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5 フルボッコタイム

少し間があいてしまい、申し訳ないです。また、今回はキリが良くなったところで切っているので、いつもの半分程度しか量がありません。これからはこれくらいの量になってしまいそうです。

「……誰か来るって連絡は、来てなかった筈なんだけどな」



 部屋の中央にいた男の魔族が殺気たっぷりに言い放つ。


 そんな言葉に飄々とした動きで返し、魔族に言う。


「招待状なんてものはなかったんでな。勝手に上がらせてもらったよ」

「わりぃが、ここは立ち入り禁止区域だ。お前らみたいな奴らには、とっとと帰ってもらいたいんだが」


 未だ殺気を収めずに、目を細めて魔族は言った。

 明らかに、ここに何かある。その様子だけで分かる。魔族にとって有益な何かが、このダンジョンにある。


「はっ、面白い冗談を言うね。……魔族がこんなところに、何の用だ?」

「素直に言うと思うか?」

「言わないよな。それが普通だ」


 もしかしたら教えてくれるかも、なんて思ったが、現実はそこまで甘くもないようだ。

 俺はグルグルと、部屋の『ある場所』をそれぞれ巡るようにして歩く。はたから見れば、無意味に歩き回っているようにしか見えないだろう。


 そして、唐突に止まって言った。


「だから、ここからはただの、俺の独り言だ」


 腕を天に突き上げ、指を立てて続ける。


「この部屋に入って、まず違和感を覚えた」


 違和感、というよりも、本能的に生理的悪寒を感じてしまう、どちらかといえば『嫌悪感』。何かに見られているような、何かが俺の後ろにいるかのような、そんな感覚。


 突き上げた腕を、そのままの状態で地面に向ける。今指さしているのは、地下にあるこのダンジョンの、さらに地下。もっと、もっと深いところだ。


「その正体を探ってみたら、『そいつ』はここよりもさらに地下にいるものだった」


 巨大な反応だ。龍状態のトリニアは大きかったが、あれよりもさらに大きい。


 そんな巨大な反応が、この部屋のさらに地下深くに感じられる。空間探知で探して見つけたものだ。俺の空間魔法での探知は、床や壁なんかの障害物に、これっぽっちも効力が邪魔されないから、こういう場面では役に立つ。



 それから、指を地面から外し、今度は周囲の複数ある、ある地点を指差すようにして動かしながら言う。


「そんでもって、この部屋には至る所に魔法陣が隠されている。かなり高度で強力なものがな」


 視認することは不可能だけど、完成後に透明になる魔法陣が、およそ数え切れないほどある。適当に張ったものじゃない。かなりの腕の魔法使いが、かなりの時間をかけて張ったものだろうと推測出来る。


 指を折り、腕を組んで、考えるような仕草をする。


「しかも、所々に見覚えのある術式が組み込まれているときた」


 独特な術式。攻撃系の魔法ではない。いや、厳密に言えば、魔法ですらない。分類上で言えば結界に近いものだ。が、面倒なので魔法と同じ一括りにされている。

 魔法ではないゆえに、俺だって使える。これはそういうものだし。




 どこで見たのか。答えは、初めて魔神と出会った遺跡で。





 そう。この魔法陣は、封印の魔法陣。強力な『何か』を封印する際に使う結界。それが、この部屋全体、いや、この『ダンジョン全体』に張り巡らされている。うっすらと、だけどな。


 この部屋に入るまでは気が付かなかった。気付けたのは、この部屋に異常なほど魔法陣が集められているからだ。


 さっき見つけた反応と、この魔法陣、この二つを組み合わせれば、自然と答えは見えてくるだろう。




「この地下には、何が眠ってる(・・・・・・)?」

「……てめぇ、一体なにもんだ?」


 図星だったようで、男は顔を顰めて臨戦態勢に入る。事情を知った俺たちを排除するつもりか。


「なに、通りすがりの冒険者紛いだよ」


 今は冒険者ではなくてフリーだしな。帰ったら正式な冒険者だ。


「ほざけ。魔族と相対して物怖じすらしないなんてのは、只者じゃないか馬鹿かのどちらかだ。お前は馬鹿じゃないんだろ?」

「さぁ、どうだろうな」


 臨戦態勢に入っている魔族を相手に、未だにふざけたような態度を取っているから、ある意味馬鹿だとも言えるけどな。


 

 けど、この下に眠っているのが何であれ、魔族が狙っているものなんだから、害になるのは間違いないだろう。

 となれば、このまま放してやるわけにもいかない。


「それで、俺たちとしては、ここでお前が作業するのを、黙って見ているわけにはいかないんだがな?」

「全力で阻止するってか」


 悪戯げに口角を上げて笑い、その鋭い牙が光る。


 次の瞬間には、ある言葉が聞こえたと同時に、奴の姿が消えた。


……おもしれぇ。


 

 奴の視界にはこう映っただろう。自分が動くのとほぼ同時に、奴が消えた、と。




 キィィン、という激しい金属音がして、トリニアが焦燥した顔で振り向く。

 そこには、自分に背を向ける少年と、その少年に向かって巨大な真紅の大剣を振り下ろしている男がいた。

 

 少年は掌で剣を受け止めていて、金属音はここから発せられたものだと気付く。掌と剣がぶつかりあって金属音が響くわけがない、ということには気付かないまま。


 というか、俺。




「女子供を狙うのは感心しないな」


 況してや、リオーネを背負ってまともに戦えないトリニアから狙うとは、中々に薄汚い真似をしてくれる。


 剣を受け止めながらそう言うと、魔族は鼻で笑って、


「女子供しかいないような状態で、女子供を狙うなってか」


 と言った。それもそうか。


「ごもっともだな。トリニア、リオーネを抱えて、端の方に避難しといてくれ」


 後ろにいたトリニアに避難勧告をした。このまま戦うことも出来るだろうけど、巻き添えを喰らう危険性が高い。それに、ここにいればまた、魔族に狙われるだろう。端に移動してもらうのが一番だ。


「……分かった。お前のことだ、負けることはないと思うが、十分に注意していてくれ」

「任せとけ」


 トリニアがリオーネを背負ったまま、 部屋の隅に移動した。あそこなら、中心からはそれなりに離れているし、巻き添えを喰らうことはないだろう。魔族の攻撃がどうなのかは知らないけど、俺の攻撃に範囲技なんてものはないし。やろうと思えば出来るけどな。


 左手に力を込めて、魔族の腹部目掛けて渾身の一撃を放つ。

 魔族はそれを後ろに跳んで躱すが、これで一旦、距離は取れた。


「俺もそろそろ、やり始めていくからな」

「手加減は不要ってことか? 益々おもしれぇ。俺も久々に本気を出して……」


 少し気を抜いて、余裕そうに話す魔族。


 そんな余裕が、刹那のうちに消えた。


「……ごちゃごちゃとやかましい」


 短距離転移。どれだけ過酷な戦闘をしていようと使えるように、練習に練習を重ねた空間魔法。結局、この魔法以外は、戦闘中にはまともに使えなかったが。さっきトリニアの後ろに現れた時に使ったのもこれだ。尤も、あの時は数mの距離だったから、使わなくても出来ただろうが。



 けど、今はそれで十分だ。短距離転移で奴の背後に現れ、渾身の回し蹴りを喰らわせる。


「ぐ……!?」

「戦いの最中は常に気を張っとけって、誰かに教わらなかったのか? ベラベラと喋って、随分と余裕ぶっこいてるじゃねぇか」


 突然のことに反応しきれなかったのか、魔族は腕を交わしてガードをするも、それだけしか出来なかった。ミシミシ、ミシミシ、と大きく、の軋む音がする。


 戦闘中に気を抜くなんて、言語道断だ。気を抜いて話すなんてもっとダメだ。三流どころか、四流のやっちまうことだよ。


 俺も話してるが、気を抜いてるように見えて、髪の先まで集中力を張り巡らせている。どんな不意打ちにだって対応できるようにな。


「……てめぇ、ゼッテェに殺してやる」

「やれるもんならやってみろ。俺は少なくとも、お前の100倍は強いけどな」


 魔族が牙を剥き出しにして怒りを露わにする。


 大剣を構え、目にも留まらぬスピードで迫ってくる。数十mはあった距離が、一瞬のうちに埋められる。


 右斜め上からの振り下ろし。左に半身になって躱し、そのまま左拳を叩き込む。


 かろうじて避けられるが、攻撃を休める理由にはならない。


 左、右、左、蹴り、肘打ち、右。

 次々と連撃を加えていく。大剣を軽々しく振るう相手とはいえ、素手のスピードには敵わない。徐々に回避と防御が追いつかなくなり、攻撃が擦り始める。



 隙間を縫って放たれた、渾身の力が込められているであろう斬撃をいともたやすく避け、出来た大きな隙に、相手のその大きな顔面を鷲掴みにして、そのまま全力で地面に叩きつける。


 ダンジョンの床には、小さな隕石でも落ちたのではないかというほどのクレーターが発生し、その威力の高さを物語っている。俺、これでも素手なんだがな。


「どうした、それで本気か? だとしたら、とんだ期待外れだな」

「『爆炎のーー』」

「ほっと」


 掴んでいた手を離し立ち上がると、倒れたままの魔族の男が何かの魔法を放とうとしてきたので、短距離転移で先ほどまでの立ち位置とは全く正反対の方向に移動し、その腹を踏みつける。


 骨が折れる独特の音がして、魔族が苦しそうに息を漏らす。肋骨か、あるいはその辺りの骨か。逝ったな、これは。


「お、前は……何者なんだ……!」

「言ったろ? 通りすがりの冒険者紛いだよ」


 苦しげな声で、魔族が声を絞り上げた。先も言ったろうに。俺はただの、冒険者になる前のニュービーだ。


 踏みつけていた足を除け、サッカーの要領で軽くその体を真上に蹴り上げる。


 抵抗のない魔族の体は、いともたやすく浮かび上がり、驚きと恐怖に表情が染まる。


「や、めろ……!」


 苦悶の声。けど、知らないね。いつか魔族の男がしたように、軽く鼻で嘲笑う。





「やーだ♪」


 

 グルンと、右回りで一周。


 そして、浮いていた魔族の体を、そのまま前方に蹴り飛ばす。全力で。蹴りなのか奴の吹き飛ぶ速度か、どちらが超えていたのかは分からないが、命中した直後に、空気の層が破裂したような独特な感じが起こったから、恐らく音速を超えていたんだろうな。


 蹴った時に奴の骨が折れるというか、砕けるような感覚がしたが、魔族は生命力が強いからな。この程度では死なないだろう。死んでいたらご愁傷様というやつだ。



 目にも留まらぬスピードで壁へと飛んで行った魔族は、そのまま壁を貫通して、隣の部屋で止まった。ダンジョンが崩壊を起こしてしまうんじゃないかという勢いだったが、何とか大丈夫だったようだ。

 


 後の状態を確認するために、その穴から隣の部屋に入り、魔族の近くまで歩み寄る。

 見事に血まみれで、身体の一部からは白くても赤く染まった骨が見えていた。複雑骨折だな。



「……ハクハ、こいつは、死んだのか?」

「いや? 死なない程度には手加減したから、死んでないはずだよ」


 ほら、ほんの少しだけど、胸が上下してる。おっと、血反吐も吐いた。ギリギリ生きてる。


 俺は、無限収納室(インベントリ)を開き、中から増毛剤の時とは別の、青い液体が入った小さな小瓶を取り出す。


「だが、この怪我では……」

「大丈夫。生きてる限り、こいつには死んでもらわない。持ってる情報、全部吐いてもらわないとな」


 心配そうに言ってくるトリニアに返す。自分でも予想してなかったくらい、声が低くて怒っているような声だったけど、別に怒ってるわけじゃないぞ。だから、そこまでビビらないでほしい。




……それはいいとして、俺は小瓶の中に入っていた青い液体を、魔族の身体に思い切りぶちまけた。


 青い液体はぶちまけられるなり光り出し、魔族の男の身体を包み出した。

 ようやく書きたかった戦闘シーンが書けました。書けたんですけど、どうにも戦闘シーンの書き方が下手で、臨場感がなくて、アッサリとしたものになってしまいます。

 今回は敵が弱すぎたのもあるかもしれないですけどね。

 ですので、かなり展開が早めになってしまっています。ご了承ください。

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