初めての依頼その①
ライズ達は迷宮都市ブランダールをでて西の森に向かっていた。そんな道中で突然ディジェスが声を荒げる
「すっごい気になってる事あるんだけど!」
いきなり顕示したディジェスが2人の歩いてる前に立ち歩みを止める。
「「な、なんだ?」」
見たことのないディジェスの剣幕に2人はすこし引き気味になりながらも応じる。
「あのさあ!なんで2人共着の身のままなの!?僕がせっかくあの人族達を倒してけっこう多めの硬貨が手に入ったのに武器とか防具を買おうと思わなかったの!?」
そう言われて2人は視線をずらしお互いを見ると、ライズに至っては遺跡で見つけた剣を腰にさしており防具に関しては最初の服のままで、アイルに関しては宿屋の替着としておいてあった質素な布の服のみだった
お互いがお互いを見合った後、少し気まずげにディジェスに言った。
「「ま、まあ俺らは魔術があるし?」」
必死に言い訳を言うが、それは火に油を注ぐ様な結果になるだけだった。
「君達は魔術があるって言えるほど魔術を使いこなせてないでしょ!?まだ初級上位までしか魔術を使えないのによくそんな事がいえるよね!?」
「いいかい!?」
ディジェスは一息にそう言うと、一呼吸置いた後に魔物に関して話し始めた。
「魔物って言うのはね、一般的に生物が魔力にあてられて更に生物としての格を1つあげた存在のことを言うんだよ。魔物と普通の生物の見分け方って言うのはその生き物が魔力を扱えるか扱えないかが指標の1つになるんだよ。」
「「は、はい。」」
「それで!普通の動物や植物でも危険な生き物はいるよねぇ?更に全体的能力が底上げされていてかつ魔力を大なり小なり扱える様になったのが魔物なの!確かに今回の依頼は小悪鬼と亜犬と小妖だから弱い魔物だけど油断してたら簡単に君達はやられるくらいの魔物なんだよ!?それなのにさ!」
そう言った後ディジェスはまずアイルを指差し
「武器をもってない!極め付けは宿屋の替着のまま!なにそれ!?ただの普段着じゃん!敵の攻撃なにも守れないよ!?小悪鬼や亜犬はボロボロながらも剣とか槍をもってるんだよ!なのになに!?素手で戦うの!?そして次!ライズ!」
凄まじい剣幕でアイルにダメ出しをした後、ディジェスはライズに向かって言い出した。
「ライズに関しては一回僕が魔物と戦ってところ見てるよね!?あの猟犬の牙とか見てるよね!?その格好不味いと思わなかったの!?そんな服じゃ一発で重傷になるよ!いくら剣を持ってるからって余裕かましすぎ!!」
「「ごめんなさい」」
2人は素直に謝る。そして少し疲れた様に言った。
「僕が常に守れれば良いけど、いつだって守れる訳じゃないんだから。せめて少しでも生存率を上げる手段をとってよ。」
そんなディジェスのしおらしい態度に2人は強く頷いた。
「よっし!そしたらオレはまず何ができんのかステータスみてみるか!」
そんな声とともにアイルはステータスを確認する
ーーー
LV 1
名前 アイル
種族 人族
刻印 戦神と術神の加護
ユニークスキル
闘眼
術眼
アクティブスキル
属性魔術LV1
属性魔法LV1
武芸全般LV1
パッシブスキル
魔力増大LV1
魔力超速回復LV1
魔力支配LV1
ーーー
「んー、よくわかんねーな。」
アイルは自らのステータスを見ながらそう呟く。
「もし良かったら、僕に見せてくれたら知ってる能力だったら説明できるよ」
「ほんとうか?じゃあこれみてくれよ」
そういいアイルはライズとディジェスにステータスを開示する。
「え、アイル、闘眼と術眼もってるの?」
「なんだそれ?」
「闘眼って言うのは近接戦闘及び遠距離戦闘を行なう際に大幅に補正が入るものだよ。術眼は魔術や魔法を扱う際に魔力を扱うと言うことに大幅に補正が入るとと言うものだね。どちらもユニークスキルだからかなり強力なものになるんだけど、どう?」
「んーよくわかんない、んでも今の所魔術使うのに難しいとかは感じた事ないな。」
「僕も昔にいた勇者が所持していたってていうのとさっきのくらいしかわからないな。ユニークスキルっていうくらいだからすごい能力だとは思うんだけど」
「まあ、いいや。そしたらライズのも見せてくれよ」
「ん?俺?良いよー」
ーーー
LV 1
名前 ライズ
種族 人族
ユニークスキル
能力創造(隠蔽)
アクティブスキル
属性魔術LV1
属性魔法LV1
パッシブスキル
魔力増大LV1
魔力超速回復LV1
魔力支配LV1
攻防術式LV1
ーーー
「こんな感じだな」
「似たりよったりだけど、武芸全般ってやつがないなこれってなんなんだ?」
「そう言えば2人とも所持している能力って言うのは念じればだいたいどんな能力かわかるからね?」
「まじで?……まじだ。武芸全般ってのは全ての武器の扱いと格闘戦に大幅な補正が入る能力らしい」
「俺の攻防術式は聖魔力と負魔力を術式にあわせて自動で使用するってものだな」
そんな感じでしばらく能力の確認をした後。アイルとライズはまあ今回の依頼はそんな武器とか無くてもいけるな、そんな会話をしながら移動を開始した。
3人がどうやって戦うかなどを話しながら歩いていると気がつけば依頼の場所となる森に到着し、しばらく森を歩いていると目の前の茂みから小悪鬼が3体出現した
「ギ!ギギィ!」
「ギィギィ!!」
「ギギィ!ギィ!」
醜悪な顔立ちをし、ボロい布切れを身に纏いボロボロな剣を持っている典型的な子悪鬼達はこちらを警戒する様に様子を伺っていた。
「お、こいつらが子悪鬼か」
「う、オレけっこう苦手かも…こいつら生で見るとわりと人間味あるな」
「君たち悠長に構えすぎ!ほら!もうくるよ!」
ライズはもの珍しい感じで、アイルは少し怪訝な表情を浮かべ、ディジェスは2人に緊張感を促す、三者三様の反応をみせるが拮抗が解けたのか1匹の子悪鬼が剣を振り回しながら近づいてきた。
「アイル、作戦通り頼んだ。」
ライズは短くそう言うと魔術の詠唱に入る、
「りょーかい」
アイルはそう言いライズの前に立ち、剣を振り回している子悪鬼に近づいていき、振り回している剣を素手で弾き体勢を崩した後にすかさず蹴り飛ばした。
「すげーな、初戦闘で剣とか殴れんの?」
「んー、なんか自分に当たる前にどう言う角度でどのぐらいの速さでどのくらいの力で踏み込んでくるのかわかんだよなあー」
「あー、それが闘眼の効果なのかもしれないね」
「術式・炎柱」
そんな会話の後、ライズの火属性初級中位魔術が発動しアイルが吹き飛ばした子悪鬼の下から炎柱が起き上がり子悪鬼を1体倒した、そして続け様にアイルが残りの近づいてきた子悪鬼に攻撃を仕掛けそのまま1体倒す。そして気付いたらディジェスが1体魔術により倒し戦闘が終了した。
「なんなく勝利、だな。」
「まあこんなもんだろうな」
「油断しないの、ほら解体するよ」
「そういやディジェスが遺跡で使ってたあの魔法でやればいいんじゃないか?」
ライズはふと思い出したかの様にディジェスに告げるがディジェスはどうやら最初に関しては自分らでやることを推奨しているらしい
「僕が魔法をつかっても良いんだけど、そしたらどの部分が素材になってどこが回収対象とか覚えないだろうし魔物によっては毒だったりとかあるから自分らで最初はやったほうがいいよ。」
そんな会話の後に小悪鬼の解体を終えると、次なる魔物を探しに探索を開始する。
ふらふらと森を3人で歩いていると、ディジェスが魔物について話し始めた。
「そういえば、2人に話しておかないといけないことがあるんだけど、魔物なんだけどただの子悪鬼でも強力な個体がうまれることがあるんだ。というのも魔物は長い時や経験値を積むと進化といってすごく厄介になるんだよ」
「進化?」
「魔物は進化することで強力になってくるんだよ。1回の進化で戦闘力が跳ね上がってくるんだよね。だからもしそういう魔物を見つけたら倒せそうだったら倒さないといけないっていうルールが昔はあったよ」
「ふーん…てゆーかそれこの状況で言うか?」
「え?」
「いや、だってさそれフラグってやつだろ。昨日宿屋の一階の酒場でこう言う事を確か起きそうな環境で言うとそれが実現する……」
「そうだぞ、ディジェスさん。オレもライズと一緒に話しを聞いてたけどそれはフラグ……」
ライズとアイルがディジェスに対し注意をしようとすると突然森の奥から魔物らしき生物の唸り声が響き渡った
「「ほらみろ」」
2人はフラグを立てたディジェスに少しばかりの侮蔑の目を送る
「わ、わかったよ。様子見して倒せそうだったら僕が強い個体を倒すから2人は他の個体を倒してよ。」
「「はぁ、わかったよ」」
そういいディジェスは隠蔽の魔法を3人にかけると魔物の声が聞こえた方向に歩き始めた。
ーーー
気配を消しながら声の発生地に近づくと、急勾配の崖に当たり見渡す限りの木々が広がっていた。だがちょうど崖の下をみると拓けている場所がありそこには1匹の巨大な子悪鬼とそれよりか少し小さい子悪鬼が3体、そしてそれに平伏する様にいる魔物の群れがいた。
よくみると子悪鬼の一番大きい個体はなにやら椅子の様なモノに座って自らに平伏する魔物を醜悪な笑みで眺めていた。
〔おい、ディジェス。あのデカイのはなんだ?〕
〔あいつは……下位悪鬼で貴族の階位をもつ子悪鬼だね、危険度で表すと単体だとCランクで下位悪鬼が率いる魔物の集団の場合はC++になると思うよ〕
〔なんだ、++って。〕
〔っと、まってね……今アイルにも念話を繋げたからこれで喋れるよ。アイル念じる様に喋ってみて〕
アイルは突然脳内に聞こえた声にびっくりしながらも何度か試す様に喋りだした。
〔い、おい、これで聞こえてるのか?〕
〔うん、大丈夫だよ。さっそくなんだけど、今あいつらをどうしようか考えてたんだけどアイルはどう思う?〕
〔うーん。オレの見立てだとディジェスさんが参加してくれんなら全員無傷でいけると思う。ライズと2人だったら、少し厳しいけどなんとか倒せるとは思うよ〕
〔え、アイルあいつら2人で倒せると思うの?〕
〔オレはそう思うなー。あいつら全員魔術耐性もってる魔物いないし、戦闘開始と同時に魔法を使ってあの大将を倒せば後は数は多いけど平気だと思うよ〕
〔そっかー……そしたら、いっかいやってみる?〕
〔えー危なくねーディジェスがまとめて倒せば良いじゃんー〕
〔ライズそれだといつまでたっても強くなれないじゃん〕
〔んー、わかった。そしたら俺が魔術つかってあのデカイの倒せばいいんだな〕
そんな感じで作戦を練った後にライズは魔術の詠唱をはじめ、
「術式・氷露」
ライズが魔術を発動すると、下位悪鬼の足元に青い円が現れ下位悪鬼を《ノーブルゴブリン》を凍らせていく。
魔術が完全に下位悪鬼を凍らせるとライズは続けて魔術を唱えた。
「術式・雷撃」
ライズの目の前の宙空に雷の輪が3つほど生み出されると、凍っている下位悪鬼に勢いよく飛んでいき下位悪鬼を倒した。
「おし、まずは一匹!」
ライズがそう言うのと同時にアイルは勢い良く駆け下り始め交戦をはじめた。