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心を自然解凍  作者: あまやま 想
第6章 人生は踊る されど進まず
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① 社内選考−2

「ちょっと、待って下さい。すでに他社で開発されているモノをマネしてどうするんですか…。私が聞きたいのは、コールセンターでお客様からあなたが聞いていることをどれだけ真摯に受け止めているかどうかです。ましてや、他社製品と自社製品の区別がついていないなんて…。論外ですな…」


 ああ、思い出しただけで嫌になる。この後、全国規模での転勤は大丈夫かとか…。もし経理になったら、もう一度簿記を勉強してもらうが大丈夫か…など聞かれた。


 しかし、最初の大ポカを引きずったまま、面接は終わってしまった。ああ、間違いなく落ちただろう。ああ、終わった…。


 そうなると、とたんに迷いが生じてしまう。茶山がこの前、言っていたことが心に残ったまま…。


 この前はあまりにも突然のことだったから、茶山の誘いを断ってしまった。しかし、本当はよく分かっている。ななみが行く以外に、心の中にある志恩の無念を晴らす方法がないことを…。


 ただし、これからの生活とか、将来どうするのかなど…を考えると二の足を踏んでしまう。何より、これまで男手一つで育ててくれた父・雅彦のことを思うと、その場の勢いで行ってはいけないような気もする。


 それにしても、志恩といい、茶山といい、海外へ仕事で行ける人と壮でない人の違いはなんだろう…。意思の強さ? 確かに意思の強さは重要だろう。


 ただ、意思の強さだけではどうにもならないこともある。家族持ちが急に海外でボランティアしたいと言っても、そう簡単には問屋が卸さないだろう。


 タイミング? そうだ! タイミングだ。どんなに意思が強くてもタイミングが合わなければ、どうにもならない。


 意思の強さとタイミング…。この二つが鍵なんだろう。ななみは座席の上をぼんやり眺めながら、とりとめもなく浮かんだとについて考える。


 だが、これまでの雅彦の行動を見れば、ななみが海外でボランティア活動したいと、何気なく言っても、まず許してくれないだろう。


 一週間の視察の旅に行く時でさえ、許してもらうのに三ヶ月もかかったのだ。ななみは帰りの飛行機の中で、これから先どうするべきか、ああでもない、こうでもない…とあれこれ考えていた。


 既に決定していた結婚と言う選択肢がなくなるだけで、人はこんなにも迷ってしまうものなのだろうか…。ふと、窓を見ると外はもう真っ暗だ。どんなに外を眺めようとしても、ななみの顔が窓に映し出されるだけで何も見えない…。

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