第77話 野生の獣人が現れた!
あとがきにキャラデザがあるので、見たくない人は設定の変更を。
・2024/07/06
一部修正
――ドガアアアアアアンッ!! ――バゴオオオオオオオンッ!
――メキメキメキ……グシャ!
「殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺」
「ユキナ様あああああああああああああああああっ! おやめくださいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
どうも。バーサーカーと化している雪菜です。
人は怒りが頂点になると笑ったり逆に冷静になると聞くが、今の私の内心がそれに当たるんだろう。
【スキル:激怒】。
本来なら一時的に強くなる代わりに理性が吹っ飛びかねない危険なスキル。だが、私には精神耐性系スキルがあるおかげで、少しだけ考える頭がある。
ただし、考えることができるだけで体の方は怒りに満ちている。すげぇよ。フツフツと体の奥底から怒りが込み上げて、目の前の駄馬共を半殺しにしたいと思ってるんだ。
ちょい暴走気味になるのが問題といえば問題かな?
『イヤアアアアアア! お助けえええええええええ!』
『何だよ何だよなんなんだよおおおおおおおおおおおお!!』
『ぅおおおおおおおおおおい!? 完全にオレらのこと狙ってんじゃねーか! しかも分散しないようにしてやがる!』
『まさかアイツらの仲間なのか!? またオレたちを、森の仲間たちを面白半分に殺しに来たのか!?』
『逃げろ! とにかく森の奥へ逃げるん――ギャアアアアアアアアッ!』
『『『『『ああっ!? リーダー!!』』』』』
あ、1頭吹き飛ばされた。
白目剥いているけど、致命傷も無さそうだし大丈夫だろう。
ああぁ、考える頭が中途半端にあるって辛いな。
本来なら駄馬共にトラウマ刻んだ時点で満足するはずなのに、ま~だ追い掛けちゃう。1匹ずつ白目剥かせてやると頭で止めようとする前に体が動いちゃう。
「ガァアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!」
「ユキナ様お気を確かにいいいいいいいいいいい!」
王都ギルドでも人生初のセクハラにブチ切れてバーサーカーになったけど、アレとは怒り方のタイプが違うわ。自然にブチ切れるのとスキルによってブチ切れるのと違うんだよ。
具体的には自分の意志で怒ってる訳じゃないから止め方が分からないってこと。
逃げるユニコーンを追い続けてかなり森の奥へと足を踏み込んでしまった。私自身が放った魔法によって地面は抉れ、木々が倒れ、無関係な聖獣と思しき生物も逃げまどっている。跡を必死に追いかけているらしいステラによるアフターケアーが必要だ。
(やっべー、本格的にどうしよ? ……ん?)
このスキル使い勝手悪すぎだろと思っていると、突然危機感が増す。恐らくは【スキル:危機察知】が働いている。
何か危険な存在が私を害そうとしているんだ。
一体何が――
――ザシュッ!
「ぐわッ!」
「ユキナ様!?」
……間違いなく厄介だな。攻撃された。それも視認できない程の速さで。私の思考以上のスピードで距離を詰めて。
武器は恐らく鋭利な刃物。痛みは無いけど衝撃が随分きた。一撃離脱の攻撃だけど、致命傷狙いの本気の一撃だった。
聖獣の森の奥にだけ住んでいる戦闘特化の生物か? そろそろ考える時間も惜しくなってきた。どんどん私が攻撃を受けている。
「ぐっ! ガッ、ぐふっ……!!」
「一体何が? ど、どこか痛いのですか?」
私でもほとんど知覚できないんだ。ステラには何が起きているのかさえ理解できていない。ステラ、直接の戦闘経験は乏しいから。
――ん? あれ? これスキル解除できるようになったっぽいな。そうか外部からの衝撃か。じゃあ、解除で。
【激怒】とか使えないスキル筆頭だったなー。
「理性がある分、普段の私の方が強――って、ブフォ!?」
謎の存在から、喉へダメージ! 息が詰まる!
そして出たのは少女らしさの欠片もない声!
「あーくっそ! 【ヘルプ】ぅううううううううう!!」
『〈次の攻撃〉……3秒後、背中への肘打ち』
右足に力を込める。ついでに【スキル:防御貫通】も。
――3……2……1……今!!
「喰らえ! カウンター・ラ〇ダーキック!!」
またの名を“乙女の喉に何しとんじゃわれぇキック”!
左足を軸にして回り、後方から迫った何かに渾身の回し蹴りを叩き込む。
ヒットする瞬間、腕らしき部分で防御されるのが感触で伝わってきたけど……その程度で防げる威力じゃねえわ!
全国のラ〇ダーファンの力受けてみやがれ!
「――っ!? ギャウンッ!」
衝撃音と共に悲鳴が聞えた。かと思えば、私を襲った存在はかなりの速さで突っ込んできたこともあって、これまたすげえ速さで横に吹っ飛んでいった。
次の瞬間には地面に激突。土煙が立ちこめる。
「ユキナ様! ようやく元に戻ってくれましたね! もう、一体何をしているんですか! さすがに今回は私も怒りますよ!? 突然怒り狂ったオーガのような表情になって、角をくださったユニコーン様たちに襲い掛かるなんて! しかも聖獣の森まで破壊してしまって! 納得のいくご説明をしてもらいますよ、ユキナ様!!」
「ブルウウウ! ヒヒィィィン!」
ステラ(と松風)がいろいろ言ってるが、無視だ無視。
世の中には知らない方が幸せなことがあるんだ。駄馬共の真実は墓場まで持っていくぞ。ていうか、私の口から説明とか嫌だ。
「けど、あ~……本当にどうしよ? やっちまった~~~!」
ユニコーンが全面的に悪いよ? これは事実だ。これだけは否定されてなるものか! でも、そのあとは“おまわりさん私です”じゃん!
異世界に来て初日で森にバカでかいクレーター作って良心痛んだのに、よりにもよって国で保護がされている場所で暴れちゃったよ!? 地球で言ったら、世界遺産に登録されている場所でバズーカをぶっ放したようなもんじゃんか! しかも絶滅危惧種クラスの珍獣にバカにされたとかそんな理由で!!
しかも私を襲ったのだって正体がなんにしろ、森を荒らした私を成敗しに来ただけのいい奴でしたとかならさぁ……
う~~~、カウンター喰らって随分派手に吹っ飛んだけど大丈夫だよね? 咄嗟に蹴りつけるのよりも押し出すようにしたから生きてるよね?
「ガッ、う。ゴッホゴホ!」
土煙の向こうからむせ込むような声が聞えてきた。
「ユキナ様、先程の……」
「えがっだよ~蹴ってゴメンねマジで~」
話通じるかな? とにかく土下座してでも話し合いに持ち込むしかない。幸か不幸か今の私は聖獣の言葉が分かるわけだし。
あ、それよりも治療が先か。
土煙が晴れていく。同時に襲撃者のシルエットも浮かび上がる。
できるだけ警戒させないよう、ゆっくりと近づいてみた。
「え~っと、ですね? 大丈夫っすか? いえ、私がやったんですけどね! そうじゃなくて、あの、まずは治療だけでもしたいと言いますか、土下座でも何でもするんでお話をですね、聞いていただけるとありがたいな~っと」
信じられないくらいの低姿勢で話しかけてみる。こっちの言葉が通じるかは分からないけど、とにかく誠意を伝えねば!
「それで、その、話を……」
「うるさい!!」
「したいn――“うるさい”?」
あれ? 今、普通に聞えていなかった? ユニコーンの声は若干普段と違う違和感があったけど、それがない?
「あの、私には『うるさい』と聞えたのですが……?」
「奇遇だな。私もだよ」
あれ? どゆこと?
ステラと顔を見合わせながら沈黙し、2人して声のした方へ向き直す。
風が吹き、ついに土煙が完全に晴れた。
襲撃者の正体も……明かされる。
「ガルルル……!」
それは、ボロボロの服を纏っていた。
それは、胸部分に布を巻き付けていた。
それは、目を鋭くして威嚇するように唸っていた。
それは、茶色い髪を逆立てている小さな子供だった!
その子は……髪と同じ色の耳と尻尾を持っていた!
「「じゅ、獣人の子供!?」」
その子はリリィと変わらないぐらいの年頃に見える。
野性味が溢れ、四足歩行の獣のように地面に爪を立てながら威嚇しているけど、間違いなく私たちと同じ“人”だ!
「オマエら、タオす! 森、アらす奴ら、ユルさない!!」
そりゃ許されませんよね!
――って、そうじゃなくて! 何で聖獣の森のこんな奥にボロ着を身につけた獣人の子供がいんのさ!?




