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第78話 聖獣を狩る者たち

・2024/07/06

 一部修正


「負けない!」


 謎の獣人の子供は姿勢を低くして、攻撃の動作に入る。


(えー? マジでどういうこと? この子誰さ?)


 向こうはやる気満々みたいだけど、こっちは絶賛混乱中。


 未確認の聖獣かと思ってたのに、リリィぐらいの子供だったんだもん。

 あの耳と尻尾から察するに犬系か狼系の獣人だと思うんだけど、ボロボロの――こう言っちゃなんだが薄汚い服と呼べるかも怪しい代物を身につけただけの状態で森にいるわけがない。しかも、ここは聖獣の森だぞ? いつ、どこから入ったんだって話だ。


 それより何より、


(あっちゃ~……私、あんな子供を蹴ったのかよ……)


 正直に言っちゃうと、もう抗戦する理由がない。

 私から手をあげるなんてもっての外だ。


 これが子供とはいえ、極悪人一歩手前とかなら死なない程度に意識を失うまでボコるけど、こっちを威嚇しているあの子が悪人には見えん。

 むしろ、リリィと同レベルでの純粋さを感じた。根拠は無いんだけど、私の勘が絶対にそうだと言っている。


 そうなると両手を上げて降参ポーズを取りながら話を聞いて欲しいアピールをしたいわけだが……やっぱ聞いてくれそうにないわ。だって、また高速移動したのか見えなくなったから。



――ガキンッ!!



「――っく!?」


「――うおっ!?」


 右側から衝撃音が響いたと思ったら、例の子供が驚いた表情で止まっていた。

 いや、違うな。これは……


「ステラ!」


「ユキナ様ご無事ですか!?」


 いつの間にか近づいていたステラが【光系魔法】による半円型の障壁で自分と私、そして松風を覆うように守っていた。


 子供は自分の前に半透明の壁があることに気付いてすぐ距離を取った。そのまま再び威嚇の体勢になって唸る。


「あの子は一体……?」


「悪い子でないことは確かだよ」


 ステラのおかげで混乱からは脱したけど、状況はよろしくない。

 話がしたいのに向こうは話を聞く気皆無という。

 何度も言うけど、全面的に私が悪いんだろうけどな!


 こっちは2人してどうすればいいのか困り、向こうは少しでも変な動きをしたら即攻撃すると言わんばかりに警戒を解かない。


(本気で困ったぞ)


 私、こういう空気嫌いなんだよ。

 事態が動かず、最適の答えがないっていうのが超苦手。


 そんなこと考えて……子供の方に動きがあった。


「――!? これ、向こうも!?」


 急に獣耳をピーンッ!と立たせて、私らとは無関係な方向に顔を向けた。その表情は驚きと、どうすればいいのかという焦りが感じられる。

 何度かその方向と私たちを交互に見て――ふと、松風に目を止めた。


「ブル、ブルルルッ」


「……オマエ」


 ……ん? え? 何この間?

 何を分かりあってんの? 目で語ってんの?


 それから数秒、馬と子供は見つめ続け……


「う~~~……オマエら! 森、アらすな!!」


 そう言って、驚異のジャンプ力でさっき見ていた方向にある木々まで跳び上がり……そのまま見えなくなってしまった。


 え~っと……


「あの、これはどういうことなのでしょう?」


「私が聞きたいわ。松風、アンタあの子と何を語ってたのさ」


 絶対何かしたよね? おい。こっち見ろよ。なぜ無視する。


「おいってば松風。返事くらい――うぁ……」


 急に足下がふらつく。

 まるで……持久走をしたかのようなダルさだ。


「ユキナ様?」


「大丈夫、自業自得だよ。スキルの反動ってやつ」


 上級の回復薬を取り出してガブ飲みする。


 原因は分かっている。獣人の子供と会うまで発動しちゃってた【激怒】の反動だ。駄馬ユニコーンへの怒りが限界突破して習得後すぐに使ったけど、メリットが感じられない。全体の能力が上がる? 理性的に戦った方が絶対に強いわ。


 それよりも気になることがある。


(あの子、一体何の音に反応したんだ?)


 耳をせわしなく動かしていたことから考えても、私たちじゃ聞えない音を拾ったんだろう。【聴覚強化】を持っている私なら、もう少しあの子が跳んでいった方に行けば聞えるはずなんだけど。


 嫌な予感がするし、行ってみるか。


「ステラ、松風。少し付き合って」


「は、はい」


 ちょっとマジメモードな雰囲気を感じたらしい。すぐに返事を返してくれた。松風もしぶしぶといった体で頷く。




 それからしばらく。ステラに先に行く旨を伝えて、獣人の子供が消えていった方向へ全速力で駆けだした。


 疲れた体に鞭打って木々の間を過ぎていく。

 私にも聞こえたからだ。遠くから聞える聖獣たちの悲痛な鳴き声と、複数人の嫌な笑い声。そして、あの子の叫びを。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「オマエら、よくもおおおおおおおおおおおおおお!!」


 私がそこに着いた時、獣人の子供は黒ずくめの“如何にも怪しいです”と自己主張しているどこか見覚えのある仮面を付けた連中と戦っていた。


『うぅ……痛いよぉ。誰かぁ』


『足が……ボクの足がぁああああああああっ……!』


 そして周りには死んでこそいないが、まるでゲームでもするかのように敢えて急所を外し、傷つけられ弱っている聖獣たちの姿も。みんな苦しそうに助けを求めていた。聖獣の言葉が分かる――分かってしまうから、余計に怒りが沸いてくる。


(酷い……!)


 バーサーカーと化した私がユニコーンにしたこととは違う。

 ここにいる聖獣たちのケガからは、悪意しか感じない!


 改めて戦況を見る。

 加勢したいけど、獣人の子供の戦闘速度が速くて中途半端に手を出したら邪魔しそうで怖い。しかも戦っている連中は森での戦いに慣れているのか随分と身軽に動いている。昨日今日で身につく練度じゃないぞ?


 黒ずくめの男たちの数は5人。手には刃物やボウガンっぽい魔術具を装備していた。腰のベルトにも武器らしきものが。

 それらを巧みに使い連携をしている。


「おいおい、何だよこの獣人のガキは……」


前回・・はいなかったよな?」


「どうでもいい。邪魔するなら殺すぞ」


 あ゛ぁ゛ん? 今、黒ずくめの1人あの子のこと「殺す」って言ったか? 何者か知らねえが、間接的に私を敵に回すたぁ良い度胸だなぁ~おい。


(黒ずくめは半殺し確定として、あの子動きが……)


 どうにも決着が遅い――というか、獣人の子供の速度が遅い。


 見ていると、私を襲撃した時みたいな速度が出ていない。駆け引きの関係でわざと速度を遅くしているのかと思ったけど違う。疲れている今の私でも普通に目で追える速さしか出ていない。木々を上手く使ったアクロバティックな動きで連中の攻撃を凌いでいるけど、見ていてヒヤヒヤしちゃう。


(あの子、随分息があがってるよね……?)


 無茶しているのが分かる。限界超えて動いている奴の顔だ。


「……まさか、毒でも喰らったのか!?」


 戦ってる連中の悪意からして十分あり得そうだ。

 だったらすぐに回復系魔法で解毒しないと!


「【ヘルプ】! あの子の状態を! できるだけ詳しく!」


 近寄ったら治療対象である獣人の子供からも攻撃されるかもだけど、んなもん知るか! とにかく今は治療するために患者の状態を把握して、適切な処置を施すのが優先事項だ!!


 そして、【ヘルプ】が詳しい状態を教えてくれた。



『〈獣人の子供の詳しい容体〉……バーサーカーと化した雪菜を倒すために、反動のあるスキルを使って疲労状態に。さらに雪菜からの反撃によって左腕を負傷。体の芯にもダメージが通ったことで脚にガタが来る。その後、スキルの強制停止に伴い限界を迎えた状態になった。結論、ほとんど永瀬雪菜のせい』



 ………………




 『ほとんど永瀬雪菜・・・・のせい』? の、せい……




 ………………うっぷす。


「動きが鈍ったぞ! 畳み掛けろ!」


「ハンティングの邪魔した罰は償ってもらうぞ」


「目標の疲労を確認。排除する……!」


「クソッ! 負けない! 森、みんな、マモる!!」


 ……動けなくなった獣人の子供に襲い掛かる黒ずくめたち。

 それを見て、近くに転がっていた所々禿げて丸太みたくなっている木を力任せに持ち上げた私は、私は……私は!!


「死ねクソガk――」






「ほとんどっていうか、一から十まで全部が私のせいじゃんかよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっっ!!」






「「「「「ぎゃあああああああああああああああ!?」」」」」


「――!? オマエ、さっきの……?」


 一気に近づいて、涙を流しながら丸太をフルスイング!


 とどめを刺そうとしていた黒ずくめ5人をボロ雑巾のごとく吹っ飛ばす! 私の良心がボロ雑巾のようにズタズタになる!


 本当にごめんなさい!!



 雪菜の良心に9999のダメージ!


 効果はべらぼうだ!!


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