忌み子
読んでくださりありがとうございます
今回は少しの残酷描写と、友情的なものになっている筈です。
わりかし広かった遺跡から出てくると、そこには木々の広がる光景が待っていた。
〔だあー!!なんだよ!この出口、洞窟もいいとこじゃねーか!〕
ライズが少し苛々しながら森を歩いているとすかさずディジェスが話しかけてきた
〔まさかね、遺跡の出口も崩落してあんな狭い道になってると思わなかったよ。通りでだれもこないわけだね…〕
ディジェスも少し気がまいったのか疲れた様に声をだした
〔ったくよー冒険者ってのはこんなことを毎日繰り返さないといけないのかよー〕
そんなやりとりをしながらたまに生えている丈の長い草を剣で切りながら歩いていると、ディジェスが思いついた様に話し始めた。
〔そうだ!ライズに世界の構成を教えとくね!〕
〔世界?ってここの事じゃないのか?〕
〔あ、まだ話してなかったよね。今僕達がいるこの世界は三つの界域に分かれてるんだ。まず神や天使、神獣なんかの住まう天界に、精霊を除く多種多様な種族や生物が住む人界。最後に魔神や魔王に魔族なんかが住まう魔界って言うのが有るんだけど、僕達が今いるのは人界って場所なんだ。〕
〔ふーん。ん?でも精霊はどこにいるんだ?〕
〔やっぱり気になるよね、精霊はそれぞれの界域の狭間に住んでるんだ。基本的に最上位精霊や上位精霊って言うのはこの狭間の世界からは出てこないんだ。かわりに中位精霊や下位精霊がどの世界にも満ちているって感じかな?。まあ僕達精霊の役割は置いといて、ライズに聞いて欲しいのはここからなんだよね〕
ディジェスはライズの反応をみながら話を続ける
〔遺跡の中で魔力の話をしたと思うんだけど、一部の種族を除いて基本的には全ての生命が魔力を多かれ少なかれ使って生きてるんだけど、魔力は変則性があるんだ。〕
〔なんだそれ?〕
〔それは負の力をもつ魔力と、聖の力をもつ魔力だよ。なにが違うってその元となる魔力をどの魔法技術に当てるかによって効能が大きく変わってくるんだ。例えば負の魔力は何かを害す事に特化しているし、聖の魔力は何かを再生させる事に特化している、とかね。
そして、負の魔力が満ちている場所が魔界で、聖の魔力が満ちている所が神界かな。ちなみにどちらの魔力も普通にどの種族でも使用することはできる。
それで、人界って言うのは天界と魔界を挟む様に存在しているからそれらが入り込んできてるってとこかな
ちなみに人界で一番多い魔力の質はどっちにも属さない無の魔力だよ。〕
〔ふーん。っ、まさか〕
ライズは今の話を頭の中で整理していると、ふと猛烈にステータスを確認しなかればならないと思い、即座に開いた。
ーーー
名前 ライズ
種族 人族
ユニークスキル
能力創造
アクティブスキル
属性魔術LV1
属性魔法LV1
パッシブスキル
魔力増大LV1
魔力超速回復LV1
魔力支配LV1
攻防術式LV1←NEW!!
ーーー
〔増えてる〜…〕
ライズはまた能力が増えている事を確認すると、いっそ諦めの境地に達しながらステータスを閉じる。
そんなやりとりをしながら道無き道を進んでいると少し開けた場所にでたので一度休憩を取ることにした。
適当な所に腰を下ろすとディジェスが顕示し姿をあらわす。
「ふー、とりあえず開けた場所にでれたね。」
「そーだなー、けっこー疲れたわ」
「初めてだもんねー、冒険とか」
「そーなんだよなーていうかなんかもの作ったりとか魔力でできないのか?」
「モノを作る技術は錬金術とっていって魔力と知識があれば誰でもできるよ、どうして?」
「いや、あんのかなーって思って。」
「ふーん」
そんな他愛ない話に時々ディジェスがライズに色々説明を交えながら話していると、突然ディジェスが喋るのをやめて来た道の方を見つめ始める
「どーした?」
ライズ不思議に思って聞いた
「うーん……なんだろ。ちょっと人の悪意が複数あるなーって。」
ディジェスが突然そんな事を言い出した
「なんだそれ。すげーな。」
ライズが素直に感心していると、
「ちょっと様子見にいかない?」
ディジェスが立ち上がるとライズも続けて立ち上がり
「そーだな、気になるし」
ライズがそう言うのと同時にディジェスが一言呟いた
「隠蔽」
「これで、僕らの魔力を感知させないのと姿を他の景色と同化させたから近づいても大丈夫だと思うよ、もし仮に戦闘になってもこの感じならなんとかなるだろうし」
「…そっか。」
魔法をまだ見慣れていないライズにとって、新鮮な気持ちになりながらもディジェスが歩き出したの同時に後ろをついていった。
ーーーーーーーー
もうどのくらい走ったんだ?自問自答してみるが
それは全く意味を成さなかった。
生まれ育った村で忌み子と呼ばれ続け、ついには殺されそうになった、なんとか命からがらそこから抜け出したは良いが村の追っ手だろうか?別の人族からも追われるようになった。
生まれがわからない、ただ物心ついた頃には化け物と呼ばれ、同じ人からも迫害されつづけた。
「こっちだ!やつの魔力の残滓が残ってるぞ!!」
「どこにいやがる!!さっさと観念しろ!!」
後ろから追っ手の声が聞こえる。なにを言ってるのだろうか?自分は魔力など扱えないのに、、、
そんな事を考えながら走っていたら、木の根に足がもつれ転んでしまった。
そして急いで立ち上がろうとするが身体が
うまく動かなかった
とりあえず、逃げねーと。。
そう思いながら立ち上がろうと身体に力を入れるが、身体がうまく動かず、立ち上がれなかった。
くそ!なんで動かねーんだ!
早くしねーと、アイツらが!
そう思いながら、必死に力をいれるがやはり動かずどんどん足音が近づいてきていた。
「いたぞ!あそこだ!」
「ったくよ!手間取らせやがって!」
すぐ後ろから聞こえる声に、恐怖を感じながら思った
くそ、なんでオレなんだ。
なんでオレがこんな目ににあわねーといけねーんだ。
ちくしょう、
そう考えながら、今まで生きてきた16年間が脳裏にちらつきはじめ、
オレ、ここで死ぬのか。まだなんもしてねーのに。
そう考えていると、突然自分の上を何かが通り過ぎる音がした。その音の後に誰かに抱き起こされ、その抱き起こしたやつをみた。
そしてそいつは見たことも無いほどの鮮やかな白髪で心配そうに2つの紅い眼でこっちを見ていた。
そして、暫しの間その白髪を見ていたら急に怒鳴り声が聞こえ抱き起こされた状態でそっちを見た。
するとそこには5人の男と、1人の少年が剣をもってこちらを守る様に立っていた。
「だれだてめぇ!」
「僕?僕はディジェスって言うんだ。よろしく。と言っても神子を傷つけたお前らはどんな事情でもここで殺すけどね」
「あんだと!?そいつは俺らが先にみつけたんだ!人の獲物を横取りにすんじゃねえ!!」
「何を言ってる?獲物?馬鹿な事を言うんじゃないよ
彼の両腕には別々の神刻がある。あれは先天性の刻印だから産まれながらにニ柱の神に愛されている証だ。それを獲物だと?」
「神刻だと!馬鹿な事を言ってんじゃねぇあれは忌み子の証だろうが!聖神の加護じゃねえだろうが!」
「馬鹿な事を言っているのはお前たちだ。神刻に聖神と負神で刻印の扱いが変わる訳無いだろう、どちらも紛う事なきこの世界の神のモノだぞ?」
「らちがあかねぇな!それならお前も後ろのやつも殺してその忌み子を取り返してやるよ!!」
「ふうん、君ら程度で?できるならやってみなよ。でも」
ディジェスと名乗った少年が、瞬きよりも早く剣を一度振り抜くと今まで喋っていた男の両腕が無くなっていた。
「君の両腕、もうないよ?」
剣を抜刀状態から鞘に戻すのと同時に男から血が噴き出る、
「ぎゃあああああ!!!俺の両腕が!!ちくしょ?」
男が激痛に悶えていたが、ふと自分の体を見るとそこには剣が突き刺さっており
「はい。これでおしまい。」
次の瞬間には絶命していた。
「さてさて、次は誰がやる?僕は優しいからね。君らに死ぬ順番を決める時間をあげよう」
そう言いながら突き刺していた剣を抜き、笑いながら剣を肩にのせながら言った。
さっきから、動いてる筈なのに霞んでしか姿が見えねぇ…なんでだ?ていうか強すぎだろ。もしかしてこの人もこんだけ強いのか?
そう思いながらちらっと抱き起こしてくれている青年をみる。そうするとちょうど目が合い声をかけてきた
「大丈夫か?」
大丈夫にみえるのだろうか?率直にそれを思うと、何かを俺の目から感じ取ったのか続けて言った。
「大丈夫じゃないよな。ちょっとまてよ…」
そう青年は言い、少し黙る。そして少したった後に魔術を唱えた。
「治癒」
青年がそう唱えると自分の周囲に光りが集まり身体の中に吸収されていきあちこちの身体の傷が癒えていった。
「ありがとう。」
傷を癒してくれた青年にお礼を言うと、青年は笑ったそして指をディジェスと名乗った少年の方にやり、つられるようにそちらを見ると
「さて、もう君で最後だね。すこし確認したい事があるから君の記憶を覗かしてもらうよ」
ディジェスと名乗った少年は、剣を男の首に突き付け魔術を唱える
「闇槍」
少年がそう唱えると4本の黒い槍が産まれ、男の両手両足に突き刺さり地面に縫い付けた。そして男の頭の上に掌をのせ、魔術を唱えた
「記録剥奪」
そう唱えてから暫くすると男の頭から手を離し剣で男の命を奪った。
ーーーーーーーー
「ディジェスなんかわかったのか?」
戦闘を終えたディジェスにライズは問いかけた
「わかった事は色々あるけど、とりあえずその少年は神に愛されているって事かな」
「というと?」
「さっきも会話の中にでてきたけど、神刻って言うのは、天界もしくは魔界にいる神が稀に人界にうまれる人族に加護という形で能力を与える事があるんだけど、それを表すのが神刻って言うんだ。」
そういいながらディジェスは少年に近づき両腕を手に取り刻印をみる。そして驚いた様に言い出した。
「これは中々凄いね。どちらも魔界の神の神刻だけどこの紋様は闘神と術神のものだね。」
そう言った後にディジェスは真っ直ぐ少年を見るながら言った。
「君は、ずいぶんとこの神刻があるせいで迫害されたりしたみたいだけど、本来君の様な存在は神子って言ってすごく尊いものなんだ。だから崇められこそしても、迫害は間違いなくおきないーーー」
「でも!現におきてんだよ!!」
ディジェスが話しかけてる間に少年は耐えきれなくなったのか叫ぶ様に言い続けた
「忌み子とよばれて!毎日罵られながら殴られて!そんな生活に耐えられなくなって逃げようとしたら!今度は変な人族が高く売れるからにげるなって!それで恐くて不安で必死になって逃げてきたんだ!」
心から吐き捨てる様に、溜まっていた想いをぶつける様に叫ぶとディジェスは何も言えなくなっていた。
「んーじゃあ。強くなるしかないな。」
そんな殺伐とした空気の中で、ライズは当たり前かの様に言った。
「俺もさ、実は言うと記憶が無くてさ。正直すげー不安なんだわ。みたこともないもの、聞いたこともない
もの、ほとんどがそんなのばっかりで俺はディジェスと出逢わなければ何も知らずに死んでいたかもしれない。」
ライズはそこでいったん区切りをつけて、また話し始めた。
「でもまあ、それは例えばの話だから、今はこうしてディジェスと旅をし始めたわけなんだけど、」
そう言うと少し歯切れが悪くなり、すこしそっぽ向きながら続けていった。
「まあ、なんだ。もし良かったらお前が行く宛無いって言うんだったら俺らと一緒に来ないか?宛が見つかるまででも良いし、そのままついてきても良いしそこはお前の自由だけど」
そんな事をライズがぶっきらぼうに言うと、少年はガバッと起き上がり2人の前に立つと言った。
「一緒に行く。オレはどうせ行くあてもないし頼りになる場所もない。それにそこのディジェスさん?が言うには闘える様になれるらしいし」
そう少年が言うとライズは少し笑みを浮かべ言った
「よろしくな!、えっと、」
「オレはアイルって言うんだ。よろしく」
そういい少年はライズに手を差し出す、それを握り返しながら言葉を返した。
「よろしくな、アイル。」
そんな2人のやりとりをみながら、ディジェスも言った
「これで旅の仲間が1人増えたね、そうそう。僕も自己紹介なんだけど。僕はディジェスって言うんだ。ライズと契約してる精霊だよ」
そういって握手をしている2人に言い、しばらくその場で話しを続けた。