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第81話 森の主

・2024/07/12

 一部修正


 う~~~ん……考えても分からん。

 ぶっちゃけ種族が珍しいってそれだけだろ? はいこの話終わり。


「狼っ子のことはひとまず置いといて、これからどうしよ?」


「狼っ子……? ああ、この子供のことですか。そうですねぇ、さすがに今回の一件を無視する訳にはいきません。あの黒ずくめの方たちが密猟者だとしたら大問題です。私たちのようにどこかから穴を掘ったのならまだしも、下手をすると警備の中に手を貸している裏切り者がいるやもしれません。早急に報告しないと」


「……その場合、私たちも報告後にお縄につくことになるんだけど? とくに私は言い逃れできないんだけど?」


「あ」


 ピクニック気分で忘れたかもしれないけど、私も大概だぞ? 森林破壊に動物虐待だ。第三者からしたら黒ずくめ共と大して変わらんのよ。


「……どうしましょう?」


「いっそのこと夢であってほしい」


「……zzzZZZ……うへへぇ~もう食べられない~」


 狼っ子はいい夢見てるな。これがどうでもいいような赤の他人だったら、イラつき発散も兼ねて強制的に起こしてやんのに。

 くっそー、幸せそうな顔しちゃってさー。


 こうなりゃ一か八か。偶然と必然の力を頼るしかねえ。

 その場で立ち上がり、バンザイの体制で空を見上げ……叫ぶ。




「絶賛ストライキ中の【幸運(大)】よ! その力によって、何か、こう……すごい幸運で私たちを助けたまええええええっ!!」




「アバウトすぎますユキナ様!」


 もうこれしかないんじゃい! 行動指針を決められないんだよ! 何でもいいから解決策になる要素が必要やねん!

 困った時は神頼みとも言うけど、その神こそ私にとって1番信用できないという地雷。神は死んだ!!


「誰かぁああああああああっ! お助けええええええええええっ!」


 この際、助けになるなら何でもいいから!




「ふむ。随分と元気な少女じゃな。これまた懐かしい……」




「「――っ!?」」


 覚えのない人物の声が聞えた。その瞬間、私もステラも警戒度を最大にして振り向く。


「そう警戒せんでも取って食ったりはせんよ」


 老人だ。見た目は高齢の爺さんだ。

 ボロいわけではないけど、こっちの世界じゃ見かけないような服を着ている。何となく和服っぽいものだ。


 だけど、普通の爺さんのはずがない。

 狼っ子と同じく聖獣の森にいるのもおかしいけど、何より声を掛けられるまで全く気付かなかった。スキルも反応しなかった!


「誰……ですか?」


 恐る恐る尋ねる。慎重に、変に刺激しないよう。


「ふむ、少女たちにも分かりやすく言えば……そこで幸せそうに寝ている子供の保護者、になるの。……というより、その子は大丈夫なのか? 何やら見たことない程に腹が膨れておるんじゃが? 察するに、相当の量の食事を胃袋に納めたんじゃろうが……」


 爺さん、めっちゃ困惑している!?


 そりゃそうでしょうね! 私たちもビックリしていたから! 質量保存の法則に真っ向からケンカ売ってますもんねこの狼っ子!!

 というか、まさかの保護者!?

 やっと事態が動いたか!


「あの、ですね? この状況に至るまでにいろいろありまして……」


「これにはマリアナ海溝より深~い訳がありまして……」


 まずは言い訳だ。

 この爺さんが何者であれ、このタイミングで現れたってことは現在の森の状況をある程度把握している可能性が高い。そう、駄馬共ユニコーンにブチキレて森を荒らしたのが私だと知っている可能性が!


 ならば謝罪するにしても何にしても「森のユニコーンさんたちが~大変下品な処女厨だったんすよ~」から会話を始めねば! そんでもって狼っ子に関しても「誤解から傷つけてしまったんで~誠心誠意おもてなしさせていただきました~」と少し事実を捻じ曲げねば!


「…………く、くくく」


 ……?


「カーーーッカッカッカッカッ!! 何にも変わっとらん! 少女が、少年・・が住んでいた国ではそれが普通なのか!? それとも、そういう人物がここに訪れるのか!? まったく、こんなに笑ったのは数百年ぶりじゃわい!」


 え? この爺さん、何を1人で爆笑してんの?


「ん~~~? ムニャムニャ……ごはん?」


 爺さんの笑い声で狼っ子が起きてしまった。

 つーか、まだ食べる気なのか!? いつの間にかお腹へっこんでるし!?

 やめて! 私のカレーはもうゼロよ!


「……あ! 爺さま!」


「おお、“リル”よ。無事なようでなによりじゃ」


 飛び起きた狼っ子――リルって名前だったのか――は、勢いよく爺さんに抱きついた。



(……あれ? 何だこの、どこか見覚えのあるような)



 記憶に引っかかるモノはないはずなのに、爺さんと狼っ子が抱き合う光景をどこかで見た気がする。



「ユキナ様? どうかされましたか?」


「え? あ、何かなステラ」


「いえ、何か懐かしむような眼差しでボーっとしていましたので」


「懐かしむような?」


 一体何を?


「さて、少女たちよ。今から時間はあるかの?」


 爺さんが話しかけてきた。狼っ子は後ろに隠れて私たちをジッと見ている。最初にあった警戒心はなくなっているようで嬉しい。


「ええ、まあ。時間ならそれなりに」


「ふむ。なら話し合いのためにも1度住処に招くか」


 そう言って爺さんはトンッと、軽く足で地面を叩く。

 すると、



――パアアアアアアアアアアアアアアアッ!!



「「――なっ!?」」


 爺さんの足を中心として円形に光が広がった。その光は徐々に大きくなり、私とステラも飲み込んでいく。


(これ、高位の【時空系魔法】!?)


 私でも必要なSPの高さからLv.2しかない、そしてそんな低レベルでも扱い切れない程に操作が難しい【時空系魔法】を一瞬で展開した!

 しかも感覚からして高位のものを、息をするように!


 そして、光が一層強くなり――




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




「……ここは?」


「なんじゃこのアホ見たいな大きさの木は……!」


 光が消え、次に目に映ったのは巨大な、それこそ顔を上げてもてっぺんが見えない大木だった。

 よく見れば湖の真ん中にあり、湖と大木の両方が微かに光っていることで、目を奪われるような神秘的な光景を作り出している。


「ここも聖獣の森……なのでしょうか?」


「東京タワーよりデカくて目立つ木があるのに、誰も気付かないってあり得るの? むしろ似てるだけの別空間って言われた方が納得するぞ」


 ステラの言うとおりここが聖獣の森だとして、上を向いても大木の先端が見えないようなもの、数百年もの間ずっと誰も気づかず話題にもなっていないなんて考えにくい。


「くくく、そのセリフまで同じとは本当におもしろい」


「爺さま、楽しそうだなー」


 気配を感じさせずに隣に立ってた爺さんが私を見て笑い、隣の狼っ子が珍しいモノを見たような顔で見上げている。


「結局、ここどこなんすか……」


「聖獣の森で間違いないぞ。ただし、人には決して辿り着けない中心地だがの。外からこの木を観察することも不可能じゃ」


 中心地? じゃあここは聖獣の森のど真ん中ってことか。

 確か聖獣の森について書かれた本には、調査した人たちが誰も森を抜けることができず、奥を目指してもいつの間にか逆方向に進んでいたことから未踏の区域となっていたんだったか。


「あー……結界的な?」


「もっと高位のものじゃ。人の頭じゃ理解できん」


 さよっすか。


「それで、そろそろお互いに自己紹介しません?」


「それもそうか。……勘が良さそうだからすでに気付いているかもしれんが、ワシはこの聖獣の森と呼ばれる場所を永い永い年月見守り続けた存在じゃ。“森の主”という立場が1番近いかの。古き名はとうに捨てたのでな、好きに呼ぶとよい」


 分かってたけど人じゃない別の存在か。魔物? それとも聖獣? はたまた、この世界の神様ポジションかな?


「ご丁寧にどうも。そろそろ14歳か怪しくなってきた雪菜です」


「初めまして。聖国で見習い聖女をしておりましたステラと申します。13歳でございます」


「良い名だ。そうか、ステラ殿は聖国の生まれだったか。丁寧な物腰だのぉ。……ほれ、名前ぐらいは自分で言ったらどうじゃ?」


 爺さんが狼っ子を前に突き出す。


「……リル。……たぶん、10だと、思う」


 ふーん。やっぱ狼っ子はリリィと同い年か。ちょい自信なさげだけど。自己紹介とか慣れてない? 不安さが顔に出ているぞ。


「それで、爺さんは何者なの? 狼っ子のことや、こんな場所に私らを連れてきた理由とか、聞きたいことはたくさんあるけど……」


「ワシが何者か……か。そうじゃな、アレ・・が何か分かるか?」


 そう言ってバカデカい木を指さす爺さん。


「……東京タワーやスカイツリーにケンカ売ってる木」


「そうではなく、表面と一体化しているアレ・・のことじゃよ」


 表面と一体化しているだ? ん~~~? 確かによく見ると樹皮やらツタやらが何かを覆っている? つーか、取り込まれている?


「あれ、爺さま!」


「うむ。ワシの本体である――名を捨てた龍じゃ」


…… R Y U ?



『〈古代龍ドラシル〉……遙か昔から生き続けたエンシェント・ドラゴン最後の生き残り。現在は世界樹と半同化状態』



 ギギギと、油をささなきゃいけない機械みたく首を爺さんに向ける。


「………………龍?」


「その顔、本当に同じような反応じゃ」



 ――剣二のことを思い出すわい……



 最後のセリフは、やけに頭に響いた。


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