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アルビノ少女の異世界旅行記 ~私の旅は平穏無事にといかない~  作者: 影薄燕
第1章:レーヴァテイン王国(前編)
11/145

第10話 冒険者身分証

・2023/04/9

 前半を書き直し。


 王都に来た翌日。

 私はカイルさん宅で腕を振るっていた。


 鋭い刃が鎧に護られたその中身を鎧ごと切り裂き、業火をもって対象を焼き尽くし、生まれてくるかも知れなかった命を無慈悲に叩き割る。

 そんな戦場で戦い続けた果てに手に入れた勝利は――!


「うん。美味しいよユキナお姉さん」


「えがっだよ~」


 リリィからの笑顔だったのだ!!


「料理指南お疲れ様」


「最初こそハラハラしたけど、ユキナさんも慣れてきて上手くいくようになってからはどんどん上達したんで、後半はアドバイスだけでしたよ」


 いやー、家庭科の授業以外でまともに料理らしい料理したの初めてだったけど、結果的に上手くいって良かった。【鉄人料理人】様々だな。

 でもあれだね。どんなに良いスキルを持っていても、使い手の基本が疎かだとスキルによる補助も最低限しか発動しないね。料理の鉄人がアシスタントに付いているのに、実際に作るのがドジっ子でアクシデント満載みたいな。


 料理を作り終えるまでにした私の失敗がそれを物語っている。

 包丁で指を切りつけること4回。

 卵を無駄に潰しちゃうこと2回。

 他のことに気を取られてベーコンを焦がしてしまうこと1回。

 慌ててすっころんで堅さと重さを持つ野菜が頭に落ちること1回。

 ――と、散々な目に遭った。フォローしたリサさんに申し訳ねえ。


 仕方ないんだよ。私が自分だけで作ったのなんてトーストと納豆ごはんだけだぞ? 家庭科の授業でも雑用メインで、調理なんてほとんどやっていない。むしろ最終的にスキルの力を借りたとはいえ美味しい料理に仕上げた私を褒めて欲しい。


「ユキナさん、今日はどうするご予定で?」


 自己責任で焦げすぎたベーコンと卵のカラが混じってるかもしれない(混じってた)固めのスクランブルエッグを食べているとカイルさんが聞いてくる。


「冒険者ギルドに行って、早速依頼を受けようかと」


 今日の予定その1。冒険者ギルドに行く。

 昨日のカイルさんや受付のエミリーさんの言っていたことも気になるし。行ってみりゃあ答えも分かるからそんな気にしていない。


 今日の予定その2。採取系の依頼を受けてみる。

 昨日手にした新たなスキルも試したいので、王都の外へお出かけだ。


「それじゃあ、行ってきます」


「いってらっしゃーい!」


 手をブンブン振って、見送るリリィ。

 可愛すぎる! お小遣いあげてぇ! そのためにも成功せねば!


 今の私の服装は、リサさんが昔使っていた冒険者としての服を私に合わせて調整してくれたもの。防御力に関しては心配いらないんで、機動力重視の軽装を採用。胸当てなどがない代わりに、少し女の子らしいデザインに。髪は適当な所で結んで、動く時に邪魔にならないよう纏めている。

 そして腰には素材採取用のナイフが。

 え? 何でアイテムボックスに入れないのかって?

 見栄えの問題だよ。言わせんなや。


 それにしても、朝から屋台の人は元気だな~。



「ララビットの串焼き、今なら3本買うと普通に買うより安くなるよ! この機会にぜひ食べてみなー!」


「そこ行くお姉さん! 朝の仕事前に果物ジュースはいかが?」


「ウルフ系の肉とたっぷり野菜の特性パン包み、大銅貨4枚から! 値段はウソつかねえ美味しさだ! 王都に来たなら1度は食べてみな!」



 お祭りみたいにズラーって並んでいるわけじゃないけど、ちらほらと屋台を経営している人とそこで売られているものを買う人を見ることができる。


 ララビットは確か、私が討伐する予定の魔物じゃなかったっけ?

 子供でも討伐できるらしいけど、食うこともできるのか。


 そんな風に考えていたら、後ろから声を掛けられた。


「ん? 昨日の嬢ちゃんじゃねえか」


 振り向けば、戦槌を背負ってパンみたいなの食っているハゲが。

 あれ? どっかで見た覚えが……?


「………………あ。テンプレ崩しのハg――オッサン」


 思い出した。昨日ギルドで絡んできた――と見せかけて、ジンクスで将来性があるかないかを判別してきたハゲじゃねーか。

 不用意に近づくんじゃない! 太陽の光が反射する!


「なあ、今オレのことハゲって呼ぼうとしなかったか? つか、昨日会ったばかりなのに思い出すまで時間掛かるってどういうことだよ? さすがに泣くぞ?」


「ナンノコトカ、ワタシ、ヨクワカラナイ」


 必殺“誤魔化す時にカタカナ”!!

 説明しよう! これをすると何かにつけ誤魔化せる確率がアップするのだ!


 話は変わるけど、ハゲのオッサンの涙に需要ってあるのか?

 美少女の涙の足元にも及ばんだろ。


「……まあいい。見知った後ろ姿だったから声を掛けただけだ。これから冒険者ギルドか? 道は分かるか? 一緒に行ってやろうか?」


 私は子供か!? いや、14歳も子供ですがね!


「大丈夫っす。ご心配なく」


 だから、とっととどっか行けや。

 さっきからウマそうなパン見せびらかして……! たっぷりの肉にキャベツっぽい野菜。ちょっとスパイシーな香りのするソース。それらがパン(近くで見るとナンみたい)に挟まっている。出来立て独特の生地の柔らかさが、直接触っていなくても伝わってくる。

 ジュルリ。あ、ヤベ。よだれが。


「ん? 何だコレが食べてえのか? よだれなんか流して。……半分ほど食っちまったが、それでもいいならあげるぜ」


 ほらよ、と私にそれを手渡してくるオッサン。


 ――!? な、何だと……!

 半分食ってるとはいえ、タダで私に……?


「アンタ神様か!?」


「神扱い!? いきなりオレの評価が急上昇してるぞ!? 餌付けか? 餌付けが原因なのか!? ちょろすぎるだろ嬢ちゃん!」


 何か叫んでいるけど気にしない。小さい頃から古本屋の爺さんが言っていた。「打算じゃなく、純粋な善意から食い物くれる人は神様だぞ~」って。

 ガキの頃は戦争中だったから、食べ物も貴重だったんだと。


「ううぅ……、ギルドに登録した初日からめんどくせえハゲ頭に関わっちまった最悪だって思ったけど、こんないい人だったとは……」


「待てこらあああああああああああっ! 嬢ちゃん、オレのことそんな風に思ってたのかよ!? さすがに傷つくぞ!?」


「おお!? ハゲ頭に反射した太陽の光がまるで後光のように! 仏様の類でしたか! ありがたや~ありがたや~」


「ちょっ! 何をこんな往来の中でオレのこと崇めてんだよ!? いいから、顔上げてくれえええええええええええええええええええええっ!!」




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 ギルド到着! 相変わらずでかいなー。


 ハゲのオッサン改め、ギランさんと別れてからは何事もなく無事に辿り着いた。私自身テンション上がったのが原因だけど、ギランさんの別れ際に見せた疲れ果てた表情が印象的だったな。「相棒(戦槌)がいつもより重く感じるぜ」って言いながら人ごみの中に消えていった。


 ちなみに、貰った食べ物は胃の中に収めた。

 実に美味しかったです。肉は脂身の無い牛肉って感じで、お祭りの日なんかに売られるケバブみたいだった。


「たのも~」


 ゆる~い感じで扉を開ける。昨日よりも視線が多い。


「ユキナさん、こちらです。待っていましたよ」


「エミリーさん、こんちゃーっす」


「え、と……こんちゃ?」


「いえ、忘れてください。こんにちは」


 フランクな感じで行こうとしたら、真顔で首を傾げられた。

 地味に失敗した。やっぱ距離感測るのムズイなー。


「そうそうユキナさん。身分証の代わりとなるユキナさんの魔道具が出来上がりましたので、お渡ししますね」


「身分証の代わりの魔道具?」


 そういや渡されていなかったな。素で忘れていたよ。

 図書館での【ヘルプ】からの警告音が強烈すぎたせいだきっと。


「こちらですね」


 奥に行っていたエミリーさんが何かを持って来た。


 何だこれ? 平らな円形のものに魔石らしいのがはめ込まれている。素材は何だろ? 模様もあってカッコイイけど……

 え? もしかして、これが身分証? カードじゃないの?


「あの、これ……」


「こちらは冒険者身分証ギルド・パスとなります。先日ユキナさんに頂いた血液を媒介にしており、以降ユキナさん以外には使用できません。それに見た目以上に頑丈な作りとなっているので、ちょっとやそっとじゃ壊れないんですよ?」


「え~と、これのどこが身分証になるんで?」


「その魔石の部分に触れてください」


「魔石って、このはめ込まれてる――うぇ!?」


 何じゃこりゃあああああああああ!?

 エミリーさんに言われた通り魔石部分に触れたら、空中ディスプレイ的なのが現れたぞ!? 王都に来て2日目でSFの登場かよ!


「クスクス」


 エミリーさん笑ってる!? こっちの反応見て楽しんでやがる!

 周りの人も笑ってるし! 笑っていない人はどこか懐かしんでいる雰囲気だな。もしかして、ギルドの洗礼的な? こんなん、驚くに決まってんだろ!


「そこにはユキナさんの情報が記されてます。基本的に自分以外には見えません。念じれば他人に見せることもできますし、見せたい情報と秘密にしたい情報を分けることも可能です。なので個人情報の公開はユキナさんしだいですね。ちなみに、もう1度魔石の部分を触れば消えますよ」


 私の、情報だと……?

 改めて私は魔道具から投影されているディスプレイ(?)に目を向ける。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


◦ユキナ=ナガセ(永瀬雪菜) ◦14歳

◦発行:レーヴァテイン王国  ◦Fランク冒険者


〔称号〕異世界転移者・神の加護を持つ者・永遠たる白の少女


〔スキル〕

・EXスキル:ヘルプ、SPマスター、不老

・固有スキル:生存本能、逃げ足、幸運(大)

・魔法スキル:炎系魔法LV.6、水系魔法LV.2、風系魔法LV.3、土系魔法LV.4、光系魔法LV.2

・ユニークスキル:防御力上昇(極大)、状態異常完全耐性、闇系魔法無効

・スキル:アイテムボックス(大)、遠見(中)、探知(中)、聴覚強化、思考加速、鉄人料理人、攻撃力上昇LV.4、速度上昇LV.4


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――



  ………………


 これ、まんまゲームのステータス画面じゃん!?

 つーか、称号って何!?




~おまけ~


通行人A「言われてみれば、頭部の光が神聖な雰囲気を……」

通行人B「まさか、本当に神……?」

ギラン「んなわけねえだろ」

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