第102話 異世界チートのバーゲンセール
第2回のコロナワクチン摂取を終えました。
体の痛みは無いけど、たちの悪い風邪の症状が出て苦しんでいました。
かなり久々の投稿となります。
よし。善は急げという。
早速、必要最低限なものだけでも買おうと思います。
ギルドから出てすぐに雑貨屋さんへ移動。
大工道具その他諸々必用になりそうなのを買い込む。
さらに食材を売っているエリアで足りない分の食料を買い込むだけでなく、野菜の種も購入。これはステラに期待しよう。
そこから宿屋に戻ってチェックアウトの手続き。
中途半端な時間だったからか「何かあったのかい?」って心配されたけど大丈夫。ただこれから家を作るんでそこで寝泊まりするだけです。
空を見ればもう日が落ちかけてる。
ヤバい。時間がない。ひとっ走りいくぜ!――ってさっきからずっと走っていたな私。ダンジョン初攻略を終えたばかりだってのに。今日1日でイベント多過ぎだろ。このあともあんだぞ? さすがに疲労の色が出てきた。ポーション飲もう。
「戻ったぞー」
先程ステラ、リル、子供たちと分かれた場所までようやく戻ってこれた。
日はほぼ落ちてる。近くに街灯はあるけど、数が少ないせいで辺りは薄暗い。
「ユキナ様、かなり遅かったようですが……」
「O HA NA SI、終わったのか?」
「話終わったあとで色々買い込んでね」
アイテムボックスから買い込んだもの――主に大工用具を取り出していく。ついでに聖獣の森で罠用に使ったたくさんの丸太も。
丸太は丈夫で使い勝手の良いモノ、傷ついて使い所が限られるモノ、それ以外のモノを仕分けていく。ステラと話ながらならすぐすむだろ。
見慣れない大工道具に興味津々なご様子のリルを置いて、ステラに冒険者ギルドへ向かったあとのことを聞く。
「子供たちは?」
「……いつぶりかのまともなごはんに満足したのか寝ちゃいました。ユキナ様に伝言です。『美味しいごはん、ありがとうございました』と」
「……子供は飯食って遊ぶのが本来の仕事だろうに」
良く見れば離れた場所で子供たちは身を寄せ合って寝ていた。
お世辞にも綺麗とは言えないボロ布を掛けて。
(時期からしても寒かっただろうな)
季節的には冬なんだ。
帝国は大陸の南側にあるから雪が降るほど寒くなるのは滅多にないらしいけど、聖国ほど温かいわけじゃないから夜は厳しかったはずだ。冬場だと自然の恵みだって少なかっただろうから、余計に腹を空かせる羽目になったってところか。
「それで、ユキナ様。冒険者ギルドへ情報の確認に向かったのですよね? この子たちのことは……」
「……うん。聞いてきた」
私は丸太の選別をしながらステラにヘルプで知ったこと、ギルドマスターと話したことを伝える。
聞き終わった頃には、ステラは爪が手のひらに食い込むんじゃないかと思うほど力強く握りしめていた。
「やるせないです」
「いろんな要素があったからだけど……まぁ、私も同じ気持ちだよ」
「彼らのホームと孤児院のことは?」
「そっちも確認した」
ヘルプの情報だけど、聞いた瞬間に頭にきたよ。
補足のためにギルマスからも話を聞いてさらに。
「ホームは『集いし光』に恨みを持ってたチンピラに放火されて、孤児院は老朽化による取り壊しが終わった直後に資金停止とか……ふざけてるわ」
思い出しただけでイライラする。
だけど、ステラが詳しいことを知らない以上は説明する必要があった。
まず『集いし光』が長年使っていたホーム。
大規模冒険者パーティーの活動拠点とだけあってかなり大きく、ほとんどのメンバーが寝泊まりしていたようだ。一部は宿屋から来ていたようだけど、居心地が良いので冒険者活動の時以外もホームで過ごす光景が当たり前だったという証言がある。
子供たちは全員、このホームで生まれ育った家族だった。
血の繋がりは無くても周りは親戚ばかりって感覚なんだろうな。
当然、家であるホームには思い出の品や記憶があったはず。
それを考え無しのチンピラが灰にしたんだ。
気の良い冒険者ばかりが集まった『集いし光』。
長い間活動し続けてきたから、時折帝都の治安維持に貢献することもあったらしい。その中には人に迷惑を掛けるチンピラをしょっ引くというのもあった。大抵の場合が刃向かうんで話し合い(物理)で黙らせていたが。
さて、そんなチンピラが『集いし光』壊滅の話を聞いてどうするか。たまたま、かなり早い段階で情報を入手していたら。後先考えない、同じ人間かも怪しいほど短絡的な奴がいたら。
そいつは、親たちの悲報を聞いて冒険者ギルドへ急いで向かった子供たちがホームを留守にしたその時を狙い――火を放った。
タイミングが悪すぎた。
帝国でも有名な長年活動し続けた大規模冒険者パーティーの全滅だ。当然周囲は一般人・衛兵問わず混乱していたから火を付けるのも難しくなかったし、放火に気付いた時にはもう止められないほど勢いよく燃えて――子供たちの生まれ育った家は、『集いし光』のホームは、見るも無惨な姿になっていた。
残ったのは骨組みだけ。
しかも、子供たちの世話をしていたパートのオバチャンが逃げ遅れるという悲劇付き。子供たちはあとになって身近な人まで失ったんだ。
チンピラにこの世の地獄を見せたくても無理。翌日には死体になって発見されたから。
裏に誰かいる可能性も考えてヘルプに確認したけど、裏社会のルールを破ってバカなことしたチンピラに対する制裁だった。裏の世界にも表より厳しいルールがあったりするのはラノベの設定とかで見たことあるけど、ソレに思いっきり抵触してたらしい。ギルマスにも非公式で謝罪文が届いたそう。
次に帝都の孤児院に関して。
元から老朽化していて危ないって理由と、孤児院長がもういい年で仕事が続けられなくなったこと、珍しくここ最近では孤児の人数が少なかったことなどが重なって、丁度良い機会だし取り壊して新しい孤児院でも作るかという話が上の人間によって決められたことが全ての始まり。
これ自体はいい。
老朽化は危ないし、忙しくない時に立て直したいと思うのは当然だ。
で、数人の孤児の振り分けも終わったので孤児院の取り壊しを開始。
更地になったところで、決められた資金内で新しい孤児院を作ろうとした矢先に問題が発生した。
帝国の各地で魔王教団の活動が活発になり始めたんだ。
帝国上層部はすぐに対抗すべく様々な事を手配。
その中ですぐに必用な資金が少々足りなくなり、
――あろうことか、孤児院の建築費と維持費に手を付けやがった。
やった上の人間曰く、孤児院など後回しでも良かろう? とのこと。
コイツのせいで孤児院のことが後回しになった結果、ホームも家族もみんな失った子供たちを引き取ってくれるはずの場所が、今頃であればとっくに完成して運営も再開しているはずの孤児院が、無い状態からスタートする最悪が待っていた。
ギルマスも事態を把握してから帝国上層部に抗議と急ぎ孤児院の運営を頼み込んだそうだが、答えはまさかの“No”!
問い合わせに答えた者が言うには、孤児院用の資金は使ったあとであり魔王教団が活動し続けてる以上は確保も難しい。実際にちょい資金難だったのも事実。そもそも決めて実行したのが高位の貴族家の出だから責任取らせるのもちょっとぉ……と返ってきたそう。
その時の話をしてくれたギルマスは「帝都のギルドマスターとしてではなく、一市民のゴルガーとして、帝国貴族の対応に怒りしか沸いてこない」と零していた。何度かギルマスの権限も使って適切な対応を求めたけど、どれも空振り。何のための権限なんだと大きく息を吐いていた。
これが『集いし光』の子供たちが野宿生活をする羽目となり、同時に最低限の援助すら難しくなった原因だった。
「ふざけてます。あの子たちが、何をしたって言うんですか……!」
「……」
こんなステラの顔、初めて見たわ。
怒りと悲しみとで目に涙を溜めて震えている。
(やっぱりステラは優しい子だな……)
他人のことを気遣える人間はたくさんいるけど、ステラみたいに自分のことのように本気で怒ったり悲しんだりすることのできる人は多くない。
難儀な性格だけど、私は嬉しいな。
そんな子と異世界で親友になれたんだから。
「じゃ、助けよっか。私と、ステラと、リルで」
「――っ! ユキナ様……」
「んー? リルにできること、ある?」
ステラは顔を上げ、大工道具に夢中になっていたリルも名前を呼ばれて振り向く。――というかね、リルさん? そこそこ話してたはずなのにやけに静かだと思えば、買い込んだ大工道具とか箱から出して直接見ていたのかよ。あ~あ~こんなに散らかして。この子が野生児だってこと忘れてたわ。マナーとかモラルとか教えることがいっぱいだぁ……
「んんっ! ……とにかく、仮にも聖女なんだからここで何かしなきゃ知り合いに会わせる顔が無いんよ。幸いにも私らには“何とか出来る力”ってもんがあるんだし、出血大サービスで子供たちを助けよ? で、枕を高くして爆睡してやるんだ。そのためにステラも協力して欲しいんだ」
「当然協力します! 私にできる事であればじゃんじゃん言ってください! もう、労働法に違反するぐらい扱き使ってください!!」
「ステラさん!? 最低限労働法は守りますよ!?」
「なぁユキナ。リルも手伝うぞ? がんばるぞ? なのに、何でさっきリルの名前、しぜんに抜かした? なぁ? ユキナ? なぁなぁ?」
「分かった、分かった。リルにも仕事振ってやるから服をグイグイ引っ張るな」
ステラはともかく、リルに振れる仕事……
何だ? 子供たちの遊び相手? ……あとで考えるか。
「それで、何から手を付けましょう? もう暗くなってきていますし、やれることも限られてきそうですが……」
「人間に必用なのは衣・食・住の3つだ。“衣”――服に関しては後回し。ステラには“食”の方でがんばってもらいたい。そして私は“住”――この子たちの家をどうにかする。今からだと明日の朝にはどうにかってところか。持ってて良かったな睡眠無効化」
「家……え? 家、ですか? あの、ユキナ様? 私もそこまで詳しくありませんが、一般的なサイズの住宅を作ろうとするだけでそれなりの日数を必用とするはずですけど……テントの延長線のようなモノで代用するのでしょうか?」
「普通なら、ね。さすがの私も朝までに全部作るの無理だよ? あくまで外装だけで中身は次の機会に。……よし、選別完了。必要な物も揃ってるし、スキルの方も確認した。あとは実際に作るだけだ」
「作るって、どこにです?」
「そりゃあもちろん、孤児院の跡地に」
文句は言わせねえぞ帝国ぅ。
元々建てる予定だった所に、私が代わりに建てるだけなんだからなぁ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
子供たちのことはお留守番としてリルに任せ、歩いて数分の距離にある帝都孤児院の跡地にやって参りました。
「本当に何もありませんね」
それな。建物があった痕跡は残ってるけど、あとは地面が広がってるだけ。解体した木材とかも処分済みなのか見当たらない。
でも、本当に何も無いわけでもないんだなこれが。
私はステラと合流する前、ここに立ち寄って立地の確認をしておいた。ステラにも分かりやすいようまずは明かりを確保。
「『光球』×5」
周囲に光の球を生み出して照明代わりにする。
すると、私が先に知りたかったものがすぐ見つかった。
「ステラ、こことここ見てみ」
「? これは何です?」
「建物の基礎と、畑の跡」
暗いと分かりづらいけど、建物を建てる際に最初に作る土台である基礎と、裏側にあったと思われる小さな畑の跡がある。
畑自体は小さいけど、土地自体は意外とある。正直言って使いこなしていたとは言えないけどな。
「いや、本当に良かったよ。ログハウスは男性アイドルがテレビ番組の企画で1から作っていたのを見たから何とかなるけど、さすがに基礎のちゃんとした構造までは分からなかったからね。おかげで、すぐに作業に移せる」
「ダンセイアイドル? テレビ?」
「ステラは気にせんでいいよー」
さて、ここからが雪菜ちゃんの本気の見せ所だ。
「いでよ! スキルリスト!」
ポーンッと軽い音と共にいつものスクリーンが現れる。
今の私の所持SPは、狩人の仮面を倒したことや聖獣の森を守り切った功績(?)から302SPとかなりある。それをふんだんに使う。
初期と比べて多くなったスキル一覧から、目的のモノを探し出してどんどん取得する。
『〈ヘルプよりお知らせ〉……35SPを消費し、行動速度上昇(小)を(大)にしました。180SPを消費し、ユニークスキル:魔力最大値増大(フェイズ3)を(フェイズ5)にしました。12SPを消費し、速度上昇LV.6をLV.7にしました。3SPを消費し、器用を取得しました。6SPを消費し、測量を取得しました。8SPを消費し、建築術を取得しました。26SPを消費し、斬術(大)を取得しました。16SPを消費し、ユニークスキル:サイキックを取得しました。25SPを消費し、ユニークスキル:影分身を取得しました。』
うおぅ……必用だったとはいえ、残りがたった3SPに。
これ、本気でダンジョン攻略がんばんないとヤベェやつだ。
準備は整った。
ここから先は私にとって地獄の時間の始まりであり、子供たちに天国を見せるための下準備となる。
「影分身の術!」
手でシュババッと印を結ぶ。必要性? もちろん無い!!
体から魔力が大量に消費される感覚と共にそいつらは出現する。
「「「「「よっしゃー! やってやるぜー!!」」」」」
そう、私の劣化分身たちが!
「ユ、ユユユユキナ様がいっぱい!!!??」
「うっわ、客観的に見ると自分が増えてるのとか気持ちワル……」
目が飛び出さんとばかりに驚愕しているステラに対し、偽物とはいえやる気満々な私と瓜二つの分身たちが「えいえいおー!」したり、鉢巻を巻いて形から入る姿を見てゲンナリする。一応、私自身と分身たちには魔力のパスみたいな繋がりがあるんだけど、命令出す前から行動し始めるとはこれ一体?
「難しいことはあとで考えればいいか」
ステラにはユニークスキルで畑の方の改良をしてもらう予定だけど、ログハウス作りは時間との勝負だ。すぐに行動に移さねば。
「『サイキック』」
周囲に出した丸太が浮かび上がる。まるでポルターガイストのようだ。
私は大工道具の他にハルバードを。分身たちも私の意志がパスを通して伝わっているのか、各々が必用な道具を持って待機していた。
「子供たちのためのログハウス作り……開始だ!!」
「「「「「おおおおおおおおおーーー!!」」」」」
では鼓舞が終わったところでスキル:無音を使って静か~に作業を始めましょう。近所迷惑、絶対ダメ!!
『アルビノ少女』、執筆するのが久々だったのもあり随分時間が掛かった。やっぱ勢いと慣れが大事ですよね。
次回は閑話で子供たちの1人に焦点をあてます。
帝国編(前編)のあとの閑話にするつもりだったのですが、予想以上に不幸になってしまったので(←おい作者ぁ!)その辺の補足も兼ねて書こうかなと。




