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閑話 悪夢、そして夢から覚め――

 おまたせしました。

 普段の2.5倍の文章量なだけでなく、感情移入しすぎて時間を置きながら書いていたら遅くなりました。


※割とどシリアスなので、苦手な人はスクロールで最後ら辺まで進んでください。


【side.メーリン】


 あたたかい……おいしい……

 こんなにいっぱい食べたの、いつぶりだっけ?


 木の器にもられたお野菜がいっぱいのシチュー。去年ならふつうに食べていたそれが、涙が出そうなくらいおいしい。


「おいしいね、フェリ兄……」


「あぁ、さっきの人が戻ったら礼を言わないとな」


「うん」


 となりに座って一緒にシチューを食べるフェリウス兄さん――フェリ兄の方を向くと、おはなをすすりながらシチューを口に運んでいた。


 フェリ兄は私の2つ上で今年9歳。

 家族みんなのお手伝いをして、木剣をふるっていたけど、この冬は自分の分まで年下の子に食べられるものをあげていたから、私と変わらないぐらいやせちゃってた。ティオ姉やウォル兄もそう。年長だからって、他の――残った家族に自分の食べものをあげて……やせちゃった。


 でも、今日だけはお腹いっぱいになりそう。

 リューネやエルくんは泣きながら食べている。ディアーやヘレンちゃんはいきおいよく口に入れてたからむせてる。


「ひぐっ、うぐぅ……おいしいよぉ」


「あ゛りがどう……」


「だ、大丈夫か? 泣くほどおいしいか?」


「ガブガブガブッ!」


「はぐむぐ――んんん!?」


「慌てなくてもユキナ様特製シチューは無くなりませんよ。ほらほら、お水です。飲んで落ち着いてください」


 家族以外でそばにいるのは、フェリ兄と同じかちょっと年上ぐらいの獣人の子供にキレイな金髪のお姉ちゃんの2人。

 2人とも、シチューをくれた白いお姉ちゃんのお仲間さん。


 たぶん、外から来た人なんだと思う。


 ここに最初からいる人だったら……泣いたりしない。怒ったりしない。みんな、ギルドマスターさんみたいな人ばかりなら、私たちはお腹を空かせない。


 たぶん、この人たちがこんな風にしてくれるのも今日だけか、あと1、2回だけだと思う。ギルドマスターさんや家族の知り合いの人たちだって、お腹いっぱい食べさせてくれたのは最初だけ。

 でも、それを恨んじゃダメだってフェリ兄も言ってる。


 私も……何となく分かってる。

 本当はみんな悪くなくて、私たちがはなればなれになるのが辛いから余計に苦労して、本当に悪い人は死んじゃったか、えらくて捕まえられない人だってことぐらい。私だって、分かってる。ただ、それが受け入れられないだけ。


 もうはなればなれはイヤ。


 家族と一緒じゃないのはイヤ。


 家族が、大切な人が――知らない所で死んじゃうのはもっとイヤ。


 あんな思いは……もう、2度としたくない。


 たぶん、みんな、同じ気持ち。


 大好きで、優しかったお父さんとお母さんに「フェリ兄のお嫁さんになりたい!」って言うぐらい好きで、さびしい時いつもそばにいてくれた家族で、血はつながってないけどお兄ちゃんで、こんなことになっても好きなフェリ兄が死んだら……生きていく自信がない。


「おかわり、いりますか?」


 気がついたら金髪のお姉ちゃんが目の前にいた。

 私とフェリ兄の器はいつの間にかシチューがなくなってた。


「え? で、でも……」


「遠慮なんてなさらないでください。子供はたくさん食べて、たくさん遊んで、たくさん寝るのが本来の仕事なんですよ? ――って、これはユキナ様の言葉ですが。あはは……とにかく、まだまだありますから」


「えっと、お願いします」


「わ、私も!」


「はい!」


 ……さびしいことも辛いこともたくさんあったけど、あたたかいシチューを食べてる間は、あまり考えずにすんだ。

 おかわりのシチューも食べて、眠くなってきた。少しでもさむくないように、家族みんなで体をよせてねむる。


 獣人の子と金髪のお姉ちゃんはその場から動こうとしない。フェリ兄が聞いたら白いお姉ちゃんを待ってるって。

 ……そうだ。白いお姉ちゃん。シチューおいしかったよって、ありがとうって、フェリ兄やみんなとお礼を言わなきゃ。……言わなきゃダメなのに、戻ってくるのがおそくて、眠くなってきて――


 ――




◇ ◇ ◇ ◇ ◇





 それはまだ、幸せだったときのゆめ。


「どうだフェリウス? 素振りは100回以上できたか?」


「あ、父さん。それは……その……」


「ガハハハッ! やっぱり途中でダウンしたんだろ! ただガムシャラに振ればいいってもんじゃないんだ。ちゃんとした型で振ろうとすんと予想以上に疲れんだろ? だからまずは体力つけろって言ったんだ!」


「うぅ……身にしみました」


「ジードよぉ、オレの記憶が確かならオメエだって入団したばかりの頃に、身の丈に合わねえ大剣を振って肩壊してたじゃないか」


「アタシも思い出した。同期にアホがいたから心配だったのよね」


「ジードおじさん……ダサい」


「う、うっせえ! リーダーはともかく、アルシャは人のこと言えねえだろ! 何回双剣の操作ミスって自分の脚斬ってたか言うぞ!」


「はぁ!? だったらアンタの恥ずかしい話言うわよ!」


「はいはい子供の前でケンカしないの! これ以上するなら子供たちの教育に悪いってことで酒は無しだよ!」


「えー!?」


「そりゃねえぜ!」


「「「「「あははははははは!」」」」」



 なつかしいゆめだった。

 まだお父さんもお母さんも、大人の家族みんなも生きていたころ。


 確かフェリ兄が冒険者になりたいって言って、みんなから色々教わってたころだ。


 私は近くのテーブルからお父さんとお母さんと一緒に見ていた。

 元々フェリ兄のことは好きだったけど、冒険者になるためにがんばってるすがたを見て、大人になったら結婚したいって思ったんだ。


 私たちのいた『集いし光』は帝国でも有名。

 ずっと昔からあるし、たくさんの人が家族のようにすごしていた。

 小さいころからさわがしくて、楽しくて、そんなホームが大好きだった。


 私と同じぐらいの兄弟姉妹もたくさんいて、甘えてみたり、そうだんしてみたり、世話をしたり、いっぱい思い出がある。

 血はつながってないけど、みんなみんな家族だった。


 私のお父さん、お母さん。フェリ兄のお父さん、お母さん。他の兄弟姉妹のお父さん、お母さん。『集いし光』のリーダー、ベオルさん。いつもいじられてたジードおじさん。本当はやさしいアルシャおばさん。実はジードさんのことが好きなお手伝いのミリアさん。


 とても大切な、私の家族だった。




「全員でダンジョンに遠征?」


 場面が変わる。

 フェリ兄が自分のお父さんと話している。


 ……待って。確かこのときっ!?


「あぁ。リーダーたちの班が、中層にあるこの前新しく到達した階層で珍しいもんを見つけたらしくってな。その時は遠目だったし、持ち物の消費が激しかったから諦めたらしいが……もしかしたら隠し宝箱かもしれないってことで、他の冒険者パーティーが見つける前に取りに行こうってな」


「でも、危なくない? 確か中層を探索していた冒険者が変な場所で死んでいたとか、この前レイブンさんが言ってたけど」


「だからだよ。スキルや技能で予想外にも対処して、数の暴力で困難を乗り切る作戦だ。……まぁ、実際のところは、死んだ冒険者の中にリーダーと仲が良かった奴がいたらしくてな。目的地に行くついでにソイツが死んだ理由も確かめてみたいんだと。ギルドからも余裕があれば調べてくれってな」


「そっかー……絶対に帰ってきてくれよ父さん! ようやく100回素振り出来るようになったんだ! 次は技教える約束だからな!」


「おう! 父さんと約束だ!」


 叫びたかった。行っちゃダメだって。でも、体も口も動いてくれない。


 私がフェリ兄とそのお父さんが笑い合っているのを見るのは、そのときが最後だった。フェリ兄の約束は……かなわない。




「フェリウスー! 遊んで! でっす!」


「あとでなプリミラ。……にしても、今回の遠征は長いな」


「ミリアさんとか、ジードおじさんがいつ帰ってきても良いようにしてるのにねー。……別にいいけど、早くくっつけばいいのに」


「元々ギルドからの調査依頼もあるし、予定より遅れることも覚悟しなさいって母さんたちも言ってたじゃないか。ボクたちにできるのはミリアさんの迷惑にならないようすることだよ。大丈夫。いつも通り帰ってくるって」


 また、場面が変わる。

 これは……あの日・・・の……


 『集いし光』全員がダンジョンに向かってそれなりの日数がたったころ、私たちはミリアさんと一緒にみんなの帰りを持っていた。

 フェリ兄はたんれんしたり、ティオ姉はミリアさんのお手伝いを、武器屋さんになりたいウォル兄は金属や革をいじって、私は同い年や年下の子と遊んだりしながら、無事に戻ってくるのを待っていたのに……



――ドンドンドン!



「おい! 誰かいるか!?」


 とつぜん、げんかんのドアが強く叩かれた。

 ビックリしたけど、声は聞き覚えがあるものだった。


「この声……レイブンさん?」


「焦ってるみたいだけど、急用かな?」


 ふだんの落ち着いた感じのレイブンさんが大声を出して来たときから、むねの奥にザワつきを覚えていたのかもしれない。


 でも、私はそれが何なのか分からなくて――


「はーい! 今、開けまーす!」


 げんかんのドアを、開けた。


「はぁ、はぁ、はぁ……メーリン……! ミリアさん……フェリウス、ティオラ、ウォルフも。みんな、いるんだな」


「レイブンさん!? どうしたの!?」


 ドアの向こうにいたのは、息を切らして、涙で顔がグシャグシャになったレイブンさんだった。

 その場にいたフェリ兄たちだけじゃなく、私の声を聞いてやって来た他のみんなも「何だ? どうした?」ってやって来た。


「はぁ、はぁ……みんな、落ち着いて聞いてくれ」


「な、なに?」


 聞いたらダメなそれは、それでもレイブンさんの口から出て、


「――――――え?」


 何を言われたのか、いっしゅん分からなかった。




――『集いし光』が……壊滅した!






 そこから、どんどん場面が変わってく。


 何を言われたか理解できなかった私たち。


 その場に倒れてしまったミリアさん。


 ウソだと信じたくて、ミリアさんをねかしたあとに急いで全員でギルドに向かって走る私たち。


 重苦しいギルドと……見覚えのある、変わり果てたリーダー、お父さん、お母さん、ジードおじさん、アルシャおばさん、みんなの装備。


 ただただ……なみだがあふれて止まらなかった。きっと、悪い夢でも見てるんだって、そう、思わずにいられなかった。



 でも、心のせいりなんて少しもできてない私たちに――



「大変だ! 『集いし光』のホームが……燃えている!!」



 さらに追い打ちをかけることが待っていた。



「おい! 水系魔法の使いもっと集めろ!!」


「隣の建物に火が移らないようにしろ!」


「ちくしょう!! 誰だこんなことしやがったのは!!?」


 燃えてる。

 私たちの家が、みんなの……ホームが。


 何よりも――


「ミリアさぁああああああああああああああああんっっっ!!」


 小さいころからずっといてくれた家族が……また死んだ。




 そこから先は、ほとんど記憶がない。


 ギルドマスターさんやレイブンさんがしばらく色々してくれてたみたいだけど、私はフェリ兄にずっと泣きついていて覚えてない。


 ようやく自分で行動できるようになったときには、もう服も汚れて、体も痩せていて、おなかがへっていた。


 私たちの住むことになっただろう孤児院も、大人の事情とかでもうない。ホームも焼けて何も残ってない。思い出も何もかも、残ってない。


 私にできたのは、お腹がへってもぬすみをしないようにがまんすること、ホームの跡地にときどきお花をそえること。


 ただ、それだけだった。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「メーリン? メーリン!」


「にゅ、ぅ……フェリ兄?」


「うなされてたけど、大丈夫か?」


「……昔のゆめを見てたの」


「――っ、そうか……」


 フェリ兄はそれだけ言うと、抱きしめてくれた。

 何も言わず、ずっと。


「ありがとう。もう大丈夫」


「無理だけはするなよ」


「うん」


 気付いたらもう朝だ。

 太陽が少し顔をのぞかせてる。


「オマエ、大丈夫か? 何か、食うか?」


「ひゃっ!?」


 すぐ後ろから声がしてビックリしちゃった。

 ふりかえると、獣人の子が耳をピコピコさせながら心配そうな顔で私たちのことを見ていた。


「あ、昨日の……」


「うん。朝なった。ユキナのとこ、行こ?」


「えっと……」


 ユキナって何? 誰?


(昨日の白いお姉さんのことだよ)


(あ、そっか)


 フェリ兄が小声で教えてくれた。

 そっか。あの人ユキナって言うのか。


「ユキナ、朝なったらニオイ追えって言ってた。だから、このあと向かう」


 ? 何のことだろう? ちょっと分からない。


 どういうことなのか考えていたら、みんなも起き始めた。


「ん。みんな、起きた? じゃあ、こっち」


 獣人の子が指をさした方向に歩き出す。


「? どうした?」


 どうしたも何も。急すぎて分かんないよ。


「行くとき、キケンないぞ? リルがゼッタイ守るから」


「…………」


 しかたなく、みんなで獣人の子に付いて行った。

 どこに向かってるのか聞きたいけど、後ろをたまに見てすぐにスタスタ歩くから中々聞くことができない。


 数分ぐらいしてフェリ兄が何かに気付く。


「この道、孤児院へ向かう道だ」


「孤児院に?」


 もう何も残ってない場所だったはずだけど……


「そう。そろそろ跡地に近づいて……んんん?」


「どうしたの?」


「いや……大きな建物が見えるけど、あんなのあったっけ?」


「……なかった、と思う」


 孤児院があった場所に近づいていくと、見覚えのない大きな建物が見えてきた。何だろ? 木でできた……家?


「ついた」


 獣人の子がそう言って止まった場所は見覚えのない大きな木の家がある場所――孤児院が元あった場所だった。

 冒険者ギルドよりは小さいけど、ふつうの家より大きいそこに獣人の子と一緒にいた金髪のお姉ちゃんが地面に座り込んでいた。となりには白いお姉ちゃんがピクリとも動かないでねている。……地面にあおむけで横になってるけど大丈夫かな?


「あぁリルさん……おはようございます」


「ユキナ!? ステラ!? 大丈夫か!?」


「一睡もしないで作業していたので大丈夫ではないですね。私も自分のすべきことが終わったあとはユキナ様のお手伝いをしたのですが……何とか間に合いました。1番がんばったユキナ様はしばらく休ませないとですが」


 金髪のお姉ちゃんの目の下がちょっと黒くなってる。

 ねぶそくのときになる“くま”だったっけ?


「あぁそれより、最後の力を振り絞って宣言しますね」


 ヨロヨロと、おばあちゃんのように何とか立ち上がった金髪のお姉ちゃんは、大きな木の家を前に私たちにかたりかける。



「ユキナ様からアナタたちにプレゼントです」



 バッ!と、大きくうでを広げて――



「新・孤児院です! 今日からアナタたちの住むもう1つの家ですよ!!」



 そう叫んで……そのまま頭からたおれこんだ。


「ステラーーー!?」


 獣人の子がかけよるのをよそに、木の家を見る。

 となりのフェリ兄も他の子も、ポカンとした表情をしている。たぶん、私も似たような顔になってる。


「「「「「………………え?」」」」」



 昔から感受性が高くて、こういうの見ると泣きそうになる作者。自分の書いてる小説でなったのは初めてですが……

 ちくしょう! 誰だこの子たちをこんな不幸な目に遭わせたのは!!(←真犯人)

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― 新着の感想 ―
[一言] >昔から感受性が高くて、こういうの見ると泣きそうになる作者。自分の書いてる小説でなったのは初めてですが……  よっしゃ。  ならばそのしんみりを、しょーもないネタでブレイクしてやる。 …
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