② 感情は抑制できないー3
自分の通って来た道か何だか知らないけど、父には全てお見通しらしい。三回忌でななみが急に泣き出した理由まで分かっているとは…。我が父親ながらに恐ろしい…とななみは思った。
「父さん、人の心、読み過ぎ。怖いから…。いくら分かったとしても、娘だとしても、少しは遠慮してよ」
「いや、遠慮なんかするもんか…。たった一人の娘なんだからな。気の強い娘に遠慮なんかしたら、今度は月に行きたいなんて言い出すかもしれないだろう?」
そう言うと、雅彦はゲラゲラと笑い出した。ななみもそれにつられて笑った。笑っているのに、涙が出て来た。
歳のせいか、よく分からないけど、最近は涙腺が緩んで仕方ない。間違っても、今の父の前では泣きたくない。ななみは必死に泣くのを堪える。
「笑いたかったら笑えよ。泣きたかったら泣けよ。感情を無理やり押さえ込むんじゃないと…何度言ったら分かるんだ。ある程度、吐き出してやらないと感情に振り回されるぞ…」
「うるさい! ちょっとは黙ってくれん?」
そう言うと、急に父は黙った。本当にこう言うところが憎い…。でも、嫌いではない。むしろ、好きかも…。こう言う人が父親で本当によかったとななみは思った。
いつになるか分からないけど、父・雅彦とずっと一緒にいれば、きっと志恩のこともうまいこと整理できるだろう。そしたら、新しい恋をして、うまくいけば、また新しい幸せをつかめるかもしれない。
先のことは全然分からないけど、今の気持ちを大切に育てていけば、この先大きく踏み外すこともない。何しろ、志恩が空から見守ってくれている。
そのことはアフリカに行っている間に証明済みだ。ななみにとって、これほど頼もしいことはない。
「父さん、今、志恩が微笑んでくれた…」
「なんだ。やっと、気付いたのか…。父さんなんか、いつも、かえでがそばにいて笑ってくれるから、三十年間もやって来られたようなものだよ」
どうして、今まで気付かなかったのだろう。今まで、世界中をかけて探していたものは目の前、いや、心の中にあったんだ。そのことに気付いて、ななみは心が少しだけ軽くなったのを感じる。
これまで二人で築いてきた思い出なら、いつでも自分が取り出したい時に、自由に取り出して眺めることができる。
だから、父はこれまで一人でも力強く生きてこられたと言うことを知り、ななみは思わず感極まる。ただし、これまでとは全く違う涙をこぼしていた。




