① 残酷な通知−1
「父さん、ただいま〜」
ななみは家に帰ると、父にフランス・チョコレートのお土産を渡しながら、土産話をしようとした。ところが父・雅彦は意味ありげに首を振りながら、深くため息をついて、土産を受け取ろうとしなかった。
そして、苦々しい顔をして、何度もため息をついた。一体、何があったか知らないけど、ななみは父のため息に少しイラっとする。
「どうしたの? 何か学校で嫌なことがあったの?」
「いや、生徒がまた悪さをしたとか、そんなのだったら、どんなにいいことか…。こんなことってあるのかな…。いいか、ななみ。今から話すことを落ち着いて聞いてくれ…」
「一体、何があったの…」
雅彦のただならぬ様子に、ようやくななみも何かとんでも無いことが起こったのだと分かった。しかし、一体何だって言うのだ…。
「志恩君のことだが…」
「えっ、志恩はとっても元気だったよ。アフリカで元気に頑張っていたよ」
ななみは志恩と会ったばっかりだったので、父が志恩のことで何かを切り出そうしているのが、にわかに信じ難い話であった。
「そうか、元気で頑張っていたか…」
「ねえ、父さん…。さっきからずっと様子が変だよ。どうしたの? 一体、何があったのさ?」
「志恩君が交通事故で亡くなった。詳しいことは分からないが、志恩君とななみが別れた直後に事故は起きたらしい。もう、通夜も葬儀も終わってしまったよ…」
ななみは開いた口がふさがらない。そんな馬鹿な…。そんな馬鹿なことがあるはずがない。そんな馬鹿なこと、あってたまるもんか…。嘘でしょう?
「え…。ちょっと、待ってよ…。そんな訳ないじゃない。私、志恩に会ったばかりだし…。それに一週間、ずっと一緒にいたんだよ」
そうだ。ななみは一週間もの間、ずっと一緒にいた。そんなことは何かの間違いだと、体を震わせながら言った。
「その後、ななみは計画通り、一週間、ヨーロッパ旅行へ行っただろう?」
「そうよ。本当は志恩と一緒に行くはずだったけど、志恩は仕事の都合で行けなくなった…」
「その間の出来事だ…。詳しいことはよく分からんが、志恩君は空港でななみと別れた後、車でそのまま活動先のンドゥ村へ向かっていたらしい。その道中で、対向車線をはみ出したバスと正面衝突して、帰らぬ人となった…」
「嘘でしょう…。父さん…。ねえ、嘘だって、言ってよ!」