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心を自然解凍  作者: あまやま 想
第5章 過去は不変 未来は無限
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④ コンティーゴの親睦会ー2

 やがて、親睦会は始まった。開会に先立って、司会者が一同起立と呼びかける。


「開会に先立ちまして、アフリカでの活動中に不慮の事故で亡くなられた百道志恩さんに黙想を捧げたいと思います。それでは皆様、黙想を捧げましょう」


 一同が一斉に一分間黙想を捧げる。それまで、ざわざわしていた会場が一気に静まり返った。


「黙想を止めて下さい。そのまま、ご着席ください。それでは開会の挨拶を弊会代表の吉塚が…」


 わずか、一分足らずの黙想であったが、志半ばで無念の死をとげた志恩にみんなの気持ちが届いたのではないか…。ななみはそう思った。思わず、左隣の二人を見たが、伸一も桃子もホッとしているように見えた。


 それから、アフリカのンドゥ村にあるンパッ事務所にて二年間活動して、一ヶ月前に戻って来た茶山千代子からの活動報告があった。


 冒頭、一緒に活動してきた志恩の死に目の前が真っ暗になったと語っていたのが印象的であった。本来であれば、志恩は茶山の後任者となるはずだったらしい。


 ところが突然の事故で半年以上かけて、引き継ぎをして来た志恩がいなくなったため、茶山は十一月からまたアフリカに一年間行くことが既に決まっている。茶山本人がそのように語っていた。


 茶山は現地の小学校で算数を教えたり、現地の小学校教員を集めて、算数指導法を研修したりしていたらしい。


 また、必要に応じて、マラリアの流行を抑えるために蚊帳を配って回ったり、経口補水液や食料を配って回ったりもしていたらしい。


 日本にいると、なかなかピンとこないことであるが、二十一世紀の世の中でも、未だにどうしようもないほど貧しい人がアフリカやアジアなどにいて、この瞬間にも人知れず亡くなっている人がいる現実がある。


 この話を聞きながら、ふと伸一と桃子を見ると二人とも泣いていた。ななみも話を聞いていて悲しくなった。


 しかし、視察の旅で一週間現場を見てきたせいか、自分が力になりたいと思うようになっている。しかし、父・雅彦のことを思えば、その選択はあまりいい選択とは言えない。それを選べば、きっと父は悲しむし、全力で阻止するだろう。


 昼から代表の吉塚から年次活動報告、東京事務局長の金山から年次会計報告があった。


 その後、各テーブルごとのフリートークとなり、ななみのいるテーブルには伸一と桃子以外に、支援者の平尾・高宮・大橋の三人と、学生の城南、午前中に活動報告をした茶山の八人で話をすることとなった。


「百道志恩の母です。今日は夫婦で参りました。不慮の事故で、息子が志半ばで亡くなってしまいました。しかし、せめて、息子の遺志を受け継いで、夫婦で日本から支援できればと思っております」


 桃子がそう言うと、伸一は桃子と一緒に頭を下げた。夫婦一緒にあいさつをしたことになり、次はななみの番となった。

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