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第72話 夕暮れの河川敷じゃないけど拳握ります

・2024/06/30

 一部修正


 ステラと話し合った結果、できるだけ穏便に解決したいそうなので最も近い街か村で数日やり過ごそうという結論なった。


 というわけで、やってきました国境門に近い街。

 せっかくだし観光しますよもちろん。


 トリストエリア聖国の国境門は3つある。

 1つは私がステラと入った真ん中の国境門。もう1つが今回通ろうとしている左側の国境門だ。残りは右側にある別の国とを繋ぐ国境門だな。見る機会に恵まれなかったけど共和国と繋がってるらしい。


 この街には1度王国を経由してから帝国に入る人たち、もしくはその逆が多く来る関係で、他より多く取りそろえている物がある。



 ――武器屋だ。



「では、回復魔法を専門に鍛えている方はメイスを武器にしている人が多いと言うことでしょうか?」


「そうさな。回復職連中は杖や魔導書を使っているのも当然いるが、奇襲もある迷宮じゃ扱いやすく振り回すだけでいいメイスを好んでいる冒険者が多い。回復魔法が十分使えて戦闘も問題なしってんなら別だが、中々いない。パーティー組んでる奴らなら、役割分担で一芸特化の方が連携もしやすいからな。自分がするべき事をハッキリさせててれば、強さの方向性も決めやすい」


「しかし、やれることが多いに超したことはないのではないでしょうか? 一芸特化の方がその分野で強いのは分かるのですが……」


「お嬢さんの言うことも分かるが、それは才能がある奴の話だ。普通のがそれをやると器用貧乏になりやすい」


「言われてみれば……」


「大量の魔物と連戦する可能性もある迷宮の中だと、途中で魔力が切れることもあり得る。例え話をするとさすがに長くなっちまうが……余裕があるなら長物の1つは持っていた方が安全って訳だ」


「なるほど。勉強になります」



 ……気難しそうな店主だったにも関わらず、もうステラは仲良く話してる。これが女子力の差か。

 私が店に顔出したら「冷やかしなら帰れ」って言われたのに。


 私が次の目的地に帝国を選んだ理由――迷宮。

 そう呼ばれるものが帝国にはあるという話。


 ハイリスクハイリターンで大量の魔物と戦うことができるそこに、どうしても早めに行きたかった。

 本で読んだだけだから具体的にどれくらいラノベとかでも書かれている迷宮ダンジョンと類似点があるかは知らんけど、ここらでいっちょ修行パートに入るのもいいと考えてたりする。



 まさか国境門で足止め食らうとは思わなかったけど。



 そんな理由で武器屋が多いこの街。

 門の近くで昼間から何もせずにしている親切そうな街人Aさんに「いい武器屋知らない?」と聞いた結果紹介されたのが今いる店。

 追い返されそうだった私と違って、すぐにステラは店主と仲良くなった。


 おっかしーなー? 私、称号の効果で第一印象に補正が掛かってるらしいんだけどなー? 【幸運(大)】といい、効果を発揮してほしいモノに限って全然効果を実感できない。スキルだけでなく称号にまで裏切られるとか、どないせい言うんじゃい。


「ユキナ様? また遠い目になっていますが……」


 ステラが心配そうに覗き込んでくる。

 普通にいい子や……


 しかし“また”ときたか。“また”って言われるぐらい遠い――てか、死んだ魚の目になってたのか。身に覚えありすぎるな。

 アッハッハッハ!(ヤケクソ笑い)


「おいアンタ。その気持ち悪い笑いやめてくんねーか? 客が来なくなっちまうだろうが」


「……ほう」


 腕をまくって、ポキポキ拳の骨を鳴らす。


「表に出ろ店主。私の女子力(物理)を見せてやんよ……!」


 すかさずステラが羽交い締めしてきた。

 ナニヲスルカー!


「ケンカはダメですユキナ様!」


「離せぇえええええええええ! このクソ野郎に女子の腕力を味あわせてやるんだあああああああああああっ!」


「上等だ。オレに勝てたら店の品1つタダでやってやんよ。その細腕で届くような鍛え方してねーぞオレぁ……!」


 やってやらぁ!!

 唸れ私のコ〇モォオオオオオオオオオオッ!!




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「争いのあとはなぜこんなにも空しいのか……」


「普通に反省してくださいユキナ様」


「すんません」


 ケンカは私が勝った。

 コークスクリューが決め手だった。


 どこぞの少年マンガみたしに勝負後、私のことを認めた店主。

 話を聞けば自分はそれなりに人を見る目があるはずなのに、私のことが戦闘ド素人というかチグハグに見えたそうだ。

 武器屋をやっていると、たまに態度と実力が見合ってない奴が来るそう。若い頃はドワーフの元で修行してただけあって腕に自信もあるからプライドも高い。なのであまりに酷いのは門前払いにしたりすると言った。


 「こんなこと初めてだ」とぼやいてた店主を見て思ったことはチートスキルによる普通だったら早すぎる――というか異常な私の成長スピードと、それに伴う認識の食い違いに関して。

 中途半端に見る目があると、私は店主が言っていたとおり相当チグハグな存在なんだろう。称号による補正じゃ庇いきれないぐらい。


 ごめんな称号。勝手に悪いと決めつけて。

 ただし【幸運(大)】、テメーは裏切ってんの確定だ。


 まあ、初心者用のメイスがタダで手に入ったので良しとするか。

 今は私の【アイテムボックス】に入っている。状況に応じてステラに使ってもらうつもりだ。ステラ自身、せっかくだから見苦しく見えないくらいには扱えるようになりたいと言ってた。時間を見つけて練習するそうだ。


 ホンマ努力家やな~この子。

 ついつい頭を撫でてしまう。


「うぁ…………どうしたんです?」


「いやー、急に撫でたくなって」


「む、子供扱いされているみたいです」


「嫌だった?」


「……いいえ。ユキナ様の撫でる手つき、とても優しくて温かいので、私は好きですよ。少し恥ずかしいですが」


「照れるな照れるな。余計撫でたくなるだろが」


「っもう……」


 頬を赤らめながらも結局撫でられ続けるステラ。


 ……うん。女子力でかなわねーよ。何この男子が考える理想の女子、その1つの答え? 日本にいたらちょっとしたことで暴動起こりそう。


 そんな風にちょいと百合しい雰囲気を区切りのいいところで終わらせつつ、ステラと今後数日の予定について話し合う。


 めんどくさい奴らが外にいる以上、ギルドの依頼も受けにくい。下手に接触してこない街中が1番安全だから、居場所が特定されるかもしれない外での依頼は危険だ。だからといって、街中で受けられるものなんて雑用がほとんど。暇を潰してお金稼ぎするにしても時間が勿体なく感じる。


 さてどうしようか? とりあえず冒険者ギルドに行って、依頼だけでも見てみるか。案外おもしろいのがあるかも。



 そんなことを相談していた時だ。

 ステラの目線がある一点で止まった。



 視線を追えば、噴水近くのベンチで暗い顔をしてる小さな子が目に入る。ついでにステラの心配そうな顔も。


「……しかたないなー」


 見ちゃったものはしゃーない。

 ここで見なかった振りをしたら、仮とはいえ聖女の名が廃る。


 私はステラの手を引いて、その子に声を掛けることにした。


 迷宮に関しては4章で詳しく触れます。

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