④ コンティーゴの親睦会ー3
「七隈ななみです。志恩君の所に視察の旅をした縁で、今日はここへ来ました」
ここではあえて、恋人だったとか、婚約者だったとか、一切言わなかった。必要ないと思ったからだ。
「平尾です。ここにいる高宮と大橋の三人で、コンティーゴが設立された年から、ずっと支援を続けております」
「国際協力や国際支援に興味があり、NPO法人への就職を考えている城南翔と申します。今、大学三年生です」
「先ほど、皆様の前で活動報告をさせて頂いた茶山千代子です。フリートークでもよろしくお願いします」
それそれの自己紹介が終わったところで、それぞれの話が始まった。まず、コンティーゴは創立されてから二五年目の組織であり、平尾・高宮・大橋の三人は二五年間ずっと年額三万円の支援を続けていることになる。そのことに一同はまず驚いた。
次に話は志恩のことに及んだ。当然である。ここに志恩の両親がいるのだから…。
伸一も、桃子も、事故のことは無念だったが、志恩がやりたいことをやって、多くの人々を助けることができたのだから、きっと幸せだったのだろう…と語っていた。
ななみはわずか二ヶ月足らずで、桃子がここまで立ち直ったことに驚いた。本当は、今も息子を失った悲しみで、心に大きな喪失感があるだろうに…。心にポッカリと空いた大きな穴を埋めるために、この組織の後方支援をすることにしたのだろう。
ななみも婚約者を失った悲しみを未だに埋められずにいるから、ここに来て、真実で心を少しでも埋めようと思っているのだから…。
もちろん、志恩のことに関しては、茶山も志恩と活動した日々を中心に語ってくれた。共に活動したのはわずか半年足らずであったが、志恩が積極的に活動するので、現地での活動がとても前進したようである。
本来であれば、茶山はアフリカでの活動を終えた後、日本に戻り、一般企業での就職を考えていたらしい。
しかし、日本人の現地スタッフがいない状況を受けて、さらに一年間アフリカで活動をすることに決めている。茶山も志恩がいなくなったことで、人生が変わった一人だろう。
「コンティーゴさんでは、学生のインターンは受け入れていますか? もし、受け入れているなら、僕、来年四年生になりますが、一年間休学して、インターンをしたいと考えております」
城南がそう言うと、テーブル内で拍手が起こった。最近の若者はやる気がないとか、内向き思考とか、よく叩かれているが、中には城南のように図太いのもいる。
このような若者が一人でもいる限り、日本はまだまだ捨てたものではない…とななみは思う。
「弊会では、インターンを毎年二、三人受け入れています。しかし、結構人気があるため、選考試験を行っています。詳しいことは東京事務局長の金山に聞いて下さい」
茶山が、城南に対してそのように言うと、城南は迷うことなく立ち上がって、そのまま事務局長のいるテーブルへと向かって行く。




