第9話 突然の警告
・2023/04/05
ほぼ全て書き直し。
「うわ~お……」
図書館の中へ入ってからの第一声がそれだった。
端的に言うと広すぎるし、蔵書量が半端じゃない。
「いやいや、これテレビで紹介された外国の図書館とかと同レベルじゃん! しかも、身分と身なりがしっかりしていれば平民でも利用可能って!?」
「お姉さん、図書館ではシィー!」
「あ、はい。すんません」
静かにするのは世界共通なのね。
周りをキョロキョロしながらも受付で司書さんにリリィが身分証を提示し、同行者として私も閲覧できるように許可を取ってもらった。
その際の司書さんの身だしなみチェックは厳しかったと言っておく。
「リリィはどうするの?」
「ユキナお姉さんの用事が済むまであっちで待ってる」
リリィが指した方向には児童文学コーナーがあった。同じぐらいか少し年下の子が座りながら本を読んでおり、近くには親御さんらしき人たちもいる。
「なるべく早く済ませるようにするよ」
「うん。待ってるねー」
ここでリリィとは一旦別れ、先程司書さんから聞いたスキルに付いての本がある一角へと向かう。……地味に遠くて案内板頼りだけども。
「しかし、本――てか紙はお高めらしいし、汚かったり横暴じゃないなら平民にも利用できるようにするとか、どんだけ太っ腹なんだよこの図書館?」
「正確にはこの国の懐が広い、と言うべきだね」
――!? 誰!?
突然の声に振り返れば、そこにいたのは変に輝いて見える中性的なイケメンだった。それも……角と翼の生えた。
(誰だコイツ? 男――いや、胸がある! 女だ!)
『〈魔族〉……この世界に存在する種族の1つ。人種より寿命がやや長く、回復系スキル・防御系スキル・光系魔法スキルの適性を一切持たないがそれ以外を高水準で取得しやすい。角と翼は個性の証』
【ヘルプ】からの助けで正体が分かった。そうか魔族か。
魔族。異世界ファンタジーものだと良く悪役だったり、種族的な違いから人と仲良くなかったりする種族だけど……
「えーっと、何用で?」
「何、初めて来たからか不安そうで気になっただけだよ。それで、つい、独り言に反応してしまっただけの話さ。不快になったのなら謝罪する」
「いえ……」
何と言うか……普通の人っぽい。
いや、女性なのにイケメンみたいな仕草とかは目立つけど、鼻につくような嫌さがない。どこまでも自然体だった。
当たり前のように図書館にいることといい、この国では魔族かどうかは関係ないと見て良さそうだ。あとで他種族のことも調べてみよう。
「それで、この国の懐が広いってどういう意味?」
「そのままの意味さ。図書館は国の経営だからね。先進的な知見を持っていたとされる初代国王の方針によって、本などの知識を平民にも広げられるよう徐々に改革していったのさ。識字率を上げ、身ぎれいにすることを覚えさせ、人々の暮らしに余裕を持たせることで、本などによる知識を得られる下地を作ったんだ。本格的に図書館が平民にも利用されるようになったのは、ここ数十年の話らしいが」
「へー!」
すごいな、この国の初代王様。
それって内政モノとかである、国民全体の質を底上げするってことに繋げられるのじゃん。普通にするなら最低でも数十年は掛かるやつだよね。
「すごいね、この国」
「本当にすごいよ。ボクは仕事の関係で他国に行ったことがあるが、そういった方面ではダントツだった。王族が人格者っていうのも大きいね」
トップが話の分かる人っていうのは大きいな。私の知ってる(ラノベとかの)王族って振れ幅デカいから、実は心配だったんだ王族の性格。
「わざわざ教えてくれてどうも」
「いいさ、これも何かの縁だ。用事も済んだしボクは帰るとするよ」
ひらひらと手を振りながら帰って行く名も知らぬ魔族さん。最後までイケメンだったな。何で胸があるんだろ?
宝塚歌劇団とかに所属していれば人気出そうと思ったり。
「――ってこんなところに突っ立っている場合じゃない」
スキルの本を探さねば~!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「とりあえずは、こんなものか?」
イスに背を預けて大きく伸びをする。
いくつかの本を読み、役立ちそうだと思ったスキルを片っ端からメモ代わりの木札に書き込み、ようやくそれのピックアップが終わったのだ。
思っていた以上にこの世界はスキルが多かった。
戦闘用のものから魔法まで、職業に関係したものから何に使うんだよってスキルを知ることができた。
時間は掛かったけど何とか纏められたと思う。
SPとの兼ね合いも計算したことだし、早速取得していこう。
『〈遠見(中)〉……さらに遠くまで見れるようになる』
『〈探知(中)〉……一定範囲内の存在を知覚できる』
『〈聴覚強化〉……通常の数倍、耳が良くなる』
『〈思考加速〉……通常の数倍、思考速度が上がる』
6SPを消費して手に入れたのがこれら感覚・知覚を強化するスキル。
これで私を中心とした一定周囲に魔物の類いが入り込んでもすぐ気付き、すぐに考えて行動できる。万一があっても目と耳で捕捉可能だ。
『〈攻撃力上昇LV.4〉……自身の物理攻撃力を上げる』
『〈速度上昇LV.4〉……自身の速度が上がる』
8SPで取得。どっちも身体強化系スキルだね。
防御面と会わせてフィジカルオバケになったけど、見た目に変わりはない。筋肉も付いた様子がない。要検証だ。
『〈鉄人料理人〉……プロの料理人並みの才能を得る。技術・目利きに補正(中)。作った食べ物に味の補正(小)』
………………衝動的に取った。反省もしなければ後悔もしない。
最初の段階で【料理人】のスキルを覚えてから、上書きするように取得した。料理とか興味あったんだからいいじゃん。
やっぱ家でお世話になっている以上、最低限の手伝いはするべきだと思ったと言いますか……ぶっちゃけ、美味しいは正義だと思います。
次だ次。どんどん取りましょう~。
『〈水系魔法LV.2〉……水に関係した魔法を使えるようになる。LV.4になると氷に関係した魔法を行使できるようになる』
『〈風系魔法LV.3〉……風に関係した魔法を使えるようになる。LV.4になると雷に関係した魔法を行使できるようになる』
『〈土系魔法LV.4〉……土に関係した魔法を使えるようになる。LV.4になると重力に関係した魔法を行使できるようになる』
『〈光系魔法LV.2〉……光に関係した魔法を使えるようになる。才能があると回復魔法が使えるようになる』
生活水を出せるようにと【水系魔法】を、【炎系魔法】と同じく攻撃に転用したいと【風系魔法】を、拠点作りもできて重力とかいう中二心をくすぐる魔法を使いたくて【土系魔法】を、才能があれば治癒とかできそうだし検証したいと【光系魔法】を、それぞれ必要なレベルまで上げた。
現在の所持SPはたったの8SP。無駄使いはできない。
しかし、ついでだし【闇系魔法】も取得したいんだよなー。
『〈闇系魔法〉……闇に関係した魔法を使えるようになる。才能があると精神魔法が使えるようになる』
本に載っていた【闇系魔法】の説明書きがこれ。
精神という目に見えないものに作用する魔法とかいかにも悪役っぽいけど、有効になる魔物が現れたときのことを考えて今の内に才能の有無だけでも知っておきたい。あと単純に魔法系スキルのフルコンプとか夢じゃん?
「ぜ、全属性だと!?」って驚かせたい気持ちもある。
「一先ずLV.2――いや、LV.1を取得しておくか」
目の前のスキルリストを操作し、【闇系魔法】を取得しようとし――
(!)=================(!)
『〈warning! warning! warning!〉』
(!)=================(!)
「ひょわっっっ!?」
ななな、何だ何だ!? 何だこの警告音!?
私は変なアプリやサイトなんて開いてないぞ!
『〈重大な警告〉……そのスキルは現在の永瀬雪菜が取得することに適しておりません。取得した場合、重大なエラーが起こる可能性が非常に高いです』
「重大なエラーって何のことだ!?」
おい【ヘルプ】!! 心臓が飛び出るくらいビックリしたぞ!!
あぁ、すいません! すいません! 図書館でうるさくしてすみません!
全部うちのスキルが悪いんです! 私は被害者なんですよ! だから話を聞いて下さい司書さん! その鈍器みたいな本を何に使うつもり!?
その後、どうにか誤解が解けて助かったけどそれ以上いる勇気も無く、リリィを連れて足早に図書館を後にした。
結局あの【ヘルプ】からの警告音が心臓に悪すぎて、【闇系魔法】をどうこうしようという気にはなれなかったよ。
【取得可能スキルリスト】 〈所持SP:8〉
・闇系魔法LV.1 (必要SP:1)
・光系魔法LV.3 (必要SP:1)
・炎系魔法LV.7 (必要SP:50)
・水系魔法LV.3 (必要SP:1)
・風系魔法LV.4 (必要SP:1)
・土系魔法LV.5 (必要SP:1)
・攻撃力上昇LV.5 (必要SP:2)
・速度上昇LV.5 (必要SP:2)
・黄金料理人 (必要SP:2)
・遠見(大) (必要SP:2)
・探知(大) (必要SP:2)
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