表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
102/145

第74話 聖獣の森

・2024/07/01

 一部修正



――ギュイイイイイイイイイイイイイイイイイィィンッ!!



――ズガガガガガガガガガガガッ!!



「掘りまっせ~どっこまでも~♪ 掘りまっせ~いっつまでも~♪ 掘る掘るボクらの目的地までっー! 目的地は・す・ぐ・そ・こ・だー!!」


 はーい! 現場の穴掘り少女雪菜でーす!

 自作の歌を歌って暗い穴の中を活気づかせてます! 【光系魔法】で光源も作ったから穴の中なのに暗くない。


 地面の中、【土系魔法】で作った巨大ドリル(大きさの比率とかはグレン〇ガンでも思い出せ)片手に汗を流す少女とかレアな存在になってる私は、以前マジェラさんから貰った手ぬぐいで汗や汚れを拭き取る。


「……目的地まで、あと10メートルってところかな」


 昨日の時点で丸1日近く使って9割掘り進んだから、2日目の今日は楽ちんだな。崩れ落ちないように魔法で補強した通路も大丈夫そうだし、掘るたびに出る大量の土はその度アイテムボックスの中に収納してるからトロッコもいらない。



 地球で穴掘ってる人たちが見たら顎が外れるほどビックリだろうな。魔法とスキルで解決した結果、1人穴掘りマンだ。


 それにしてもさっきは珍しい体験したな。

 周囲の土壁を補強する寸前に、壁からモグラっぽい生物が出て「おんどりゃあ! 人様の縄張りで何しとんじゃあっっっおおぉん!?」みたいな感じで一瞬だけこっちに敵意向けたんだけど、先程からすごい音を立ててる“グ〇ンドリルブレイク(仮)”を見て目が飛び出すんじゃってぐらい驚愕して、「いえいえ何でもありやせんぜ。アッシに構わず作業してくだせぇ。そんじゃここらで失礼しやす」的な雰囲気を出しながら全速力で逃げていった。


 ……どうやらモグラ界では、よりすごい穴掘りができる奴が偉いみたい。モグラに勝ったから何だよって話だけど。



 ところで、



「どしたんステラ? お腹押さえて。痛いの?」


 後ろにいる、松風を引いたステラに聞く。

 昨日から調子悪いみたいなんだよな。いや、理由は分かりきってるんだけどね? 私たちがしてるの犯罪スレスレだし。


「いえ、何でもありません。何でもないのです。そうです。私はユキナ様に付いていくと決めました。それにこれは人助けなのです。ベルさんのお母様を助けるためなのです。穏便に、最低限の素材を届けるだけなのです。主よ、お許しください」


「ブルルッ」


 ステラが精神的な板挟みになってる……。んで松風はドリルのことめっちゃ怖いはずなのにステラに付き添ってる。

 ついでに、気のせいか私を見る目が冷たい。


 けどしゃーないやん。思った以上に森の警備が厳しくて、コレしか思いつかなかったんだからさー。






 聖獣の森。

 それは時計の針で大陸の6時方向にある巨大な森のこと。


 本による知識とステラから聞いた話によれば、ちょうど聖国と帝国を完全に分断するようあるから、両国民はそれぞれ帝国と聖国に行こうと思ったら1度王国を経由しなければならない。反対方向は切り立った崖&水性魔物と大波フィーバーな海だから通るのは不可能。


 どうやらこの森、書物に残っていない程の大昔から存在しているらしく、普通の動物とも魔物とも違う“聖獣”と呼ばれる生き物が生まれることでも有名らしい。“ユニコーン”だったり“カーバンクル”だったり、そんな地球の書物にもあるような幻想的な生き物が数多くいる。さらに独自の生態系ができているから、植物にも珍しいものが多い。


 そんなこともあり、聖国が建国されてからしばらくしたぐらいで聖獣の森を保護する方針が国際的に決定された。それぞれの国が監視し合い、基本的に聖獣を殺さないモノとして扱い、森で採れる希少植物も取る数に制限が付けられた。あとは探索する日にちとメンバーの決定に探索する森の範囲の申請を明確に各国へ義務づけた。破った場合は厳しい処分がくだされるってね。



 そこまで聞けば、地球でも問題になっていたことが聖獣の森でも起こると予想できる。――密猟だ。



 聖獣の素材や希少な植物の珍しさなどもあり、国際法ができるより前からそれらを狙って聖獣が殺されることがあったが、決まりができ、各国が動くようになったことで悪い意味で有名になってしまった。

 当初は大変だったらしく、賄賂で監視員を抱き込もうとする貴族がいたり、素材を高値で売ろうとする密猟者が多くて混沌を極めたそう。


 まあ、それも昔の話。

 今では監視体制も充実し、警備や監視に割り当てることができる人員も多数動員されていることから表だった密猟者は居なくなった。たまに裏組織に雇われたと思われる者が侵入を試みたりもするが、大抵の場合は森に入ることすらできずブタ箱にブチ込められる。

 つまり、それほど警備が完璧で侵入が厳しいということ。






「だからと言って、地中に巨大な通路を作って警備の真下を通り抜けようだなんて……。ユキナ様、以前にもこのようなことされていませんよね?」


「してないしてない。私、犯罪者、違う」


 したのは外国の囚人とかだよ。麻薬王とか。そんなことできるツテと情報力と資金があるなら、もっと社会のために生かせって思うけど。


 ベルちゃんに会った翌日、必要な物を揃えて松風と共に街の外に出た私たち。


 めんどくさい連中のことも気にしつつ、聖獣の森付近をちょっと気になって見物に来た旅人を装って警備の状態を見てみたが、穴らしい穴がない。

 検問所もあれば、隙間を作らないための壁もある。それも2重に。ご丁寧に刺さったら痛そうなトゲトゲが壁の上で獲物を待っている。

 等間隔で監視塔も建てられており、下だけじゃなくスキルや種族特性を使って上からの侵入を試みる奴への警戒もしている。巡回兵も割と多い印象だ。近くに寄った時に聖女スマイルやったけど、会釈しただけでピクリとも表情筋が動いてなかった。それに相当訓練してるんだろう、1人1人が並の騎士と同等かそれ以上の実力を持っていそうだった。


 今回の私たちの目的はベルちゃんのお母さんの病気を治すために必要な薬――その材料を届けることだ。

 街で買えるものは全部買った。ただ残り2つがどうしても手に入らない。それも当然。聖獣の森で手に入るものなんだから。



 で、考えた結果が穴掘り作戦だった。



 他にやってる人いそうだと思ったら前例がないとのこと。

 どうやら剣二は穴掘って刑務所から脱獄する地球の実話や、ドリルの存在を異世界に伝えなかったようだ。

 ステラもドリルの素晴らしさに開いた口が塞がらなかった様子。


 さすがに近くで掘ってたらバレるんで地味に遠くから掘り進めているし、音が聞えないよう深くで通路を作っている。あ、もちろん、やることやったらちゃんと通路は崩すよ? 出入り口も含めて。じゃないと悪い奴らに使われるからね。


 役に立ったのが新たに取得した『マップ』というスキル。

 このスキル、発動すると自分の周囲を立体マップとして把握できるようになるのだ。だから、どこをどのくらい掘ればいいのかある程度分かるし、掘る位置が上下左右にズレても修正できる。そこに【探知】も使っているので安全対策はバッチリ。掘り終わって外に出たら、聖獣がちょうど真上にいたせいで“グ〇ンドリルブレイク(仮)”が直撃してしまいましたじゃ、あんまり過ぎるからね。


 犯罪? だからどうした?

 ここでベルちゃんを見捨てたらリリィに合わす顔がないわ! 子供に暗い顔は似合わん! バカみたいに遊んで笑うのが子供の仕事じゃ!!


 そんな全米のロリコンという名の紳士共が、涙を流しながらスタンディングオベーションしそうな宣言を心の中でして少し。



 ついに光が見えた。



「うおっ、眩し!?」


 下から太陽を覗く形だから目がきつい。


 ステラと松風にも注意を促しつつ、最後の出口部分を階段状に補強して2人と1匹で穴の外――聖獣の森に出る。


「……へぇ、ここが」


「……聖獣の、森」


「ブルルッ」


 正直、聖獣の森っていっても森は森だろ?ぐらいの認識だった。そこに住んでいる生き物が特別なぐらいだと。



 ……とんでもない。空気どころか、体で感じられる感覚全てがこの森の異常性を教えてくる。



 それ・・は言葉でどう表せばいいのか本気で分からないものだ。無駄に表現を伝える言葉が多い日本で生まれたのに、今の気持ちを表す言葉が見つからない自分の語彙力の無さが恨めしい。


 私だけじゃない。ステラも森の不思議パワーを感じてちょっとだけマヌケな顔をしちゃってるし、松風は誰が見ても分かるくらい居心地良さそうにしている。動物は特にこの森と相性がいいのかな?


 風で揺れる木々。遠くから聞える聖獣のものと思われる不思議な鳴き声。葉の隙間から私たちを照らす太陽の光。


 自意識過剰かもしれないけど、まるで森に歓迎されてるようだった。


~おまけ~


雪菜「私たちって、森に歓迎されてる?」


ヘルプ『歓迎されていません。むしろ出て行け』


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ