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8 魔族の国、その姿は

書く時間がない……!

 懐かしい浮遊感に襲われ、目を閉じる。



 感覚が収まって目を開くと、そこにあったのは石造りのダンジョンの一室などではなく、大きな外壁の前だった。


 その大きな外壁の入り口扉の前には、入国待ちの魔族が数名と、それに話しかけている門兵のようなものがいた。


 スーラは扉を背にして立つと、俺たちに言った。



「ようこそ。ここが俺たちの国、【ファフネア】だ」


 とても自慢気にな。なんか無性に腹の立つ顔だ。


「大きいもんだな。名前は知ってたけど、来たことはなかったしな」


 しみじみと感傷に浸りながら思う。


 そう、何を隠そう、俺はこの国に来るのが初めてだ。ガルアース中の殆どの国を制覇していた俺だったが、唯一、魔大陸にあるこの国と、他の魔大陸中の国にだけは、行ったことがないのだ。


 それもそのはず。だって、魔族の国に用事とか無いし。仮に用事があって来たとしても、包囲されてバキュンバキュンされて死んじまうからな。俺なら死なないだろうけど。


「私もだ。こんなところに来れば、一瞬で取り囲まれて捕らえられている」

「今は俺が一緒だから大丈夫だ。取り敢えず、一緒に来てくれ。門兵には言っておかないと後で面倒だからな」


 巨大な外壁を眺めながらトリニアが言う。


 トリニアも俺と同じことを考えていた。なんか、トリニアとはよく考えが合うな。相性が良いのかもしれん。

 いや、浮気じゃねぇよ?


 それはともかく、確かに人族や龍人族がいたら、魔族たちは騒ぎ立てるだろうから、スーラの判断は正しいだろう。



 俺とトリニア、そしてトリニアに背負われる形で眠っているリオーネとスーラの四人は、入り口扉とは少し離れたところにあった、小さな扉の前まで連れてこられた。


 まさか罠かという可能性もあったが、まあまあ無いだろう。そこはスーラを信じる。


 スーラがノックをして、中から返事が聞こえると、俺たちを連れ立って中に入る。


 外からは見えなかったけど、中には事務所のような部屋があった。あれか、事情があるやつはこっちみたいな感じの。


 そして、中では一人の魔族が座っていた。黄色くごつごつとした肌。見た目はそんなにスーラと変わらない。スーラよりは少し痩せてるか。筋肉はついてる。細マッチョだ。


「おう、スーラか。……そいつらは、一体何の冗談だ?」


 その魔族が口を開いてまず最初に口にしたのはスーラへの挨拶。

 次に発したのは、俺たちに対しての警戒心。立ち上がって腰の剣を抜いた。


「親父の知り合いだ。親父は今どこにいる?」

「バクラさんか? 今は城にいると思うが……そこの男は、人族だろう? 隣の女は龍人族だ。今すぐ殺すべきではないか?」


 未だ警戒を解かずに魔族の男が言った。


 やっぱり、魔族は排他的な種族みたいだな。同種族間では特に何も無いのかもしれないけど、他の種族となると、途端にこうやって嫌悪や警戒を露わにする。


 感情を隠しながらも昂らせていた魔族の男を、スーラが制する。


「どうにも、親父とは深い仲なようでな。ここで殺せば、今度は俺が親父に殺されちまう」



 いや流石に息子を殺すようなことはないと思うんだけど。

 そもそも、深い仲ってなんだ。そんなこと一言も言ってな、いや、言ったかもしれないけどさ。それじゃ変な意味に聞こえちまうかもしれないじゃんか。



 俺の斜め45度の思惑を嘲笑うかのように、現実には何も起こらなかった。魔族の男は普通に理解したし、トリニアが茶化すこともなかった。


「そうか……なら、一先ずここは通す。だが、民が不安がってはいかんからな……」


 そうか、この男の懸念はそこか。


 確かに、ある程度実力のあるであろう門兵(仮)でもこの反応なんだから、戦闘能力を持たない市民なんかが人族を見たらどうなることやら。



 と、そこで俺はある魔道具のことを思い出す。

 丁度、今の髪にした時に使った増毛剤と一緒に、無限収納室(インベントリ)にしまっていたはずだ。



 えっと、ここら辺に……





……あった!



「あ、それなら大丈夫だぞ。変装の魔道使えば一瞬で解決だ」


 無限収納室から取り出したのは翡翠色をしたペンダントだ。

 これは、俺が昔パーティーで仮装をするからという理由だけで作った、お遊びの魔道具だ。名はない。というよりもつけてない。面倒だったからな。


 簡単な説明をしておくと、これをつけて魔力を流すと、対象の姿を変えてくれるのだ。当然だが実際に変えるわけではなく、魔法で『そう見せる』だけなんだが。似たようなものが光魔法とかにあったはずだ。俺は光魔法が使えないからここに組み込んだってわけ。


 っても、制限はある。


 まず一番大きいのは、俺とリオーネしか使えないってこと。

 別に意地悪とかじゃなくて、性能が良すぎて使用可能者を絞るしかなかったんだ。仕方なく二人にした。

 ただ、同時に複数人にかけることは出来る。今回はその機能で俺とトリニア、リオーネの三人にかける。

 次に、ペンダントを外せば姿は戻っちまう。これは分かるだろう。


 最後に、それなりの量の魔力を使う。並みの魔法高いなら15分持てば十分ってところだ。


 ま、俺には関係ないけどな。


 すぐさま魔力を流し込み、自分の体を覆うようにして展開されていた、まだ不透明なその姿を作り変えていく。


 出来上がったのは魔族の姿。どういうものにするかは迷ったけど、スーラ的な見た目にしておいた。



 その俺の姿を見た三人は、それぞれ別々の顔をしていた。



「最初から使えよ」

「怒るなよスーラ君」


 これはスーラだ。こいつ、段々俺に遠慮がなくなってきている気がする。


「お前ら仲良いな?」

「ああいう奴なんだ。すまない」

「何だか知らないが、お前も苦労してそうだな」


 これが魔族の男とトリニアの会話。

 失敬な。そこまで仲良くもないぞ。さっきまで殺す殺されるの関係だったんだからな。昨日の敵は今日の友とか言うけど、今回の場合は今日の敵は今日の友だからな。


 それに、トリニアと会ったのも今日が初だからな?苦労とかかけてないからな?


「……はぁ、なんだか馬鹿らしくなってきた。スーラ、面倒ごとを持ち込むな」

「上に言ってくれ。邪神の解放は上の指示だ」


 やーいやーい、スーラ君怒られてやんのー。


 あ、俺のせい?すまん。


「まあそうだな……おい、人族の男。くれぐれも、面倒ごとを起こしてはくれるなよ?」

「存在自体が面倒ごとみたいな俺に言ってんのか?」

「今からでも出て行くか?」

「冗談だ」


 いやでも俺って割とトラブルメーカーだから、面倒ごとを起こすなとか言われても無理だ。


 現に、召喚されて一日でこれだけの大事に巻き込まれてるんだから、これでトラブルメーカーじゃないとか言われても俺でも納得しない。


「やれやれ……俺はギデアだ。お前はなにか、他の人族とは違う雰囲気がする。暇になったら色々と話を聞かせろ」

「へいへい、俺は『ミナヅキ』だ。何かあったらここに来るよ」



 思わぬ知人が出来た俺たち一行は、門の通行証をもらって部屋を後にした。



 そんな俺に、トリニアが疑問を投げかけてきた。


「……なんで偽名を教えたんだ?」


 偽名?と最初は思ったが、そういえばトリニアには苗字のことを教えてなかったなと理解する。


「偽名じゃないさ。俺の苗字だ」

「何故ハクハと名乗らなかったかを聞いたつもりだったんだが」


 そういう意味か。偽名云々じゃなくてトリニアには名で名乗ったのにギデアには姓で名乗ったことに疑問を持ったわけだな。


「ん? いや、今更ながらに思ったんだけどさ」



 最初はギデアにもハクハという名の方で名乗ろうと思っていた。


 けど、少し考えていて分かった。ティルマやトリニアには本名で名乗ってしまったが、そこに重大な欠点があることに。



 それが、






「ハクハって面倒な名前だよなって」

「もっと早く気付け」



 色々伝わってるだろうし、勇者疑惑出ちゃうかもっていう懸念だよ。



 そんな会話を挟みつつも、大きな扉をくぐった俺たちは、魔族の国でも一番の都市【ファフネア】のその雰囲気に圧巻された。


 街自体は人族の、それこそガッダリオンとさほど変わらない。街があって、中央には城がある。



「城ってのはアレか」

「そうだ。今からあそこに向かう」


 歩きながらスーラが答える。俺たちが向かうのはあの城らしい。

 あれって王族とかが住んでそうな城なんだけど、俺たちみたいな奴が行っても大丈夫なんだろうか。追い出されたりするならまだしも、捕らえられたりなんかしたら終わりだぞ。


「……なんか、街の中もイメージとは違うな」

「どんなイメージだったんだ?」

「もっとこう、殺伐としてると思ってた。常に戦いのことを考えてるような」



 そう。俺が街に入って一番最初に思ったのは、『意外と平和なんだな』というもの。


 歴史を漁り、何かしらの異変や大きな事件があると、そこには殆ど魔族が関係している。

 俺も昔は、魔族は戦いのことしか考えていなくて、残虐で非人道的な奴らだって教わってたくらいだ。



 けど、【ファフネア】の中はどうだろうか。


 人々は笑い、道は多くの魔族たちで賑わい、市場でも人族の街で見るような値切りが行われていたり。まるで、ガッダリオンをそのまま写したかのように見える。


「そうだな、そういう考えが広く出回っているのは知っている。殆どは嘘だけどな。そういうのは過激派の連中だけだ」

「過激派ねぇ……トリニアは、どう感じた?」

「私もハクハと同じだ。これは少し、見方を変えてみなければならない、か……」



 過激派ってのは多分、邪神復活を指示したような奴らのことだろう。口ぶりから察するに、スーラは違うようだけど。



 少し後ろを歩いていたトリニアに、街の様子について聞いてみると、概ね俺と同じような考えだということが分かった。


「なあ、一つ気になってたんだが」

「ん?」


 そこでスーラが聞いてきた。


「ハクハって、『あのハクハ』か?」

「どのハクハだ?」



 俺の名前についてだ。

 勇者ハクハのことを言っているのは分かっているが、念のために確認をしておく。これで違ったら恥ずかしいからな。


「魔族の天敵、魔王の仇、魔神殺し、化物、ロリコン、他多くの名で呼ばれている四代目勇者のことだ」

「最後の名前をつけたのは誰だ、それは誤解だ」

「親父だ」

「予定が変わった、あの野郎ぶっ殺す」



 勇者ハクハのことで合っていたようだ。


 それにしても、色んなあだ名が付けられている。魔人殺しとか魔王の仇とかはいいとして、魔族の天敵っていうのはなんだ。魔族自体を滅ぼしにかかるような真似はしたことないはずだけど。



 しかも、バクラが付けた名前はロリコンだ?


 ふざけんじゃねぇよ。どこをどう見てロリコンだと判断したんだ。いや十中八九リオーネのことだと思うけどさ。俺は別にロリコンなんじゃない。リオーネ一筋だって言ってんだろ。

 


「……なんか、さっきとは雰囲気が違うんだな、お前」



 真面目にバクラ暗殺を企んでいると、何やらスーラがため息をついて言った。



「どういう意味だ?」

「さっきはもっと、残忍で慈悲もない野郎だと思ってたが」

「そんなわけないだろ。伝説の中でも、俺は歴代勇者中一番穏和な勇者って書かれてたはずだぞ」



 こちらに危害を加えてくる相手限定で、残忍で無慈悲だとかいうのは合っているかもしれないが、それ以外でなら基本的に争いごとは好きじゃない。

 リオーネを傷付けるような奴が出てきたら、それこそ国でも滅ぼす勢いで暴走するだろうけど。


 当人はトリニアに背負われて気持ち良さそうに寝てるが。



「適当な奴だってのは書かれてたけどな」

「シャラップトリニア」



 適当ではない、決して。


 トリニアと馬鹿なやり取りをしていると、またもスーラがため息をついた。お前、疲れてんのか?


「……やっぱり、お前が勇者なのか」

「今は、元、だけどな」


 やっぱり、ってことはスーラも薄々は気づいていたのか。


「そうか、お前があの勇者だったのか。俺が負けるのも当然、か」

「そりゃ、俺は最強だからな」

「自分で言うか、自分で」



 歩みを進め城へと近づきながらも、頭の中で考えを整理していく。


 これ、本来なら今考えるべきことじゃないんだけどさ、城に入ったらまた面倒ごとに巻き込まれるだろうし、今言っておきたいんだよな。



 うん。色々なこともあった、というよりも俺が半殺しにしただけなんだけどさ、魔族にも繋がりは欲しいんだよ。

 それに、スーラはいい奴だ。話してみて分かった。こいつは根から悪事を働くような下衆じゃない。



……もう一度、結成してみたいんだよなぁ……



「……スーラ、お前さ」

「ほれ、城に着いたぞ……って、何か言ったか?」



 俺が提案しようとしたところで、城に着いたという声に遮られる。


「……いや、何でもない」



 お前は、ラブコメで告白したくても相手が次々話して中々切り出せない展開の次々話す側の男あるいは女か。これはなんと言うベスト例え。



 まあいい……後でまた言えばいい。時間くらいはあるはずだからな。



 城の真下、入り口の扉まで来ると、二人の騎士が立っていた。いや多分騎士。


 騎士の二人はスーラの姿を認めると敬礼をし、スーラもそれに応えて軽く敬礼をした。



「これは、スーラ様。お早いお帰りで。そちらにおられるのは?」



 やっぱり、俺たち目立つんじゃないか?

 騎士達が俺やトリニア、リオーネを見る目は辛うじて疑惑程度であって、不審なものを見るとかいうそういうものじゃないけど、場違い感が凄い。


 これで人間の姿のままだったらと思うと、ゾッとするね。



「邪神に関する情報を持っている奴らだ。信用は……そうだな。俺が保証しよう」

「そうですか。スーラ様がそうおっしゃるのなら大丈夫でしょう。お通り下さい」

「ありがとう」



 流石に無理なんじゃないか、と思っていたが、なんとそれだけの会話であっさりとスルーされた。


 スーラが二人に軽く頭を下げ、礼を言う。それに対して、二人の騎士は敬礼をして返す。


 騎士のこの反応、スーラは一体何者なんだろうか。

 いや、バクラの息子だってことは分かってる。


 ただ、騎士がスーラを見る目に、尊敬の念が混じってるような、そんな感じがするんだ。英雄の息子だから、そんな理由ではない気がする。

 かくいうスーラ自身も、カリスマ性は高そうだ。



 俺たちは、無事に入城することが出来た。


「親父に会ったらどうするつもりだ?」

「まず正体を明かしてから、言いたいことを言う。後は流れに任せる」

「随分とまあ何の計画も無しに乗り込んだものだな」



 白く長く綺麗な廊下。外から見てた分にも綺麗だとは思っていたけど、中はもっと綺麗だ。魔族の城って魔王とかがいるあれだろ。もっと黒くて禍々しいものを想像してたんだがな。


 むしろ、ガッダリオンの城よりも綺麗かもしれない。


「こうするしかないだろ? それとも、トリニアが背中に乗せて襲撃を手伝ってくれたりでもするのか?」

「何を対価に差し出されたとしても断るな」


 トリニアが真面目な顔で言った。

 俺は別にそれでも良いとか思ってたわけだが……いや、今になって考えてみると、そんな強硬手段に出なくて良かったと、心底ホッとしている。


 こんな街の風景を見せられて、無理やり襲撃しようとか考えないからな。


 うーん、それにしても引っかかる。

 何がって?


 いやさ、魔族の国は海を渡ればそこにあるわけだから、当然のことながら『情報』は入ってくるんだよ。俺は直接は来たことがないだけであって、こっちの情報とかは持っている方だと思ってた。


 その情報ってのがさ、『魔族の国に平穏なんてない』とか、『ただ殺意が溢れるのみ』とか、そういうものだったんた。

 この出処がただの冒険者とかの噂ならいいんだけど、国の上の方からとかギルドからとか、ちゃんと調査隊を派遣して調査してきてる奴らからの情報なんだ。


 これが何を意味するかは、分かりたくないんだけど。


「二人とも、もうそろそろ着くぞ。トリニアが背負ってる女はどうする?」


 そんな負の思考を、スーラがベストタイミングで取り払ってくれた。後でギルドに聞けばいい。ティルマに聞いてみよう。

 答えられないと言われたら、直接本部に殴り込め。


「リオーネか……取り敢えず、俺が背負うよ」

「というか早く替われ。何故私がずっと背負っているのだ」

「暇そうだったから」

「死ぬか?」

「着くって言ってんだろ、いい加減黙ってろよ」


 っち、しゃあねぇなぁ、仕方ないからリオーネを背負う係は替わるよ。


 本当、仕方ないからだからな?


 トリニアからリオーネを受け渡してもらい、背負う。背負い際にちょっと尻を揉んだ。


 背中に胸の感触がする。リオーネはエベレスト並みの巨乳だから、胸が非常に心地よい感覚に包まれているわけで。



……仕方ないから背負ったんだぞ?



 ほんのりと暖かな感触に包まれながらも、目の前に意識をやる。

 大きくはない扉。派手な飾りとかもない。

 謁見室とか、そういう手の扉じゃないな。多分、生活方面の扉だ。寝室とか、執務室とかか?


 スーラがその扉を勢い良く開けた。



 バアンッと激しい音を立てて開かれた扉の向こう側には、スーラよりも少し大きい程度の男がいた。




……スクワットをしながら。


「親父、帰ったぞ」

「お、スーラか。そいつらは?」

「え、待って、この状況にはノータッチなのか?」



 スクワットを中断することもなく、親子の簡単なコミュニケーションが交わされる。スーラは特に疑問を抱いていない。


 が、トリニアは何やら変質者を見るような目で男を見据えている。俺も同じような感じだ。

 俺の場合は蔑むような目だけどな。


「まあ、いいか……久し振りだな、バクラ」



 そう。この筋肉質のスクワットをしてる馬鹿がバクラ。魔族の英雄、『暴炎のバクラ』だ。

 こんな状況だから威厳がなさそうに、むしろ威厳がありすぎるように見えるかもしれないが、こういうのをしてる時は大体ふざけてる時だけだ。真面目な時はすごく真面目なんだ。


 俺と一緒だな。



「おう? 俺はお前には見覚えがねぇが……」

「ん、そうか、これ着けたままだったか」



 見覚えがないと言われて少しショックを受けていたが、自分が変装用のペンダントをつけていることを思い出し、外して無限収納室に放り込んでおいた。



 ペンダントを外した瞬間、俺たちの姿は魔族寄りのものから、じわりじわりと戻っていった。

 俺は輪廻のローブを羽織った黒髪のイケメン、トリニアは巨乳の美少女、リオーネは青髪の現代舞い降りた天使もといロリ巨乳に、だ。


「これなら、どうだ?」

「……てめぇは」



 俺の元の姿を見たバクラの表情が、段々と渋いものに変わっていく。



 しまった、今見せるべきじゃなかった。やっちまった。


「お、おいハクハ……?」

「親父……?」


 バクラが息を荒くしながら、ズンズンと白が揺れそうなほど荒い足踏みで迫ってくる。


 その巨体で迫られるもんだから、俺の側にいたスーラやトリニアはさらに数歩下がって、俺だけが前に残る状態になった。裏切り者め。



 そして、俺の目の前まで来たバクラは、その大きな腕を広げ、俺に……




 俺に……!!!



「……会いたかったぜ、ハクハ!」

「俺は会いたくなかったよ、この筋肉火だるま野郎! 離れろ暑苦しい!」

「「は?」」











……俺に、抱きついた!!!

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