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アルビノ少女の異世界旅行記 ~私の旅は平穏無事にといかない~  作者: 影薄燕
第1章:レーヴァテイン王国(前編)
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第16話 (保護者付きで)いざ魔物討伐へ!

・2023/05/26

 一部修正。


 講義中ナウ。


「――というわけで、基本的に夜の見張り番は2~3人で行うことになります。1人が突然お手洗いに行きたくなったとしても、短時間であれば見張りに影響は出にくく、もしくは敵の攻撃で負傷した時に他に見張りがいれば、警報用の笛を即座に吹いて眠っている仲間に注意を呼び掛けることができるからです」


「ローテーションやコンビはどのように決めるんですか?」


「その時の状況や夜を過ごす人たちによって違ってきます。疲れが溜まっている人を最初の見張りに持ってきて交代したあとにグッスリ眠れるよう取りはかったり、バランスを考えて初心者と熟練者の2人で見張りをしたり……」


 今日はついに魔物討伐の日だ。

 ギルドのランクアップ試験ともいう。

 今回の試験で魔物3種類を倒せば晴れてFランクからEランク――ド素人から初心者になることができる。


 試験の予約を取った時に知ったけど、試験のための監督者(保護者ともいう)を3人ほど選別したらいざ魔物討伐!――とはいかない。

 何と試験は2日に渡って行われるのだ。


 1日目は講義と野営の練習。

 お昼を食べ終わったくらいの時間になったら初心者に必要な座学の講義を受けなければならない。

 意外と本格的だったな。

 学校の授業とか連想して懐かしくなる。


 Fランクは何か困ったことがあれば周りが助けてくれるけど、それは冒険者としては仮免だから。つまり、一般人と変わらないから。

 Eランクになったら、登録の時に言われた“自己責任”というのが大きく感じられるようになる。

 ギルドの冒険者は一部のバカな例外を除けば仲間意識が高い。だけど、いつまでもおんぶにだっこというわけにもいかない。


 昨日の時点でカイルさんに言われたけど、FランクからEランクにランクアップするのは特別な意味がある。


 それは――本当の意味で冒険者としての責任を持つこと。

 地球で言ったらバイトから正社員になるようなもの。


 冒険者になったからといって誰でも成功するとは限らない。むしろ、途中で挫折する人だってかなりの人数いる。


 採取系や雑用系の依頼ばかりではお金は一向に溜まらない。だからこそ冒険者は魔物の討伐依頼を多く受ける。1回の依頼で貰えるお金の桁が違ってくるから。ランクが上の実力が伴った冒険者であれば、1度の魔物討伐で1ヶ月は余裕で暮らせる程の報酬を貰える人だっている。もちろん仲間がいれば報酬は割り勘だから全員がそうでもないけど。


 でも、魔物と戦えず依頼が失敗ばかりの冒険者は当然お金が懐に入らない。その日食べるものにも困る。

 防具や武器だって定期的なメンテナンスは必要だし、破損したら買い直さなければならない。壊れかけの武器で無理して戦うなんて命を粗末にしているのと変わりない。だって魔物との戦いは殺すか殺されるか。武器が壊れたから逃がしてあげるなんて考え魔物にはない。

 結果として――命を失う。


 私だってチート能力を貰っていなかったら、冒険者になろうとは思わなかっただろうね。あ、そもそも異世界に行こうとも思わんか。

 大成する確率が高くて、世界中を見て回ることも不可能じゃないと思ったからこそ、あの神からの提案を受け入れたわけだし。


 まあとにかく、そういう危険と隣り合わせだからこそ最初の内に色々教えこもうとギルドも考えたわけだ。

 講義の始めに聞いたけど、ずっと昔はFランクが無かったらしい。

 初っ端からEランク。冒険者のランクアップ条件もフワッとしたもの。

 助けてくれる冒険者仲間? 知り合い頼れ。あとは知らん。

 そんなんだったから死者が絶えず、ギルド内ももっと殺伐とした雰囲気だったと過去のことをまとめた書物に残されているとか。


 ギルドの改革が始まった当初はうまくいかなかったけど、現在は初心者が生き残る確率が昔と比べて雲泥の差になった。

 冒険者を途中でやめる人や不幸にも魔物に殺される冒険者は今も昔もいるけど、仲間意識が強くなったことでそちらも減った。


 Eランクになれば、そういう大きな枠組みの中に入っていく。将来名を残すような一流の冒険者になれるか、道半ばで朽ちるかは自分次第。


 ま、私は程々に活躍して食うに困らなければいいと思ってんで、最高ランクのSランク冒険者なんざ目指さん。

 今のところの予定としてはBランクくらいがちょうどいいかな?

 低すぎず高すぎずのちょうど良さそうなランク。

 今の私じゃ話にならないだろうけど、将来的な目標点としては妥当だろ。



 閑話休題。



 う~ん、と伸びしながら講義用の部屋から出る。


 予定じゃ、あと1時間したら監督役という名の保護者数名を引き連れて初心者向けの森まで移動。野営の練習や冒険者向けの食事なんかを経験して一晩明かす。翌日に私が指定された魔物3種類を見事討伐出来たらそこで終了。晴れて私はEランクに昇格する。


 1時間はヒマだし、ギルドの中にあるお店の商品とか見ながら時間を潰すか。


 そう思って冒険者たちが集まっているエントランスまで来たんだけど……やけに注目されてる私。

 なーんでだろーなー?


「おい。あの子……」


「ああ。今日明日でランクアップ試験受けるって話のユキナって子だ。それよりその話本当なのかよ?」


「間違えないらしいわ。昨日、討伐依頼帰りの冒険者たちが風に流されて空を漂っているあの子を見つけたって」


「しかも半べそ状態だったらしいぞ」


「たまたま見かけた冒険者の中に風系魔法が得意な奴がいて救出したらしいんだ。一体どうして風に流されて飛んでいたのか――というより、どうやってそんな状態になったのか聞いたらしいんだが、『うっせーわコンチクショー! どうも助けてくれてありがとうわぁああああああああん!』って泣きながら走り去ったとか」


「しかも走っていった際の最後のセリフが『【風系魔法】を使えば楽に降りられたじゃねえか私のおバカあああああああっ!』だからな」


「本当に昨日何があったのか気になる……」


 あー。あー。あー!

 きーこーえーなーいー!

 ちょっとトラウマが刺激された状態で何十分も空を漂っていた女の子なんて知りませーん。他あたってくださーい。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「まさかの人物っすか……」


「おいおい嬢ちゃん、そりゃないぜ。ギルドに初めて来てからの知り合いだろ? ここ数日は会っていなかったが、元気そうで何よりだ」


 今回の試験で私に同行する人が来たと聞いて会いに行ったら、まさかのハゲ――改めギランさん。プラスで知らない男女2人。


「どうしてギランさんが?」


「ん? あぁ。この新人のランクアップ試験の監督役、意外とギルドの金払いがいいからな。結構人気なんだよ。実力のある人格者が優先されるんだが。オレのパーティーメンバーは別の依頼で今王都にいないから、地味にヒマだったんだ。それで嬢ちゃんの監督役の話があったんで受けたって訳よ」


 そういえば基本的に冒険者ってパーティー組んでいることがほとんどなんだよな。魔物っていう危険な生物相手するのに、信頼できる仲間が複数いるかどうかで生存率がまるで違ってくるだろうし。ソロで活躍している冒険者の方がずっと少ないみたいだからなー。私はその少ない例になる予定だけど。


「安心しろ。嬢ちゃんほど度胸がある奴なら、冷静に対処すりゃあ試験は簡単に突破できるはずだ。道中のことは、このCランク冒険者【なぶり殺し】のギランに任せれば心配することはねえ!」


 ……ちょっと待て。冗談だよね?

 今、心配しかないよう二つ名が聞こえてきたんだけど?


 不安いっぱいの私がそのことに対して言及しようとしたら、後ろにいた若い男女が紹介してきた。


「初めまして。ボクはDランクパーティー『彗星の光』所属のクラウドという者です。パーティー内での役割は斥候」


「アタシはクラウドと同じパーティーに所属している弓使いのハル。よろしくね。同じパーティーの2人が前の依頼でケガしちゃって……それでクラウドと2人で受けられる依頼を探していたんだけど、その時に監督役の話を聞いたの。同じ女同士聞きたいことがあったら遠慮なく聞いて。クラウドがセクハラしてきたらアタシ半殺しにしてあげるから」


「ちょっとハル! そんなことしないってば!」


「大丈夫です。本当にセクハラしてきたら私自ら半殺しにしますんで」


「「そ、そう……」」


 クラウドさんもハルさんも、大学生ぐらいの見た目だな。

 でも細かい所を見ると、やっぱり冒険者だって分かる。斥候と弓使いって言っていたけど、2人とも身体が引き締まっているし。


「まあともかく、今回はこの4人で臨時のパーティーを組むと思ってくれればいい。指定された魔物以外が襲ってきたら、嬢ちゃん以外のオレたち3人で片付けることになるから、余計な体力や神経を心配する必要はねえぞ」


 それなら、安心かな?

 同じ女性のハルさんもいることだし。


「それじゃあ出発と行くか」


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