そんな心配を余所に、事態はちょっと良い方向へ。


 何度目かになるギランさんの攻撃がマッドバッドを捉えてきたのだ。

 長年の勘なのか、私の牽制に対してタイミングがどんどん合ってきているし、マッドバッドの動きにも慣れてきているみたい。


 だからだろうかね?

 うっかり心の中で「勝てるか?」と思っちゃった。

 物語じゃ絶対にしたらいけないフラグなのに……


「キイ……キィッ!」


 マッドバッドが急に方向転換した。

 もしかして諦めて帰ってくれる?


「まさか……? クソッ!」


「え? ギランさん!?」


 突然マッドバッドを追いかけ始めた!

 相手が逃げるなら深追いはやめようぜ!って本来だったら言うべきだったんだろうけど……


 甘かったとしか言いようがない。

 私も追随して、魔法を撃ちまくっていたら結果は違ったはずだ。

 知能が高い魔物といってもそこまでだとは思いもしなかった。


 マッドバッドが翼から風の刃で攻撃した。


 ――倒れたままのクラウドさんとハルさんを。


「危ねえ!」


 咄嗟に割り込んだギランさんが戦槌で攻撃を防いだ。

 だけど……だけど!


「ダメ! ギランさん!」


 すぐにマッドバッドに向かって魔法を放つけど間に合わない。


「キィイイイイイイイイイイイ――」


「ぐっ!? ――ぐわっ!」


 マッドバッドの超音波攻撃が2人を庇ったギランさんを襲い、一瞬だけ踏ん張っていたものの、先の2人と同じく耳から血を噴き出して倒れた。


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